第6話 幕間 

「遅きに失したか」


暗闇の中、声が響く。


「仕方なかろう。まさか通達が来たその日のうちに、ターゲットが来るなどだれが予想できる」


「しかしねー。二人くらい接触してたはず。一人は死んだけど」


黙れ、という声は闇に溶けるだけだった。


「そこのところどうなのだ?」


「その時にはまだ、通達は来てなかったの。それよりも重要なこともあったの」


闇の中からいきなり炎が吹き上がる。


「ふん、ようやくお前たちも羽根つきを手に入れたか。遅すぎてそろそろつぶすところだったぞ?」


「やれるもんならやってみな」


ぱんぱん、と手をたたく音。


「やめろ。ここに組織間の争いをもってこられても困る。3次元でやれ。それよりも今後の対策についてだ」


一同しばらく考える時間が与えられる。

しばらくして、一人口を開いた。


「俺たちは降りる。今回は運がなかったとしておく。今までで一番のカギだとは思うが……ま、それに等しいものはこの後も来るだろう」


「そうか……お前たちが来てくれたら、非常に楽になったんだが」


「面識があるといっても、向こうは昨日まで僕の名前さえ知らなかったの。そんなのが来たところで、なの」


「なんともすごい間柄だったのだな……」


ははは、と乾いた笑いが漏れる。


「じゃ、俺たちはここで帰ろう。これ以上聞いてたら、逆に疑われそうだ」


そういって男と女が部屋を出ていく。


「さて、最大の当てが外れたが……ほかに抜けるものは? 作戦を聞いてからでは、返すわけにはいかないだろう?」


一人、動く。


「わらわも降りよう。戦力としてはここにいる誰よりあるじゃろうが、所詮はつぶれた組織同氏の傷のなめあいにすぎぬ組じゃ。今回のターゲットにつぶされた組織もおる。皆、あやつだけのせいではないとわかってはいる。しかし、感情に任せて殺してしまう可能性もなくはない」


「そうか……」


「止めることは許さぬ。追えば……わかるな?」


4枚の翼が展開される。体から離れた、堕天使の翼が。

堕天使の翼に照らされた十二単を着た銀髪の女が口を開く。


「敵になろうというのではない……わらわはただ、降りる、と言っているのじゃ」

女は部屋を後にした。


「くっ、次元の支配者サタンまでも降りるとは……」


「まーまー、敵にならないだけいいんじゃない? はっきり言って次元の支配者サタンと共闘なんてしたら、全部持っていかれるよー?」


「その通りだが……ターゲットは刺青を入れたうえ、すでに能力が発現しているというじゃないか」


「その心配はないでしょう。さすがに至近距離狙撃手ゼロ・スナイパーと言っても、カギを前線に出すとは考えにくい」


「それもそうだろう……だが、万が一ということもある。それを考慮に入れたうえで、作戦を立てようじゃないか」




「これ、少し待ってはくれぬか?」


「これはこれは、次元の支配者サタンではないか」


その言葉でムッとする十二単の女。


「はあ……いつからかそんな名で呼ばれるようになったのか……しっておるかのう?」


「堕天使……いや、悪魔の頂点、サタン。これにふさわしいのはやっぱりあなたしかいないの。大日さん以外は」


「なるほど……ではさしずめそなたはルシファー、かのう?」


「ほほう、中二病だけど悪くないの」


にやりと笑う女。


「それで、抜けた理由を教えてくれないか? カギは別にいいが、今後のことを考えると抜けたのは少しまずくないか?」

男が話を振る。


「いや、ただしい判断だとわらわは思ったがのう。もし誰も抜けぬのなら、わらわも残るつもりではあったが」


「そうなのか?」


「どうも嫌な予感がするのじゃ……今回のターゲット、予想ではあるがただものではない」


至近距離狙撃手ゼロ・スナイパーが? まさかそんな」


「それは僕も同意見なの。羽を手に入れたからこそわかるの」


しばらく沈黙が。


「それで? 抜けた理由は何なのじゃ?」


「うん、僕もあなたに聞いてほしかったの」


深呼吸を一回。


「―--ガブリエルって、知ってるの?」


「「なっ!」」

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