第3話:光の国・ブレイザブリク①
先ほどのメイドのような女性が食事と一緒に別の着替えを持ってきてくれた。
今着ている、ウェディングドレスのような白いワンピースは本当にウェディングドレスだった。
これを着て、見ず知らずの男性と結婚する。一体どうしてこんなことになってしまったのだろう。
「あの……こちらも」
メイドの女性は私のつなぎと長靴を持っていた。泥だらけで汚れていたはずなのに、綺麗に洗ってもらったようだった。
受け取ってよく見てみると、洗ってもらっただけでなく元々ついていた泥のシミまで薄くなっている気がする。またすぐ汚れるからつなぎのシミ抜きなんて最近さぼっていた。なんだか、涙が出た。
「女神様……!」
メイドの女性がおろおろと困惑している。
「ごめんなさい。へへ……すごい、綺麗にしてもらったんだなぁと思ったら……なんか泣けちゃって」
照れ隠しで笑いながら涙をぬぐう。
農作業で使う道具は丁寧に扱えってお父さんがよく言っていた。
だから、お父さんの作業服はいつも綺麗だった。お母さんのもそうだ。作業着に穴が開いたら自分で裁縫もしてたっけ。
新しいものをすぐ買うんじゃなくて、大切に扱うこと。道具を大切に扱うことは美味しい玉ねぎを育てることと一緒だって。
めんどくさいなぁなんて思いながらもお父さんが生きていたころは私もちゃんとやっていた。
「あの……私に出来ることがあれば何なりとお申し付けください。ナノンと申します」
メイドの女性は困惑しながらも優しい言葉を掛けてくれた。
「ナノンさん、ありがとうございます」
「あの……それじゃあ教えて貰えませんか?」
「バルドールさんはどういう方なのでしょうか……?」
「バルドール様は我が光の国・ブレイザブリクの王であり、光の騎士団の騎士団長であらせられます」
「光の国……ぶれいざぶりく……きしだんちょぉ……」
ナノンさんは私がこの時点で全くついていけていないことを察したようだった。
頭にいくつも???が浮かんでいる私に、言葉を続けようか悩んでいるようだ。
「ごめんなさい、私この世界のこと本当に何もわからなくて……」
「む、無理もありません! 女神様は頭にお怪我をされていてお記憶が定かではないと、ヘーニル様からお聞きしております」
「僭越ではありますがこの国や世界のことをお話させていただきましょうか……?」
「お、お願いします!」
その後、ナノンさんは私にゆっくりと分かりやすく話をしてくれた。
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