7 現在

ゲートをくぐりゲルマグ公国をあとにする。

一緒に戦った傭兵たちは、イーサンの提案により

正規軍に組み込まれることとなった。

 

イーサンは、例のごとく転生者狩りギルドの

事務係カロリーネが待つ喫茶店に入る。

「お疲れ様でした。報酬になります」

「おお!」普段の報酬に比べれば多い報酬だった。

「今回のクエストは、戦略系なので報酬もそれ相応に

 なっています」

 この辺りは、律義に現実世界と同じ報酬体系らしい。

 確かに現場仕事のクエストほど安く

 巨大プロジェクトほど報酬が高い。

 現実世界でも戦略系ファームとかはエリート中の

 エリートだったからな。

 過去の思い出がよみがえる。

 イーサンは、夜遅くまで残業していた東京での日々を

 思い出す…。ということはなく、現実世界では、

 性欲以外特になにも取り柄がない俺は、

 コンサル業界など縁とゆかりもない日々を送っていた。

 

「さて、これからどうします?」

「これから?」

「まだ、危ない橋渡る覚悟あります?」

「覚悟はないですけど興味はあります」

「分かりました。では、次のクエストも戦略系でよろしいですね」

「ええ」

 この異世界でさくっと稼いで早いとこ異世界FIREを

 早いところ決めたいところです。

 稼いだら片田舎で隠居しながら自給自足でもして

 暮らすか…。

 あー足が重い。次のクエストめんどくさいな…。

 ゲード飛んでしまえばそうでもないんだが、

 飛ぶまでが憂鬱だ…。

 だれか、俺の代わりに働いてくれないな…。

 はぁ…。行くか。


 ゲードでワープする。


 目的地に向けて歩いていくなかでギルド協会を見つけたので

 必要な情報を集めるために入る。

 求人やクエストなどの内容は、アイテムの販売、交換などが

 張り紙としてはられている。

「え! 善の皇帝を倒したんだよ」

「えー! そうなんですか?」テーブルの一つに自慢話をする

 Aランク冒険者とそれにむらがる女どもがいる。

 優秀な冒険者の周りには、高確率で女が群がっている。

 まあ現実世界でも似たような状態を見たな…。

 もちろんDランクの俺には全く女は、寄ってこない。

 まあ金をためてとっとと隠居する予定だからどうでもいいけどな。


 こいつか…。

 街に中に仮面をかぶった男性のポスターが張り巡らされていた。

 今回イーサンが、戦う相手だ。かなり民衆の支持を集めているようだった。

 

「おい! お前!」憲兵から話しかけられる。

 憲兵と言っても異世界なので、魔法のステッキを持った

 魔術師だった。

「はい」

「お前、今日は何の目的でここにいる」

 異世界職質始まった…。

「はい、クエストのためにここに来ました」

 イーサンは、依頼書を見せる。

「グシーナ? おい! なんだこれ?!」

 憲兵の表情が変わる。

「いや、なんだと言われても知りませんよ」

 知るわけないだろ日本人がヨロッパに放り込まれたような

 もんだからな。まして依頼人のことなんか、

 異世界ペディアでもないかぎり分かるわけないだろ。

「知らないだと? お前内通者だろ!」

「は? いや、だからクエストしに来ただけって

 いってるじゃないですか」

「両手を後ろに回せ」

「は? いや意味が」

「いいから回せ」いつのまにか、応援が駆けつけており

 イーサンの周りには憲兵が詰めかけていた。

 イーサンは、捕まってしまった。

 

 連行されていく道すがら目の前を人型ロボットが通り

 憲兵が停止し敬礼する。

「どうした」機体の中から大量の勲章バッチのついた

 軍服を着た兵士が現れる。

「は、スパイです。なんでも将軍からの依頼で来たとのこです

 名前は、イーサンと」

「おお! 君がか! 良く来てくれたな!」

 憲兵たちは、困惑していた。その後憲兵は、

 態度を豹変させすぐに両手を縛るために使用していた

 呪符を解く。

 

「さきほどはありがとうございます」」カルーン共和国政府を訪ねる。

 巨大な政府庁舎だった。

「いや、すまなかったね。我々は今現在

 反乱軍に苦しめられている。」政府軍将校グシーナが出迎える。

 グシーナは、今の政府が直面している事態を説明しようとするが

 すぐにその説明は打ち消される。

「将軍!」グシーナの元に部下が急いで駆け寄ってくる。

「なんだ、今客人を迎えているところだあとにしてくれ」

「急いで指令室まで!」グシーナの部下は、イーサンのことを怪訝そうな

 表情で眺める。無理もないDランクのクソ冒険者の

 用事などどうでもいいのだろう。

「将軍、どうぞ」イーサンも急ぐよう促す。

「君もきたまえ」

「あ、はい」

「彼は?」

「大丈夫だ彼は、協力者だ」


「将軍」すでに指令室は幹部たちが

 集まっていた。薄暗い部屋の中には、モニターが並んでいた

 画面には、街中に貼られていた仮面の男が映っていた。

「セレス自治国の自治を直ちに認めろ。でなければ

 メリッサを処刑する! 期限は、二十四時間!」

 この男は、リンガーと言われるおとこらしい

 この男とこの国は、死闘を繰り広げているらしい。

「なんということだ…」幹部の一人が、頭を抱える。

テーブルの上に人質がとらわれているタワーの

 映像が表示される。

「映像化から姫様は、十二階に監禁されていると

 思われます。エルフセントラルタワーには、百三十人の

 人質がとらわれています」

 「どうだ? イーサンいけそうか?」

「分かりました。行きましょう」


「これは…」倉庫に行き戦争用の人型ロボットを見せられる。

「YAー三十だ。使ってくれ」イーサンは、機体に乗り戦場に向かう。

 向かう途中にリンガーの説明を受ける。

 リンガーは、ネレー革命軍を名乗っておりネレー自治国の

 設立を求めてテロ活動を行っているようだった。

 市民からの支持も高く統治を困難にさせているという。

 そしてこのリンガーは、ユニークスキルハートカッターを

 持っていた。一定の距離に近づいた敵を洗脳してしまう

 スキルらしい。


 現場に着くとすでに大勢の報道陣と人型戦闘機が、詰めかけていた。

 エルフセントラルタワーは、一本の橋からしか侵入することは、

 できなかった。

 しかし、その橋はすでにネレー革命軍に封鎖されていた。

 さらに、ここに数百人の人質も取られていた。

 

 「我々の国を守るため戦います! ネレーのクソテロリスト

 かかって来いよ!」機体から降りるとカメラに向かって

 カルーン共和国の男性兵士が威勢のいいことをいっていた。

 おそらく広報用の動画かなんかだろう。


「君が、イーサンか」現場の隊長のシロッコが、話かけてくる。

「どうも」手を差し出し握手する。

「昨日の今日で、いきなり実践はつらいだろうから

 今日は、まあ様子でも見ててくれ」

 イーサンは、作戦への参加自体は、将軍からの連絡がしっかり

 いっているせいか断られこそしなかったが、

 そこまで期待されていないという感じだった。


「おお!」全裸にされた人質のカルーン共和国の王族の女性ナディアが

 人目にさらされる。群衆がざわつく。



「突入準備完了です」

「よっし」交渉は、すでに終わり突入の指示が出されていた。

 正面の橋からカルーン共和国軍の人型戦闘機が突入する。

 旧式の安物の人型戦闘機で武装したネレー革命軍の機体は、

 比較的あっさり撃破されていく。

 カルーン共和国軍は、タワーへの侵入を成功させる。

 イーサンは、随行してタワーの目的階へと到達する。


「動くな!」そこには、仮面をかぶったリンガーが、

 人質のナディアに銃を突きつけ脅す。

「銃を捨てろ! お前のお仲間はすでに捕まえた

 タワーは、すでにわが軍の人型で包囲されている」

 武装したカルーン共和国の兵士たちが、リンガーに銃口を向ける。

 人質は、国王の娘だけあってそう簡単に手で出しはできなかった。

 「それは、どうかな」リンガーは、鈴を取り出し鳴らす。

 「すまないな…なんかいも同じスキルでやられると思うなよ」

  特殊な防御魔法で保護されていカールン共和国の兵士たちには、

 なんの効果もなかった。どうやらこの鈴の音が洗脳のトリガーのようだった。


「うっ!」背後から銃声の後にうめき声が聞こえる。

 人質だった人間が銃をもっていた。

 兵士が一人撃たれ倒れていた。

「大丈夫か!」

「おい! 銃を下せ!」警告を無視し二発目を放ってきたので

 その場で即射殺する。

「貴様!」

「国民全員に早く防御魔法でもかけたらどうだ?」リンガーが

 あざ笑う。

 防御魔法をかけられていなかった一般市民を事前に洗脳していたよう

 だった。

 数人の銃を持った市民によって。人質が引き返してくる。

 

 「ちょっと! 先に私を通してくれないのよ!

 私が誰だかわかってるの!」逃げ遅れた人質の女性が

 騒いでいた。

「黙ってろ!」人質を抱えたままタワーに突入した

 カールン共和国の兵士たちが逆に挟まれる形になってしまった。




 

「なんで! 女性を先に逃がさなかったのよ! ちょっと!

 そこのお前! 早くなんとかしないさいよ!」

 軍服に階級章が何もついてないので新平と間違えられたのか

 イーサンは、さっきから悪態をついていた女につかかられる。

「なんなですかこの女」イーサンは、思わずそばの兵士に見耳打ちする。

「貴族だよ。出自は平民なんだがうまくフェミストの学者として

 のし上がって日夜男たちに暴言を吐いて金を稼いでいるよ」

「P活で極太のパトロンがなんでもバックにいるって話だ」

 兵士たちもめんどくさい人について語るようなめんどくさそうな

 表情でその女のことを話す。

「このことは、こんどマスコミに発表します! 人質を逃がすときに

 女性が逃げることを優先させなかったと そもそも

 あんたたちは、どんだけ無能なの! 私だけはころさないで!

 あのねいつも戦争を起こすのは男今回の内戦もうそう

 政治のトップが女なら戦争なんて馬鹿みたいなことやらないから!」

 実際のとろは、男女老若男女問わずおお慌ててで逃げれる

 人質から逃がしたのでとてもじゃないけど男女の選別なんてやってる

 余裕などなかった。この女性学者は、ロカという女らしい。

 「じゃあお前が男女平等で戦ってみるか?」 

 「あ? あんた何様! 私が誰だかわかって行ってるの?」

 「何が男女平等だよ。よくみてみろよこの内戦で前線で歩兵と

 して戦っているのは男ばかりじゃねえか。文句あるならお前が

 前線で戦ってみろよ」

 「ほー、言うわね。覚悟してろよ!」よほどバックに強い人間

 でもいるのかロカは、強気の姿勢を変えない。

 

 「ちょっと! なんなのこれ!」突然人質が、ロカとナディアが

 入れ替わる。イーサンが、合成魔法でワープと入れ替えの能力で

 瞬時にロカとナディアが入れ替わる。

 ロカは、大声で絶叫する。

 「今、撃つしかないいやないですか?」イーサンが、

 他の兵士をあおる。

 いくら、バックがあるとわいえ目の前には、内戦相手の

 敵のトップがいるわけなので迷いなく引き金を引く。

 ロカの絶叫が響き渡る。

 

 その場で仮面の男が崩れ落ちる。ロカもその場に崩れ落ち

 失禁する。ロカは、運よく無傷で助かった。

 仮面の男は、即死だった。

「やったか…」みなおそるおそる仮面の男に近づく



「IDを確認してくれ」ポケットに入っていたIDカードの照合させる。

 司令部と連絡をとり検索をかける。

「ちょっと! なんで撃ったのよ!」ロカは、まだ絶叫していた。

「当たってないでしょ」発砲した兵士がうんざりした表情で

 文句を言う。

「もし、私に当たっていたらどうするのよ!」

「そんなに文句があるならあなたが、自分で武器を取ったらどうですか」

 イーサンは、自分がもっていた小銃をロカのそばに投げつける。

「なんで! 私が戦闘なんてしないといけないのよ!


 

 

「クッソ!」


 ID調査結果を聞いて兵士が悪態をつく。


 どうやら、仮面の中の人は、このタワーのただの警備員だったらしい。

 


 「いや、良くやってくれたよ」救出作戦が終わりグシーナ将軍の元へ戻る。


 「はずれ、だったみたいですね」


 「まあ仕方ないさ。毎度のことだよそれよりも救出作戦がうまくいってよかったよ


 国王からお褒めの言葉もいただいたよ」


「失礼します」眼鏡姿のエロい秘書官が入ってくる。エロ漫画だろドSの顔しているが


 すぐにドM堕ちしそうな女だった。秘書官のそばには、全裸の女性が


 手錠をはめられて連れてこられていた。


「おお、ありがと。どうだ今朝入ったばかりの奴隷だ。どうだね」


「え? 俺?」


 「そうだ。君しかいなだろ」将軍は、笑う。そうだったな異世界転生では、


 中東のスンニ派も真っ青なクソ人権世界観だったな。

 

 イーサンは、褒章に奴隷を勧められた。


「あの…お気持ちは、ありがたいんですが…金が…」FIREを目指してるイーサンには、


 奴隷など金喰い虫でしかなかった。


 仕事して生きていかないといけないぐらいならガソリン頭からかぶって


 焼身自殺した方がましだからな。早くFIREするために金ためないと


 女に使う金なんてねーよ。


「何、はずしがってるんだ。ソョフィア脱げ」将軍が突然秘書官の女を顎で


 しゃっくて指示を出す。すると無表情のまますんなり服を脱ぎ全裸になる。


「彼女ももとは奴隷出身だった。恥ずかしがることはないみな奴隷を持っている」


 そばにいたシロッコが気まずそうにする。シロッコお前もか!


「いえ、すいません。また機会があれば、あと、もっと若い女性が好きですね」固辞する。


「「「「え?」」」」イーサン以外のそこにいた全員がハモル。


「あら、相変わらず悪趣味ですわね」ロカが突然現れた。そばには、憲兵が控えて


 いた。


「なんの用だ」将軍が威嚇する。


「軍事機密流用容疑でイーサンを逮捕する」憲兵が罪状を読み上げる。


「そんな容疑完全に冤罪だ」


「じゃあこれはなんだ」魔術師によりイーサンが、カールン共和国の


 人型戦闘機に乗り降りしている映像が流される。


「あなたで間違いないね」




 「我々第四特殊部隊は、作戦委の機密情報の使用は、報告も

  開示義務も免除されいる」今回作戦に参加した第四特殊部隊は、

 特殊部隊として優遇されおり、機密情報の使用権限は、一定の範囲内で

 任されていた。そのため合法だった。

 「しかし、イーサンは外部の人間であり特殊部隊の人間としてまだ

 登録されていたない」結局議論したももののイーサンが先に折れた

 せいでイーサンは、連行され拘留される。


「おい、出ろ」その日のうちにあっさり釈放された。

 あとから分かったことだが、グシーナ将軍が手を回してくれたらしい。

 そもそも、違法行為でもなかったのを半ば無理やり逮捕されたような

 ものだったので釈放されるは最初から確定しているようなものだった。


 帰り道でドラゴンのアイドルがライブをしていた。

 周りには人だかりができていた。

 お、普段好きで切り抜きを見ていたアイドルが

 ライブをしていたのでイーサンは群衆の中に入る。

「「あ」」偶然グシーナ将軍とはちあわせる。グシーナ将軍は、

 両手に買い物袋もっていた。

「買い物ですか?」

「ああ、嫁から頼まれてね。ライブを見に来たのか?」グシーナ将軍は、買い物袋を少し持ち上げ

 肩をすくめる。

「ええ、好きなアイドルで」

 家庭があると大変そうだな…。イーサンは、グシーナ将軍の背中を見送りながら

 同情する。俺は、どうせもてないいんだから逆手にとって

 家庭も子供も持たずに生きていくか…。

 イーサンは、魔術でハートに包みお金を投げつける。

 家庭を持ったり子供を育てたりする金はないが、

 アイドル投げ銭をするぐらいの金ならあるので投げ銭を送る。

 群衆の投げた魔法でディティールされた星やハートが積みあがっていく。

 



 

 明日に向けて安宿を見繕う。小型の部屋の宿を選ぶ。

 金が勿体ないからな高い宿なんて使いたくない。

 実は、持ち家もない節約のためだ。カップめんをすすり、

 袋サラダとヨーグルトで胃腸を整える。体に悪いもの+体にいいももの

 =健康。よっし。今日も安く済んだ。

 外食なんてもってのほか。

 外食を連続で食べるぐらいの余裕は正直あるが、

 将来のことを考えるととてもじゃないけど無駄遣いできなかった。

 

 絶対にこの異世界で結果を残さないといけなかった。

 いけるか? なんでもありの回復師、無敵のスライム、

 運命勝手に変更おばさん魑魅魍魎うごめく異世界で

 勝ち残ることはできるか?

 

 外からにぎやかな声が聞こえてくる。

 町のネオンを眺める。といっても異世界なので炎のランタンだが。


 街では、高級な装備装飾を身に着けた奴隷の女性が、

 男性冒険者といたるところでいちゃつきながら歩いていた。

 異世界転生者が、地元の奴隷をはべらせているのだろう。

 おそらく高級装飾品も買ってあげたものだろう。


 ガラス張りの高級店では、高級品をびっしり身に着けて

 輝きを物理的にはなっている。腹の出た二十顎の

 でっぷり醜く太ったサモンが家族と高級料理を信者から

 巻き上げた金で食べていた。

 人をだまして食べる飯はうまいか?

 人をだまして稼ぐ人生は楽しいか?


 あれだけ楽しみにしていた異世界なのに

 なんかぱっとしないな。

 全然楽しくない

 昔は、アニメの世界にあれだけ熱狂したのに

 今ではそれが後悔と重荷にしかなっていない。

 どうてしこうなったんだろうな…。

 まあそんな哲学してもメンヘラして意味ないな。

 何がっても明日は仕事、しあさってもどうせ仕事。

 神に祈ろうが、仏に祈ろうが、ミスにおびえながら

 やりたくもない汚い仕事をやるだけ。

 何も変わらないあほらシ。


 さーって寝るか。



 「もう寝るのですか? ご主人様?」

「あ? ああ おっ何する」メイド服を着た美少女が布団の中に無理やりはいって

 こようとする。

「いいじゃないですか! これもお仕事です!」

「おい! 逆寝れないは!」体が密着して体温が伝わってくる。


 みたいなことはなく、外から聞こえるにぎやかな

 声をバックに眠りにつく。

 これが一生続くのかもういいよホントに。

 



 

 「大きな会場ですね」翌日イーサンは、護衛の業務のため

 巨大なホールのよう場所にいた。

 「ああ、穏健派もかなり勢力が大きからな」この集会は、

 ネレー共和国の穏健派の集会だった。カルーン共和国は、

 穏健派との対話は拒否していたが、無差別集会を襲撃しても

 ただでさえ失っている支持をさらに下げるだけで何も意味が

 なかった。そのため第四特殊部隊は、ホールの外で待機していた。

 もちろん目的は、この集会に姿を現すとあらかじめ宣言していた

 リンガーだった。


 「おい、落ちたぞ」シロッコ隊長が、落ちたイーサンのパスポートを

 渡してくる。

 「ありがとうございます」

 「もうじき期限切れるな」

 「ええ。今回が、年齢的にも肉体的にも精神的にも

 これ以上異世界に転生するのは、きついので最後の転生になるんじゃないのか

 なって思ってます」異世界転生にも、お金がかかる現実世界で

 お金を稼いでは異世界に来ていたがもう限界を感じていた。

 「そうか…どうだ? うまくいったのか?」

 「いや、全くですね。いいねも評価も全くつかないですね。

 でももう未練はないです。むしろ清々しいです自分のやれる

 限りの努力は無能なりにやったつもりなので」冒険者は、

 さまざまな評価シルテムがあってギルドからの評価、冒険者どうしの

 相互評価などがる。そのいずれでもイーサンは、たいして評価されて

 いなかった。

 しかし、異世界転生をやめたら自分の人生を破壊した新興宗教には、一生をかけて粘着復讐すると

 固く決めていた。

 異世界も悪くない、転生者も悪くない。

 悪いのは、俺の人生を破壊した新興宗教だ!

 


 

 屋根のない東京ドームの小さい版のような場所では、穏健派のナディア姫が

 スピーチをしていた。

 「え? ナディア姫が?」王室の血筋のナディアがカルーン共和国の

 穏健派代表としてスピーチをしていることに驚く。

 「王室が穏健派で驚いたか?」

 「あんまりメリットがないような?」

 「それでも王室は、和解の道を模索したいらしい」

 シロッコの説明だと王室は、そこまで失うものはないらしい

 それよりも過激派のネレー革命軍により貴族の立場を追われること

 を心配していいた。


 集会は、順調に進み友好協定の書面へと進む。


「黒い新型機体出現」第四特殊部隊に連絡がはいる。

 黒色の機体がホールの中に侵入する。


「まだ、手はだせない?」

「いや、今は難しい」特に理由もなく。手は出せないらしい。

 十中八九リンガーだったが、ここで手を出すと大義名分

 が、ないためただでさえ下がっている支持率がさらに下がる

 危険性があった。

 そのためモニター越しで集会を見守る。

 

「リンガー何の用ですか?」リガーが、機体から姿を出し

 それにナディア姫がたいおうする。ナディア姫とリンガーとの

 間には、軍服姿のカルーン共和国のSPが割ってはいり

 ナディア姫を護衛する。

「協力しに来た」

「そうですか!」ナディア姫の表情が明るくなる。

 SPたちは、想定外の回答に顔を見合わせる。

 当初穏健派などに協力するとは思われていなかっただけに

 会場にも驚きが広がる。

 

 「では、リンガー様あなたもこちらにサインを」

 「ああ」友好協定にリンガーがサインする。

 「皆様! 今日をもってネレー自治国に一定の自治を認めるものとします!」

 ナディア姫が誓約書を掲げる。

 「おー!」会場からは、歓声があがる。

 

「え!? リンガーは?」会場の外から様子をうかがっていた

 イーサンは、過激派のリンガーがあっさり折れたことに驚く。

「テロリストから英雄だな。おそらく免罪になるな

 今日はただの警備員業務で終わりそうだな」シロッコは、あくびをする。


 一人の女性が、マイクの前に行く。彼女は、貴族のレベッカ

 不自然に張った顔の皮膚に一直線に通った鼻筋無茶苦茶濃い

 化粧異世界にも整形あるのか。彼女も他の多数派貴族と同じく

 穏健派でさらには、今現在では貴族だが今年中に

 王室の侯爵との結婚の話があり王室入りの話があった。

 王室入りが決まれば、カルーン共和国の中の女性の中でナンバー

 ツーの序列までのし上がる予定だった。

 そんな彼女にとってこの協定は、非常に重要だった。

「パンッ!」


「え?!」会場内外が一瞬止まる。

 外で見ていたシロッコとイーサンも衝撃を受ける。


 レベッカが突然リンガーに向けて発砲する。

 おそらくはじめなのだろうリンガーに銃弾が当たる。

 

 

「あなたも国賊としてここで処刑します!」

 

「パンッ!」一瞬あまりの衝撃的できごとに全てが

 スローモーションになる。二発目は、ナディア姫に向けて撃ち込まれる。

 レベッカは、目を見開きゆっくりと倒れこむ。

 全ては一瞬だった。


「突入するぞ! コード:ドラゴン!」一気に第四特殊部隊が、

 突入する。


「おい! なんのつもりだ!」リンガーがナディア姫にキレる。

「譲歩なんてありませんは! ネレー自治国なんて存在を許されませんは!」

 レベッカは、絶叫しながら高笑いする。

「まさか…能力の暴走…」リンガーの洗脳能力が暴走してしまい

 本来穏健派の


「離れろ!」ピンク色の人型の機体がレベッカに斬りかかる。ネレー革命軍の

 エースパイロットロベリアだった。

「シールド+反射!」イーサンの機体が間に合い斬撃を受け止める。

 あたりがロベリアの特殊能力で桜吹雪に包まれる。


 

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