第45話 寝起きの頭痛

ズキン

「ぐっ……!?」


強烈な頭痛で目を覚ます。死にかけた時に寝かされていた部屋に似ている気がするが、LEDライトの向きが90度違う。


「ここは……っ!」

強烈な頭痛がまた襲う。頭痛持ちではないし、慢性的に痛いわけではない。そして、目が覚めるほどの頭痛は2年ほど前に経験があった。

重大な危険が近づいている、ということだ。


「ただ……ここはどこ―――」


ベッドから起きたと同時に、ブラックアウト。


「―――んあ?」


気づけば倒れていた。

バキン、という効果音が聞こえそうなほどのすさまじい頭痛が襲う。そして、天井が崩壊する。

「は?」

崩壊というよりかは、切断、いや、溶断された。三角形にきれいに切られた天井が落ちる。そして、赤熱した天井部分と夜空が見えた。


「赤熱している……?」


その時だった。



―――起きろ、楓!―――



かすかにそう聞こえた後、激しい頭痛。頭痛の方向を見れば、溶けだして流れ出す。落ちてきた天井が。


嘘だろまじか。さっきブラックアウトしたばっかりだが?

しかし、溶岩は止まらない。


落ち着いて、大きく息を吸う。そして息を止め、立ち上がり立て掛けてあったスナイパーライフルをつかんでそのままベッドに飛び乗り、大きく息を吐く。


「頭痛が続きますか……それに、ここまで動いても意識がブラックアウトしない」

確認するように言う。

「ただ……あまり時間はないようですね」


溶岩に触れた寝具が燃え始めている。その代わり天井にできた穴をふさぐように存在した落下物はなくなっている。


「まずは脱出、ですかね」


大地と空の子供達インペルフェクツの能力で地上に出る。地上付近には青い円盤のようなものが浮いていたが、自分が出てくるとどこかへと飛んで行った。


「ん? やけに明るいですね?」


不思議に思うが、そこで思考は終わる。よく見える状態でしっかりとヘカートを組み立て、撃てる状態とする。


パーカーと耳を隠すネコミミニット帽子はそのまま。

そして、ネコミミの後ろに手を当て、目を閉じる。瞬間、世界から色が消え、認識領域が一気に広がる。


「頭痛の方向は、あちらですか」


炎が上がっている2つの地点のうち、3人の人物が確認できる地点。爆発でもあったのか、地面がめくりあがっているのがわかる。そしてそこにいるのは、2人はよくわからないが、残りの一人はよく知っている。


「極楽、いえ、桃花さん、ですか」

本来ならすぐ逃げるべき状況。激しい頭痛もそれを後押しする重要な理由。

しかし、それと同時に頭痛がする方向へ向かうべき、という予感もする。


「と、言うよりそれ以外の方向から嫌な予感がしますね」

確認するようにつぶやく。


少し考え、桃花のいるところへ向かうことを選択する。

「勘に従うべきですね、悩んだときは」


アンチマテリアルライフルを左肩に担ぎ、速足で桃花のほうへ歩き出した。動いているのかだんだんと近づいている気がする方向へ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る