第5話:女神の耕し②

「皆さま、少し休憩いたしましょう!」


 ナノンさんがパンとお茶を持って畑へと戻ってきた。

 

 すごい、さすが魔法。普通なら何日もかかる作業なのにたった数時間で畑作りが終わった。

 苗植えも魔法で一発だった。ただ、今度は植える前にちゃんと苗の大きさをみんなで確認した。苗は細いものを選び、2本ずつ植えてもらった。間隔は大体5㎝。密植するとそれぞれの苗が助け合い、根を地中深く伸ばすのだ。通常の株間で二本ずつ植えれば球が大きくなり収穫量も増える。


「…………鳩子様。この後、グロウをかけようと思うのですが玉ねぎのプロの目から見ていかがでしょうか?」


 セルジュさんが恐る恐る私に質問する。


「グロウ?」

「強化魔法の一種です。通常だと味方の攻撃力や防御力を上げる効果がありますが、玉ねぎにかければ育ちが良くなるんじゃないかと思って」

「なるほど……追肥の一種みたいなものか」


 うちの畑では基本的に土の養分だけで育成できるから追肥はやってなかったけど、なるべく早く沢山収穫しなきゃいけないもんね。


「効きすぎない程度に、とか調整できますか? 追肥はやり過ぎると病気や腐敗を起こす原因にもなったりするから」


「…………私の魔力は元々低いので大丈夫です」

「良かったなぁ、セルジュ!!」


 それ、良かったのかな? と思わずツッコミを入れたくなったが、うん、良いことに変わりはない。


「なんだか……初めてだ。こんな気持ち」

「…………うん。収穫、楽しみだね」


 苗を植えたばかりの玉ねぎ畑を眺めながら、ミーミルさんとセルジュさんは笑い合う。

 そうか。二人とも畑仕事は本当はやりたくてやっている仕事じゃない。玉ねぎだって、別に好きな野菜じゃない。


 それなのに、収穫が楽しみだと言ってくれたんだ。めちゃくちゃ嬉しい。


「……そうだ!」


 私は立ち上がって、三人の顔を見た。


「育て方以外にもお伝えしなきゃいけないことがありました!」


「農家直伝! おいしい玉ねぎの食べ方です!」

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