第14話 藍斗side チキンは甘辛。

「海里、本当に大丈夫なの?」


「大丈夫だよ。これ以上熱上がったりしないって。お兄ちゃんは学校に行きなよ」


「え~。分かったよ...」


 そんな会話をして、俺は家を出た。


 後で後悔するなんて思わずに。


ーー


──ピロン


 そのラインの音が合図だった。


『39.8。病院行きたい』


 そんな簡潔な文章。


「うええ」


 思わず職員室で声を上げてしまった。


「藍斗先生、大丈夫ですか?」


 職員室に来ていた朔に心配された。


「あっ、えっ、大丈夫だよ」


「そう、ですか。なら、良かったです」


 心配かけちゃったかな。


 うーん。


 再び俺は海里のことをどうしようか悩む。


 学校を早退する理由がこれじゃ物足りないし、何もできないじゃん!


 どうすればいいのだろうか...。


 俺はそう考えながら廊下を歩いた。


「なあ、藍にい。海里は大丈夫か?」


 雷斗が話しかけてきた。


 この呼び方の時だけはこいつ雷斗はためで話す。


 直せとは言ったけどね。


「う~んと」


 そう言いながら俺は雷斗にライン画面を見せた。


「えっ、藍にいはどうするの?」


「俺は途中で早退出来たら楽なんだけど、何にもできないし、今日の仕事を明日に回して早めに帰ってっていう感じかな」


「そう、なのか。なあ、それなら、、俺が早退して見に行っても大丈夫か?」


 雷斗は少しためらうように言った。


「えっと、それは嬉しいけど、雷斗も授業とかあるじゃん」


「大丈夫。なんとかなるから。それに、海里が心配だから」


「じゃあ、教師として進めるのはダメなんだろうけど、、お願いします」


 どうしても弟への心配が勝ってしまう。


「ああ。俺は体調崩したことにしておいて」


「了解。あと、これ鍵。海里に渡しておいてね」


「オッケー」


ーー


 雷斗には頼んだけど、海里が心配だから俺はいつもより早めに帰る。


 明日が大変だろうけど。


 帰りにあれを買おうと思う。


 海里は大好物だから、風邪が治ったら食べれるだろう。


 雷斗は普通に好きだし、大好物だから。


「すみませ~ん。チキン甘辛六本セットを一つくださ~い」


 そう言って、すぐ買った。


 そして俺は急ぎ足で家に帰る。


ーー


「ただいま~。大丈夫?」


 そう言って海里の部屋に入った。


 すると、看病で疲れたのだろう、雷斗がイスに寄りかかって寝ていた。


 海里もベッドでちゃんと寝ていた。


 顔色も悪くない。


 そして、お粥の残骸やゲーム残りが落ちていた。


「ふう」


 俺は安心してため息をついた。


 これからここを片付けするのがお兄ちゃんの役目なんだろう。


 そう言い聞かせながら。

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