第12話 快凪side 目をそらしたいから。
分かってはいたけど、やっぱり嫌だな。
目の前の状況を見ながらそう思う。
「ら~いとっ。一緒に帰ろ~」
「おう。ちょっと待ってな」
「...はあ」
俺はため息を吐く。
二人が偽の恋人ゴッコをすることなんて知っていたのに。
やっぱり辛い。
知らされていない、海里の方が辛いだろう。
今日は珍しく海里が休みだけど、明日は大丈夫だろうか。
雷斗も海里がいないから気分が落ち込んでいるくせに、気づいていないし。
朔と、イチャついているし。
それから目をそらすために、俺は安心できる場所へ向かった。
「失礼します」
「あっ、やっほー、快凪」
「あっ、伯斗、もういたのか」
伯斗は生徒会の会計担当。
それで、美術部部長。
絵がすごく上手い。
プロレベルなやつ。
それで、チャラくて優しいから、普通に逆ナンとかされているやつで、モテモテだ。
世の中は不公平だな。
それで、朔も生徒会役員で、書記をやっている。
今日は、雷斗と帰っていたし、生徒会室にいないみたいだけど。
朔のこと考えるだけでも辛くなってしまう。
それが嫌だ。
雷斗の偽の恋人役を引き受けれなかったのは、海里のことがあったからだし。
俺が雷斗と付き合うふりをしていたら、海里は誰も信じれなくなるし、話せる人がいなくなると思ったから。
雷斗が自分の気持ちを自覚したら、早いんだけどな。
「おーい。それで、何のよう~?」
「俺が学級委員長だから、今度話す機会があるらしくて、その原稿用紙をもらいに来たんだけど、生徒会長か先生いるか?」
「あと少しで先生は来るよ。今日は生徒会長、旅行に行っているみたいでいないし」
「は? ズルすぎね?」
「だよね~。」
伯斗は自他ともに認めるゲイらしい。
でも、藍斗先生の性格はタイプだけど、年下がいいから無理だとか。
色々とめんどくさい。
「失礼しま~す」
その声が聞こえて、藍斗先生が生徒会室に入ってきた。
「あっ、藍斗先生。快凪が待っています」
「ああ。ごめんね。こっちにあったはず」
そう言いながら、藍斗先生は棚の中を見ていた。
「あったっ。えーっと、これが去年の人の原稿で、この原稿用紙に書いてね」
「わかりました」
「じゃあ、一回書けたら、生徒会の人か生徒会の先生に渡してね」
「了解です」
そう言って、生徒会室のドアに向かう。
「快凪、また明日ね~」
伯斗に後ろから声をかけられた。
「ああ。じゃあな。失礼しました~」
一回振り返って伯斗を見たあと、そう言って、生徒会室を出た。
あの光景を見る前に。
そう願って。
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