第40話 6月12日 side 常楽
3次元の裏路地。そこに、不自然に浮いた扉があった。そのドアノブが内側から回され、扉が開く。
そこから出てきたのは、局長と常楽秋桜。そして金剛紅葉。
「局長、本当に第零軍が来るのでしょうか?」
「来る。間違いなく、来るのじゃ」
断言する局長。
「だからこそ、迎撃するのじゃ」
「現状維持を望む私としては反対意見はありません。第零軍の介入は、大きく3iの
「そうじゃ」
そういって煙草を取り出し、火をつける局長。何も言わない常楽。
「ふぅ……それに側近の金剛もつれてきておる。本当は石手も呼びたかったが、まだ回復していないようでな」
「そうですか。確かに、石手さんは今回の作戦でかなり無理をしていましたから、しょうがないでしょう。ですが」
一度言葉を切る常楽。視線の先には、夜でもわかる色とりどりの翼をもつ人影が上空から降りてきている。
「来たのう」
「そのようです。ですが、金剛さんを連れてきたのは間違いだと思います」
言い終わった瞬間、局長の胸から右わき腹にかけて斜めに傾いた、純白の翼が生える。それは、局長の後ろに控えていた金剛が持つ金属光沢のある球体から出現している。
「局長、俺は謝罪しない。そして、この程度で死ぬとも思っていない。だが、お願いだ。今から2日間、ここで寝ていてくれ」
翼が引き抜かれる。あまり血は噴出さなかったが、倒れた後から血が広がっていく。翼には血の一つもついていなかった。
「早く行きなさい。そして、すぐに扉を消すように徹底してください」
「最後に聞かせてくれ。なぜ俺に協力した? 現状維持を望むなら、むしろ俺を止めるべきだったのではないか?」
「私が現状維持を望んでいたのは、まだ時期ではないからです。幸か不幸か、オムニアは一枚岩ではないのです。上空の国内問題がないわけではなく、滅んだとされる中国も実際には滅んではいません。オムニアの国内ががたつくのは時間の問題です。その時までは現状を維持し、中国やほかの勢力との協力を取り付けるのが最も良いと考えたからこそ、です。ですが、金剛さん。あなたのやり方なら、オムニア瓦解の時間を早めることができます」
「そうか……わかった。すまない、ありがとう」
「謝らないでください。私も金剛さんと同じです。ここで死ぬつもりはありません」
「……武運を祈る」
扉を閉める金剛。3次元から扉は消え、常楽のみ残る。
「さて、こちらに気づいてもらうよう、展開しましょう」
背中に1つの金属光沢をもつ球が出現する。そこから、光り輝く翼が展開される。太陽光と比べ、遥かに弱い光量。しかし、地球の影の中では十分な光量でもあった。
翼をもつ人物が現れる。血の池に沈んでいる局長に視線を向けた後、大きく翼を広げた。それが、戦闘開始の合図となった。
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