第5話 兄弟戦線・二

「……!」

 

 雷牙はあまりにも唐突な武器の破損に吃驚きっきょうせざるを得なかった。それ故に雷牙はその体躯全体に隙を持たせてしまう。悠人がその隙を逃すわけもなく、悠人は氷柱で雷牙を巣窟の壁へと飛ばして、強打させた。

 

「雷牙!」

 

 雷牙は気を失ってしまい、沈黙してしまう。辺りは絶望に満ち始めた。少年団に圧倒的不利な状況が強いられている。敵はたった一体の龍だというのに。

 

「この野郎!」

 

 雷牙の沈黙に怒りを孕ませたガナリは、驀地まっしぐら直走ひたはしり、愚直に悠人の首を狙う。が、悠人は自身の影に融解する様に、姿を消した。

 

「くそ!何処行った!?」

 

「兄さん!上!」

 

 ウーユに言われて、上を見上げると、そこには悠人が上から奇襲攻撃を仕掛けていた。ガナリは槍で防いだが悠人は躊躇うこともなく、剣へ力を込めていく。

 

「悠人!目を覚ませ!」

 

「目なら覚めてるよ」

 

 悠人の返事は、ガナリにしか聞こえなかった。ただ、確かに、悠人の目は自我を忘れずに焦点を定めていた。

 

「……お前、まさか」

 

「……」

 

 刹那、悠人の顔が僅かに綻んだ様に、ガナリは見えた。直後、氷柱がガナリの背中を突いて、ガナリは激しい痛みに気絶してしまった。

 

「これ以上は流石に無理だ、撤退だ」

 

 それを告げたのはハクだった。

 

「だけど!」

 

「雷牙もガナリもやられたんじゃあ、俺たちの打つ手がない……今は撤退して悠人の様子を見るのが先決だ」

 

「…………分かった」

 

 竜眞は顔を軋ませるが、同意するしかなかった。ウーユが竜の姿になり、龍郎を拘束している鳴動影を切り裂き、雷牙、龍郎、ガナリを乗せて、少年団の廃墟へと向かった。ハクたちもそれを追う様な形で撤退したのだった。

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