第8話 僕を守りたかったから。

「俺、快凪のこと、恋愛的に、好き、になったみたい。応援、してくれる?」


 ああ、最後だな。


「ええっ、と、なんで?」


「あのね、一目惚れ」


 そんな簡単に人を好きになれるんだ。


 流架くん、メンヘラなのに。


 快凪くんに優しくされたからとかかな。


「そうなんだ。...いいよ。応援する。だから、、僕の恋も応援してほしい」


 ごめんね、快凪くん。


 僕は流架くんが快凪くんを好きになってホッとしている。


 らいくんの恋は実らないから。


 それに、僕の恋も叶いやすくなるよね。


 だから、自分の恋を優先させて嘘をつくよ


「いいよ~。海里の好きな人ってだれ?」


「ら、らいくん」


 やっぱり恥ずかしくなって、顔が赤くなった。


「やっぱり~。頑張ってね!雷斗もきっと海里のこと好きだよ」


 えっ?


「らいくんのこと分かっていないくせに、言わないでよっ!」


 流架くんの言葉に言いたいことが口から出てしまった。


「あっ、えっ、ごめん、海里」


「ううん。こっちこそごめん。八つ当たりだよね」


「う、ううん。海里が怒るの久し振りに見て、昔に戻った気がしたよ」


 流架くんは意味深におどけるように言う。


「そう?」


「うん。だって、昔っから雷斗のことで怒っていたじゃん」


「そんなこともあったような?」


「覚えてないの~?」


 いつものようにふざけあえる。


 それが続いてほしいと思う反面、もう嫌だと叫ぶ僕もいた。


ーー


「海里~。宿題見せて~」


 翌日、学校着くと一番に朔くんにそう言われた。


「え~。またやってないの~」


「海里、朔に見せるなら俺にも見せてくれん?」


「らいくんもやってないの~?」


「昨日、部活があったんだって」


 らいくんはサッカー部。


 ずっとレギュラーで強いんだよ。


 僕は、お菓子作りが好きだから、調理部。


 部活が休みの日が、調理部は水曜日だけ。


 サッカー部は、休みはないけどね。


 だから、らいくんと水曜日以外はいっしょに帰れるんだ。


 でも、今日が水曜日なんだけどな~。


「僕も部活あったよ~?一緒に帰ったじゃん」


「知ってるけどさ~」


 らいくんと話すたびにこの気持ちも大きくなる。


 いつものこれらいくんとの会話が楽しくて笑ってしまう。


「いいよ~。早く写してね~」


「「ありがと~」」


「次は二人ともやってきてね~?」


「え~。どうかな~?」


「無理」


「ねえ~、二人とも~!」


「わっ、海里が怒った」


 朔くんがおどけるように言う。


「む~」


 頬を膨らませていじけるように言った。


「かわい」


「らいくん、なんか言った?聞こえんかったんだけど」


「いや、何も?」

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