第13話 朔side 距離が憎いから。
──俺は本気なんだけどな。
そんな事も全て、“教師と生徒”というものに妨げられている。
だから、雷斗に好きな人がいるのはわかっていたけど、俺に恋人が出来たら藍斗先生は嫉妬してくれないかな。
そんな思いで引き受けた。
別に、何にも変わらないのも分かっていたし、使えないなんて選択肢を作りたくなかった。
偽の恋人なんて、恋人ゴッコも成り立たないただのお遊びだろう。
雷斗がしたいことはわからないことばっかだった。
でも、俺はその恋人ごっこに利用価値を感じたから、使わせてもらうことにした。
「これはどうしますか?」
藍斗先生の声が聞こえて思わず振り返った。
後ろで先生達で何かの話し合いをしている。
そんな藍斗先生の背中に俺は悔しくなる。
なあ、“教師と生徒”じゃなかったら、すぐに告って迷惑もかけずに落として、付き合えたのに。
いつもなら、朝早く来ても寝ているこの時間に、今日は藍斗先生がいるから起きている。
俺自身、この行動全部がバカだなと思う。
こんなに夢中になるものが無かったから。
余計そう思うのだろう。
「おはよ~」
雷斗が教室に入ってきた。
海里はまた休みか。
大丈夫かな...。
雷斗も落ち込んでいるくせに、何も分かっていない。
気づいていないのだろう。
この前は、勝手に藍斗先生と兄弟だってわかっちゃったしね。
藍斗先生を本気で落としたいから、デリカシー無いとか言われても絶対に聞けてしまうのだろう。
俺は目的のためになら何でもできるし、要領もいい方だと思う。
まあ、事の発端は雷斗が藍斗先生のことを“藍にい”って言ったことだけど。
雷斗と藍斗先生の間柄は兄弟では無いかなって。
藍斗先生も学校で話しているところあんまり見ないのに、よく海里のこと話すし。
一時期、海里のことが好きなのかなって焦ったこともあるし。
「なあ、朔。俺、海里を泣かせちゃった。どうすればいいのか分かるか...?」
海里の席に座って話し出したといえばそんな相談。
海里が泣いた理由は察するけど。
「雷斗が何とかしなよ。その答えは人に聞くものじゃないし、...自分自身で見つけるべきだと俺は思うから」
きつい言葉になっちゃったけど、雷斗はそろそろ自覚すべきだと思うんだけどな。
「...分かった」
何があったのかわからないけど、雷斗は二時間目の後、早退した。
ちょうど体育の後だったから、着替えていて気づかなかったし。
でも、雷斗に何かしらの心境の変化や雷斗を動かす出来事があったのだろう。
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