第4話:王家の畑③

「つまり、なり手がいないと?」

「はい……光の国の農業は非常に過酷なものでして……」


 ミーミルさん達から話を聞くと、光の国は今深刻な食糧難に陥っている。

 火の国による他国への侵略戦争が始まってから、それまで均衡を保たれていた世界のパワーバランスが崩壊した。各国で治安が悪化し、略奪や強奪が起きている。そして、それはずっと平和が続いていた光の国でも例外ではなかった。


 バルドール王の命により困窮者へ食料の配給を行っているが、治安が悪化している一方の今、その数はどんどんと増え、収穫が追い付かない。さらに、最近では天変地異が立て続けに起き、農作物の不作の年が続いていた。元々いた城内の農夫たちは過労でみな倒れてしまい、セルジュとミーミルが管理するようになったのだ。


「どうして、魔導士のあなた方がやることになったんですか?」

「光の国の民は、全員力の差はあれど魔法が使えるのです」


 回復魔法、攻撃魔法、防御魔法、強化魔法、弱体化魔法。魔力が大きい人ほど扱える魔法の種類は多いけれど、そういう人は今ほぼ全員戦争に向かっている。


「私たちは、モノを動かすといった移動魔法か簡単な強化魔法しか使えないのです。戦闘向きの魔導士ではないのでこちらの配属に……」

 

 ミーミルさん少し悲しそうに私に言った。


「…………ミーミルも私も農業の知識はさほどありません。元々のこの土地を守っていた農夫は会話も出来ないままこの世を去ってしまいました」

 

 そういった後、セルジュさんはフードをぐいっと深くかぶり、肩を震わせた。泣いているようだった。


「農夫はセルジュの古い知り合いだったんです」


 ミーミルさんがセルジュさんの背中をぽんぽんとさする。


「ごめんなさい……辛いことを思い出させてしまって」 


 農業は元々大変な仕事ではあるけれど、光の国は過酷を極める状況だ。人材不足に経験不足、異世界であってもそれは同じなのだと痛感した。ならば、今、やることはひとつ。


「それなら私、手伝います!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る