第7話 第二戦線
巣窟に着いた三人は遠くから悠人の様子を観察し始めた。悠人は巣窟でただ空を見上げながら虚を仰いでいた。その片目の内にある白目が黒く染まっていて、明らかに身体が完全に乗っ取られたことを示唆していた。
「あれは……」
「本当に身体を乗っ取られちゃったんだ……」
ウーユは明らかに凹んでしまう。ウーユは悠人を辛い思いを持って、眺める。すると、悠人が三人の存在に気づき、彼らの方を見つめる。
「やべ、バレた!」
「やるしかねぇ!」
二人は立ち上がり各々の短刀を持って、悠人に向かって走り込み、攻撃を仕掛ける。
「
ハクの身体は雷を纏い、竜眞の身体は火を纏う。悠人の目は変わらず、驚きもせずに、防ぐ構えも碌にとらない。代替、鳴動影が悠人を覆い一切の攻撃を防いだ。
「こんちきしょーが!」
ハクがどんな言葉を紡いだところで無駄、悠人は
「
その口を起因として、ハクと竜眞に向けて身体を擦り抜ける霊的に似た氷が突然と出現する。避ける手段はない。刹那、氷は赤く照り始める。
「
二口目、氷がある場所が爆発する。至近距離の爆破に二人は避けられず、まともに被ってしまう。
「ハクさん!竜眞さん!」
ウーユは咄嗟に声を上げたが、黒煙の中に二つの立つ影が見えた。
「まだやれるか?」
「嗚呼、こんなんで終われねぇな」
「じゃあ、一二の三でいくぞ」
「
二人の視界を遮る黒煙がゆっくりと晴れて、悠人を見定める。
「一……二の……」
二人は、呼吸を整えて、目先の敵を睨める。足裏の靴を地と摩耗させる。短刀を強く握る。自分の覚悟を高める。そして合図は来る。
「三!」
ハクは駆けて再び悠人の居合に入り込もうとする。必然、悠人はそれに抵抗の行動を図る。
「
悠人に向けた放たれた矢は文字通り一矢、ハクの攻撃を防ぐ為に開かれた氷の盾を大きな音を立てて溶かし破る。
「今だ!」
「どりゃああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!」
それは一瞬の隙、逃さぬ様に、ハクは声を荒げて短刀に遥かな力を込めて、悠人に一矢を報う。悠人は初めて一歩退いた。そして頬を薄く切られた。それを知れば、悠人は舌打ちをする。傷を指で撫で、舌に運ぶ。
「しょっぱ……
悠人の背後から、赤く光る槍が現れて、それは竜眞を狙っている。
「竜眞!」
「分かってる!」
竜眞は爆槍を止めるべく弓矢を構える。
「
竜眞が弓矢を射ると、弓を中心として、赤の半透明をした壁の様なものが現れる。槍は壁に衝突した瞬間、柄の方から連続的に爆発していく。爆発が完結した瞬間に壁は壊れてしまった。それを確認すれば、竜眞は黒煙が消える前に空高く跳び上がる。そして弓矢を再び構える。
「今度はこっちの番だ……
竜眞が弓矢を再び射れば、突如と眩しい閃光が辺りを包む。そして、矢が僅かに走れば、
二人の攻撃のタイミングが噛み合い、悠人へ二つの攻撃がやってくる。悠人はそれを構えることもなく、どちらも手で止めた。
「……!」
「マジかよ……」
「
悠人が口にした刹那、悪い感が気づいたか、ハクは竜眞を抱え、戦線から離脱するべく逃げ始める。
「ちょっ!ハク!」
「駄目だ、あの能力を出されたら俺たちに勝ち目はないぞ」
二人は巣窟を抜け出そうとウーユのところに向かうが、次第に辺りが氷柱で埋もれていく。ハクはもう間に合わないと気づいたか、竜眞を押し投げた。
「え……!?」
「早く逃げろ!
竜眞は理解に苦しんだが、ハクの足が氷漬けにされているのを見て、今自分に迫っている危機を知る。竜眞は大きく頷いて、ウーユの背に乗り、巣窟を抜け出していった。
「よし、行ったか……悠人、いや闇龍、共に御陀仏と行こうぜ」
ハクは不敵な笑みで悠人を嗤ってやった。
「
それは最終手段だった。ハクと悠人の目の前に強い光が迸り、瞬間、巣窟全体を包む大爆破を起こした。その音は、巣窟を抜け出し廃墟に帰還中の竜眞とウーユにも、少年団の廃墟の方にまでも轟いた。
「……ハク、あいつ何やってんだよ」
竜眞は拳を握り締めた。
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