第18話 5月17日 幕間
『緊急事態発生、緊急事態発生。非戦闘員は直ちに非難を―――』
「焦ってはいるようですが」
管理塔襲撃の一部始終を見ていた、主犯が言う。
「これで
表情は全く変化せず、淡々とキーボードを操作する。
「自分自身が動くせいで不安定ですね・・・・・・しばらく様子見です」
キーボードから手を放し、閉じていた両目の瞼を開く。
瞼の下に眼球はなく、空洞となっていた。
「いったい何が起こっているんだ……」
観音は茫然としながら、電柱の上に立っている。各地で計画加担者以外との戦闘が激化している。何とか持たせてはいるが、圓明の護衛隊または計画加担者たちと接触するのも時間の問題だろう。
「ここは引くべきかな」
横から声がする。
「
「ううん、戦闘が激化しているのはどうも、鍵へ急ごうとしているわけではないみたいなの。負けて負傷した部隊の話では、管理塔へ急げ、とか言ってたみたい」
「偽の情報をつかまされた……? いや、違うな。圓明を殺す、というのは手段であって、目的じゃなかったわけか……?」
「そうみたいなのよね」
何かがおかしい……、と思案する観音
計画加担者でない者たちは傭兵をのぞき、反オムニア派の人間であることは確認が取れている。圓明を狙う理由も、今回の報酬は強力な影響力をもつ者と予想できるためそれをオムニアに渡すことを阻止することだ。
まるで見えざる手で操られているような感覚がしている観音。
「今は、撤退が先か。霞、頼む」
「わかってる。今やってるから」
電線の上に立っている霞の背中には、金属光沢のある正二十面体が浮かび、そこから翼の形をした部分の景色がゆがんでいる。
「転移の翼。俺の
電線のや電柱の上に、次々と人が現れる。多かれ少なかれ傷を負い、意識のないものは背負われたり、肩を貸されていたりしている。
「今回はここで引く。正直、1部隊では手に負えない事態が起こっているようだ。お前たちはこのまま3iの次元に帰り、情報収集を。俺はしばらく3次元の情報収集をしてから帰還する」
「「了解」」
意識がある者たちは皆一様に了承の言葉を発し、霞と一緒に消える。
「さて、面倒なことにならないといいが……」
そういいながら刀を鞘ごと腰から抜き、思いっきり西に向かって投擲する。身体強化はもちろん使っているため、刀はすぐに見えなくなる。
「あの速度だと……そろそろだな。
逆召喚の言葉を発し、観音は電柱の上から姿を消した。
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