第24話 交錯する思惑 side 局長+α

「まさか、おぬしがおるとはのう」


「それはこっちのセリフなんだがなぁ、ミ」


「局長じゃ。今はな」


「そうか、了解した。局長」

つい先ほど局長を雷撃で攻撃したものが特に疑問を持たず言う。


「しかし……おぬし、いつから死霊術が使えるようになったのじゃ?」

魂の翼でも出来ぬじゃろう? と局長は付け加えた。


「ああ、それは雷(いかずち)の翼の力だ。ほら、人間の体は電気信号で動くだろ?だから、状態がいい死体に電気を流し、心臓を無理やり動かして栄養分を供給すれば、1日くらいなら動かすことができるさ」


「なるほど、理屈は分かったのじゃが、天使の翼ではできんじゃろうに」


「そこなんだよな。俺も上に住んでいた時に思いついたんだが、どうしてもできなかった。その時さ、あの人を思い出したのは」


煙草を深く吸う局長。はぁ~、とため息をつくように煙を吐く。


「堕天使ガブリエル、初代ガブリエルじゃな?」


「ご名答。かつて始まりの天使から直に力を授かった、4人。その中でも最強と言われた、初代ガブリエル」


「あやつだけ最初から翼が体から離れておった。最初はそれが何を意味するかは分からなかったが、最初から何かに特化した翼ではあったのじゃ」


「そう、『機械』、『時間』、『空間』、『次元』、『兵器』、そして『全視ぜんし』の計6種の翼をもっていた」


「非常に明るく、そして意外にもかなり残酷な性格をしておった……いや、壊れていたのじゃろうな」


「中国からの攻撃で、目の前で家族が木っ端みじんになればそうもなるだろう」


「だからこそ、わしは信じられんかったのじゃ。ガブリエルが裏切ったと聞いたときは」

2本目の煙草に火をつける。

「まさか、初代ウリエルを殺すとは、だれも予想しておらんかったよっと、これは機密事項じゃった。忘れてくれ」


そこまで言って、局長はそれた話を元に戻した。

「それで? 堕天使の翼だと何が違うのじゃ?」


「何が違うかと一言で答えるなら、力の制御の制度が極端に向上する」

威力も増えるし癒着前なら他人にも渡せる他人から奪えるのは二の次だ、と付け加える。


「なるほどのう……だから、雷の力でも死体を壊さんように調整した微弱な電気で動かせるわけか」


「そのとうり。だから」


ドバァン、という爆音が雷の翼をもつ者の言葉を遮った。

少しした後、同じような爆音がまた聞こえた。局長は立ち上がった。


「行くのか?」


「そうじゃの……急がんといかんな」


「そうか……久しぶりで楽しかったんだけどな、局長」


「そうじゃの……では、一連の戦いが終わったら、わしのおごりで飲みに行こう、なのじゃ」


「なぜここで死亡フラグを立てた!?」


不敵に笑う局長。

「ではまた会おうなのじゃ」


「ああ、またな」


局長は4対の翼を出現させ、音のなったほうへ飛び去って行った。


「はぁ、行ったか……これでいいのか?」


「はい。ありがとうございます」


そこには長い白髪の、女子の高校生の平均身長より明らかに小さい、そんな少女が立っていた。ただし、目をつぶったまま。


「しかし、わからないな。これほどの情報の代わりが、あいつの足止めで本当に良かったのか? うまく売れば億単位の価値がつくというのに」


「いいんですよ。というより、今回は私が動くと情報の価値がなくなりますから」


「……どういう意味だ?」


「気にしないでください。そのままの意味です」


「そうか……」


「それでは、失礼しますね」

またのご利用を期待します、と言い残し、黒い堕天使の翼を1枚展開させ、少女は飛んで行った。


浄瑠璃じょうるり向日葵ひまわり、か。聞かない情報屋だが……」


独自に集めた情報から、ある程度の予想はできていた。あとは、どれが最も確からしいか。その確証を得るために、無名の情報屋も頼ったが、浄瑠璃はその一つだと言い切った。


「予知系の翼の持ち主か、それとも別の何かか……まぁ、何でもいいが」

男は立ち上がる。


「それにしても、なんとも不思議な雰囲気をもった少女だったな」

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