第10話 ヨクアル ジョバン ノ ベンキョウカイテキナモノ②
「し、質問?」
今の段階での質問……1つある。手を上げる。
「はい、圓明君」
「あの、その
「ふふ、いい質問です。では逆に、圓明君はなんだと思いますか?」
「はい?」
質問を質問で返された。
少し考えて、声を出す。
「ええっと、体力、というか、カロリーなんじゃないですかね?」
「あら、意外とまともが返ってきたのは久しぶりです。これまで多くの講義をしてきましたが、皆さんマナとかエーテルとか魔力とか魔素とか言ってる人ばっかりでしたので」
はぁ、とため息をつく常楽先生。そりゃ、空の上に人が住んでいる世界ではあるが、観測すらできないそんなものではないだろう。というかエーテルって液体だろうに……。
「とりあえずカロリーではありません。これ以外に何か浮かびますか?」
少し考え、首を横に振る。
「では正解です。
挙手。
「はい、何か?」
「え、素粒子って、宇宙線とかのことですよね?」
「そのあたりのことはまだよくわかっていません」
「は?」
「素粒子をエネルギー源としているのは宇宙線が曲がっていることからも確認はされていますが、どの素粒子が、どのくらい使われているかはよくわからないんです。未知の素粒子、ダークマターの可能性も完全に否定できていません」
「結構あいまいなものなんですね」
「ですが、エネルギーが何であれ強力な力には変わりないので、対
対
「さて、素粒子がエネルギーですが、それを意識して使っている人はいません。自分の
だから、午後は戦闘訓練なんです、と付け加える先生。
「そして、自分の能力を知るのがこの午前の講義です。今日は基本中の基本、身体強化の
そう言うと、ひとりでに動き出した。血に濡れた、というか、さっき血を拭いたブラウスが。おそらく
「身体……強化?」
てっきりアニメやライトノベルみたいに全身にオーラをまとって、みたいなものを想像していた。
「そうです、これが私の身体強化の力です。身体強化の
俺やその他一般の人たちがイメージする強化能力そのままのようだ。
「そしてもう一つは、特殊な能力です。この特殊な能力は人によりさまざまです。例えば、更なる身体強化や特定部位、腕や脚、強化であったり、犬並みの嗅覚を得たり、鷹のような驚異的な視力と視野を得たり、金剛君のような肉体変化、硬化であったり、私のような、血を操る力であったり、です」
ブラウスが先生の隣に。一部しか、それも極力少ない面積で血を拭いたはずが、すでに8割ほどが紅い。さらに広がり、赤黒いブラウスに。
そして、なぜかブラウスだけでシャドーボクシング……みたいに動く。
「戦ってみますか? このブラウスと」
……勝てる気がしねぇ。
「いや、いいです」
「いい判断です。金剛君でもまだ勝てないと思います」
そんなに強いのか。金剛と戦ったことはないが。
血に濡れたブラウスを羽織り、言葉を続ける常楽先生。
「私はこのように血そのものと、それに濡れた布を操れます。戦闘時は、しっかりと血に濡れた戦闘服を着て、自分の体だけでなく服と、そして血流を操作して内部からの3重での肉弾戦を行います」
無茶苦茶だな……
「身体強化の概要はこのような感じです。質問は」
早めに首を振る。
「無いようなので、次は圓明君の身体強化の能力についてのお話です。最初に言います。あなたの身体強化は、
そう言うなり黒板に向かって絵を描く。大きな円に、それに頂点が接する6角形。その中には、しっぽが二本ある猫のシルエット。幻の生き物、というか、妖怪じゃん、猫又って。
挙手。
「はい、なんでしょう?」
「猫又って妖怪ですよね? そんなのありなんですか?」
「アリです。というか、ほかにも現実にはいない生き物の身体強化をもってる人はいます。例えば、ドラゴンとか、フェニックスとか。私が一番驚いたのは、クラーケンでした」
「なんでもありなんですね」
「なんでもありです。だから、猫又も問題なしです。さて、ここに描いたのはあなたの
電気が消され、黒板に映像が映る。その映像は、俺と石手の模擬戦。ぶっ飛ばされ、壁に激突し、背中から落下する俺が映る……が、落下中に体に異変が。猫耳と長い猫のしっぽが二本、いきなり生えた。しっぽはズボンを突き破っているのかちゃんと外に出ている。
そして体をひねって着地。まるで猫みたいに。
映像が止まり、電機がつく。
「この後、この部屋を出るまで猫耳としっぽは生えたままになっていました。これは無意識で起こったものです」
「確かに発動しようとして発動したものではないですが……何故わかるんですか?」
「理由は、耳はわかりませんが、しっぽが実体化していないからです」
常楽先生曰く、身体強化のうち、動物を模したものは発動すると体から耳やしっぽなどが生えるらしい。そして、意図的に発現させたときはそれらは質量をもった肉体であるが、無意識の場合は実体化はしないらしい。確かに、ズボンと下着には穴は開いていなかった。
「無意識での発動では身体強化を十全に扱うことはできません。特殊な能力も同じです。体で覚えろ、とは言いましたが中途半端に発現してしまう癖は今のうちに矯正しておかないと後後になって命取りとなります。ですので、しっかりと意図的に発現できるように指導します」
渡されたのは1枚の写真。猫耳と2本のしっぽが生えた俺が映ったそれである。
「実際に静止画を見たほうがイメージしやすいと思いましたので用意しました。発動するイメージは、素粒子を体に集めて、全身に巡らせる感じです」
「…………」
擬音語満載の説明ではないため理解はできる……わけがない。だが、やるしかない。
言われた通り、素粒子を集めるのは……外部からエネルギーを得る感じだろうか? なんだか体全体があったかくなってきた気がする。そしてそれを全身に流せばいいのだろ?
「えっ、まさか!」
「はい? っ!?」
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