5 現在

「はーいじゃあこの国旗分かる人!」教室で教師が

 一枚の国旗の絵を生徒たちに見せる。

「我が国ソメリア帝国の国の国旗です」貴族の服を着た身分の高い

 生徒が起立し礼儀正しく答える。

「はい、正解」

「先生質問です」

「はい」

「国旗の端に書かれてるスマイルマークは何の意味があるのですか」

「え~っと」確かに国旗の端には不自然すぎるスマイルマークが

 書かれていた。しかし、あまりにもマニアックな質問のため

 ただの教師には答えられなかった。

「では、私がお答えしましょうか」穏やかな微笑で

 教室の最後尾で授業を見学していた女性が答える。

「陛下申し訳ありません。不勉強なばかりに」

「女王陛下! 聞かせて!」生徒たちは、口々に声をあげる。

「こら、辞めなさい」

「いいですは、国旗にまつわる私の冒険譚をお話しますは」

「こら止めなさい! 無礼ですよ!」


「ありがとうございました」家族がイーサンにお礼をする。

「いえいえ」家族たちは立ち去っていく。

「今日はこの一組かな~」イーサンは、スカスカの名簿見る。

 イーサンは、テーイマーのギルドを離れた後、

 アスレチックキャンプ場のスタッフをしていた。

ただ、ここはあくまでも異世界のキャンプ場、

 現実世界のキャンプと違って各段に危険な場所だった。

 この空間には、魔力除去装置が設置されており

 魔力を使用することができなった。

 それに加えて攻撃力を抑制するドームに覆われており

 一定レベル攻撃をすることができなった。

 そのためここでは、魔力と攻撃力に頼ら原始的な方法で

 生き抜かなければいかなかった。


「まあ客なんてこないわな~」歩合制なためイーサンは、全く

 儲かってなかった。

「潮時かな~」便利な技を封印してまで危険を冒したがる

 人など異世界にはほとんどおらず儲かっていなかった。

「すいません」

「はーいどうぞ」

「よろしいかな」ローブをきた怪しげな集団がイーサンの元を訪れる。

 渋い男性の声がする。

「いつでもいいですよ」

「一名お願いしたいんですけど」

「一名? でいいんですか?」イーサンがローブの集団に目をやる。

「はい、彼女のことをたのむ」一人の女性がローブを脱ぐ。

 ローブを脱ぐと美しいい金髪の長髪が現れる。

「わ・分かりました。一名でいいということですね」

 他のローブを被った人に疑問を抱きつつも引き受ける。

 他のローブを来た怪しげな人々は、その場から去って行ってしまう。


「では、説明の方はじめますね」ブロンズの美しい気の強そうな

 美少女にこのキャンプ地の説明を行う。

「ええ・そうね」時折イーサンの説明に相槌を打つ。

「それにしてもこんな過酷なエリアよく選択しましたね」

 イーサンのエリアは、砂漠になっており極めて過酷だった。

「さあ」イーサンは、仕事なので話を盛り上げるべく個人情報を

 聞き出そうとしていたがほとんど口を割らなかった。

 ライラという名前以外はほどんど分からなかった。

「どこの国出身なんですか?」

「さあ」

「なんの職業やってますか?」

「ん~無職かな」

「あ…」

「なんかスキルもってます?」

「ノンスキルなの」

「え?」イーサンは、ことごとく会話の地雷を踏んでいく。

 

「ねえ! ちょっと!」それまで気のない回答しかしてなかった

 ライラが気の入った声を出す。

「はい?」

「ちょっと!? み ず は?」その声には、怒りが込められていた。

「いや~見つからないですね…」

「は? この炎天下の中水ないとか正気?!」

「ん? 帰ります? リタイアはできますよ」

「はあ…」ライラは、大きくため息をつく。

 ライラの不満も無理はなかったこのまま水が飲めなければ

 間違いなく熱中症になる。

「あそこに低木が生えてますよね」

「あ?」イーサンが話かけるがふらふらでライラはもう答えることが

 できなかった。

「あそこに水があるかも」


「発見! 水!」さんざん歩き回って水を見つける。

「ほんと!」ライラが急に明るくなる。

「あー生き返る」

「嘘でしょ…」水を目にした瞬間ライラのテンションが地の

 そこまで落ちる。そこには、



 ヘドロスライムが浮かんだ緑色の水たまりがあった。

「あんまり綺麗じゃないけどな飲めるぞ」イーサンは、躊躇なく飲む。

「あんまり…」水の周りには小さな羽虫が飛び回っている。

「飲まないと死ぬぞ」ライラは、険しい表情で水をひとすくい飲む。


「もうそろそろ休むか…こんやの宿はここにしよう」

「え? どこ?」

「いや、目の前だよ」砂漠のガケの洞窟を今日の寝床にする。

「なんもないけど…」

「そりゃこのプログラムはサバイバルするものだからな

 ひょっとして何も知らずに応募したのか?」

「…」

「あのローブの集団はいったいなんだったんだ?」

「誰もいいでしょ」そっぽを向き洞窟の中でちじこまる。

 もちろん床は砂。このサイバイバルが始まった当初から

 イーサンには違和感があった。

「絶対ただの平民ではない…」歩きか一つとっても上品で

ずっと違和感があった。イーサンが木をこすって

 原始的方法で起こした火だけがパチパチと音だけが

 あたりを支配していた。


「じゃあ今日も先を進むぞ」このサイバイバルはその場で留まって

 キャンプをするのではなく目的地まで進みながら

 さの道すがら野宿をするものだった。

 そもそもこんなクソ不便なサービスを利用する輩がいるのが

 不思議な気もするが、ブラックギルドや傭兵部隊の

 人事採用の際に人材を振るいにかけるためにこの過酷な

 サバイバルを利用する人たちがいるらしい。


「グー」

「もう丸一日何も食べてないんだけど」高温の中ふらふらと

 前に進むライラがぼやく。

「そうだな…」イーサンは、砂漠の固有種レソウギジソウを見つける。

 イーサンは、枯れ木をひもでくくり合わせて長い棒を作る。

「何するの?」

「あの木についてる実を取れれば食べられるし水分補給

 もできる」

「ん?」イーサンは、足元にわずかな風圧を感じる。

 ライラが、魔法が使えないエリアにも関わらず飛翔魔法を

 使用しようとしていた。しかし、まったく飛翔できずに

 地面に着地する。イーサンが棒で木の実をつつき

 なんとか木の実をとることに成功する。

「どう? これで水分補給と栄養補給できるけど」

「うん…」美味しくなさそうにライラは食べる。


「今日も洞窟だな」丸一日歩きまわって寝床を決める。

「もう、動けない…何か肉…」

「そうだな確かにたんぱく質が必要だな…」

 イーサンは、寝る前に草をより合わせてモンスター用の

 罠を仕掛ける。

「あ! 妖精鹿!」サイバイバルではなく通常の食卓にも

 のぼる良質な食肉獣を少し離れた位置でライラが見つけ喜ぶ。

「無理だよ」はっきり目視できる距離だったがイーサンは、

 直ぐに諦める。

「マジッククラッシュ!」ライラが魔法を詠唱する。

 ライラの手元に一瞬魔力が顕現するがすぐに消失する。

「だから、ここでは魔力を使えないからむりだよ」

 通常なら簡単に捕まえられるモンスターだったがここでは

 魔力を使用することができずあっさり取り逃がす。

「もうダメ」その場にライラが座り込む。

「もうリタイアするか? 緊急連絡手段はあるぞ?」リアタイアする

 人ようにイーサンは、いつもで後方と連絡とれるアイテムを所持していた。

「リタイアはできないの…」

「脅されてるのか?!」

「いや脅されてはない…」

「初めから不可解だったがやっぱり何かわけがありそうだな…」


「おい! 生きてるか?! おい!」朝ぐったりしているライラを

 心配してゆりうごかす。

「はい…」どうやらライラは死んでないようだった。

「罠かかってないとやばそうだな…」ライラの状態がよくないので

 そろそろ強制リタイアを検討し始める。


「おい! 獲物が捕まったぞ!」仕掛けていた罠にモンスターが引っかかる。

「え?! ほんと?!」

「ほら!」

「…」獲物を見た瞬間ライラの笑顔が消える。青狼だった。

 青狼は、危険を察知すると混乱の異常状態を誘発するほどの

 悪臭を発することで知られている。

「肉だぞ肉 う… クサ…」イーサンが、青狼の皮をはぎ

 内臓を取り出していく。あたりに悪臭が広がる。

 あまりの臭さにイーサンも声を出してしまう。

「嘘でしょ食べるの?!」

「じゃあ妖精鹿を追い回し続けるか? 多分永久に捕まえることできないぞ」


「さあできた今日は贅沢だ! うん美味しい!」青狼の丸焼きが完成したの

 その辺の石のプレートの上にのせて食べる。イーサンは、

 空腹だったので躊躇なく食べる。ライラも空腹だったのかしぶしぶ食べる。

「おいしい…」おもわずライラの声が出る。

「だろ?」ライラは、はっとなりすぐに黙る。残りの青狼の肉は燻製の干物に

 してアイテムボックスに放り込む。


「さてと今日はここで野宿だ。今日で最後もう明日にはゴールにつくからな」

「え? 木の下?」洞窟が近くなく木の下に野宿することになる。

「これ以上の移動は危険だ。この辺はローゴブリンがでるから暗くなって

 からの移動は危険だ」

「え~でもここ? あれ凍土豹じゃないこんなところでいたら食い殺される

ないの?」遮蔽物のない完全に野ざらしの場所だった。遠目に凶暴な

モンスターがうろついてる様子が遠目にうかがえた。

「こっちから刺激しないかぎりローコブリンも凍土豹も襲ってこないよ」

 まあ俺も初めてこの仕事の研修を受けたときは、魔力を封印された丸腰の

 状態でうろうろする上司にびびったが…。

「ちょっと! どこ行くのよ!」

 俺は、クソみたいな食卓に花を添えるために道すがら見つけた

 ベリー系の味がするニジイロカズラの実を採取するため道を戻り始めた。

「おいしい木の実をとってくるだけだよ。一緒に行くか?」

 まあ行くわけないよな…。

「行く…」ライラは、少し照れながらイーサンについてくる。

 

 夕食は、採取したニジイロカズラの実をすりつぶして青狼の干物に

 つけて食べる。

 明日は、ついにゴールだと思うと気が楽になり眠たくなってくる。

「ヴゥ…」暗闇から鈍いうなり声が聞こえてくる。

「ちょっと」寝ようとしていたところライラにゆすられ起こされる。

「なんだ…」

「ほんとここ大丈夫なの?」無理もなかったなんの魔法を使えないなか

 ノーガードで猛獣の中で寝ているわけだから。俺も正直怖かったが

 疲れすぎて緊張感を睡魔が上回っていた。

「多分大丈夫だろ。原住民から火さえ切らさなかったら寄ってくること

 はないって研修を受けてるし実際今のところ襲われたことないし」

「ちょっと」ライラに揺り動かされたが疲労がどうしてもまさり

 寝てしまう。

 

「キャーッ!」

「あヴ」イーサンは、悲鳴で目を覚ます。どう考えてもこんな砂漠で

 悲鳴をあげる人物は、一人しか心当たりがなかった。

 まじかよ…間に合うか…。

「大丈夫ですか?」たいまつをもって駆けつける。

 ロー・ゴブリンとライラが対峙していた。

 イーサンは、たいまつを振りかざしロー・ゴブリンを威嚇するが、

 興奮状態のロー・ゴブリンは逃げようとしない。

「なんとかしないさよ!」

「なんで命令なんだよ! あんたが勝手にうろついてるからだろ」

 どんだけ馬鹿なんだよこいつ、こんな危険地帯夜にうろつくなんて

 とてもじゃにいけどやろうとするら思わないけどな。

 しかし、この女ひたすら高圧的だな助けに来てやったのに

 逆切れかよ。

「ウッー」明らかにロー・ゴブリンは切れていた。早くなんとか

 しないと…。

「ほらくれてやる! 無茶苦茶うまいジャーキーだぞ!」

 イーサンは、青狼の干物が遠くへ投げる。ロー・ゴブリンは、

 干物につられて遠くへと逃げていく。

「逃げるぞ!」ライラを連れて急いで逃げる。


「なんで、火元から離れたんだよ」

「だって、すぐそばまでロー・ゴブリンが」どうやら

 ロー・ゴブリンが寝ているすぐそばまで来ていたらしい。

「いいか、どのみちここでは戦闘はほぼでききない

 火元から離れたら終わりだ。何があっても火元から離れるな。

 食い殺されるぞ」

「分かったわよ」ライラは、不服そうに従う。

「あーそれにしてもびっくりしたな~」

「ちょっとあんたよくこんな状況で笑ってられるわね」

「辛い時ほど笑うんだよ。落ち込んだところでどうしようないだろ」

「ポジティブね」

「人生の醍醐味は、つらいときだと俺は思ってるからな

 辛い時を楽しめれば人生楽しめるさ」

「何いってるんだか。はぁ早く終わって」常に険しい表情を

 していたライラの表情が気持ち和らいだ気がした。


 その晩は、特にトラブルなく過ぎて最後の目的地向けて

 歩き出す。進むにつれ景色も変わってくる。

 木々が増えてくる。モンスターの気配もどんどん増えていき

 不毛の地から脱していく。

「お疲れ様です」

「え? 終わり?」

「はい、あとは、迎えを待つだけ」

「やったー」二人ともボロボロだった。ライラは、その場に座り込む。

イーサンは、近く水源に水を汲みに行く。ポイ捨てされている。

 瓶のアイテムに近くの小川で水をくむ。

「あー、うめえ」イーサンは、顔を直接川に着けて水を飲む。

 動けなくなっているライラのためにライラの分は、

 瓶にいれて持って帰るつもりだった。

「ザザザ!」ゴブリンどころではない斬撃が川の水を切り裂き

 イーサンのそばを通っていく。もうここが、

 サバイバルエリアではないことを思い出す。

「なんだ?」イーサンに攻撃を仕掛けてきた剣士たちは、みな高額な

 アイテムを装備していた。

「クエストをしていたライラ様さらわれていたから奪いかえしにきた」

 女性の騎士が名乗り出る。

「ライラの知り合いか?」

「問答無用!」貧弱なレベルのイーサンではとても勝てない

 即座に逃げ出す。

「待て!」とてもじゃないがあんな強力なアイテムを装備したやつらんか

 相手にしたところで勝てるわけない。

「ライラ! 知り合いか?!」ライラのところまで戻りライラに助けを

 求める。

「え?」ライラがイーサンの方を振り返るが時すでに遅し

 イーサンを強力の魔力のレーザーが襲い掛かる。

「辞めんか!」威厳のある声が響き渡るとともに青い火炎が辺りを

 包み込む。

「陛下!」ローブの集団だった。ライラを引き渡した張本人たちだった。

 ローブのフードをとると険し表情の老人の顔が現れた。

 イーサンを追いかけてきていた騎士たち一斉に膝まづく。

「すいませんな。部下たちがはやまった行動をしてしまって

 私はソメリア帝国のエリオットと申すものです。アステグ王国の皇帝を

 しております」老人が自ら名乗る。

 は? 国王? なんの用なんだ?

「陛下これはいったい…」部下らしき騎士たちがエリオットに尋ねる。

 どうやらボロボロのライラの状態に疑問を持っているようだった。

「ああ、お前たちには言っていなかったからな、私の後をライラに

 継がせようと思っている。私たちは、皇帝の座を引き継ぐ際は、

 必ずこのフアの砂漠で修行をすることとなっているもちろん私も

 この砂漠で修行した」

「それで…」俺も、部下の騎士たちも納得したようだった。

「すまんな。話せば反対されるだろうと思って黙っていたんだ

 ライラよく頑張ったな。それにいい顔になったなだ」

「ありがとうございますお父様」

「お言葉ですが陛下からかっているのですか?」部下の騎士の

 発言も無理はなかった。ライラは、満身創痍でいい顔どころではなかった。

「これからお前は、多くの民の上に立つことになるそのお前が

 少しの苦しみや悩みで落ち込んだ表情をしているようではだめだ。

 我々の苦しみや苦悩など現場の戦死した騎士や魔術師などに比べれば

 どうということはない。だからお前がしっかりとしなければならない

 いいねライラ。この程度で落ち込んでるようではだめだぞ」

「はい、お父様」

「イーサン本当にありがとう」エリオットがお礼をする。

「いえ、とんえでもない」

「どうだ何か希望はないのか?」

「希望? ですか」

「なんでもかなえてやろう」

「そんないいですよ。ただサバイバルの同行をしただけなのに」

「そうだイー君、皇帝が変わるたびに国旗を変えるのだが

 君がデザインしてみないか?」

「いや、むしろ迷惑ですよそんな」

「じゃあなにかメッセージはないか?」

「メッセージ?」イーサンは、少しの間ライラの顔を眺める。

「笑顔かな?」

「笑顔?」

「ええ」


「以上、国旗のお話しでした」

「姫貴重お話しありがとうございました」教師が、ライラ女王にお礼をする。

「いえいえ、じゃあみんな勉強を頑張ってくださいね」

 穏やかな笑顔でライラが生徒たちに言う。

「はい! 姫!」まんべんの笑みで生徒たちが一斉に返事をする。

 

「失礼する」

「おいおい、ちょっと勝手に入ってこられてこられてら困るな」

 突然重装備の騎士たちが、ギルド内になだれ込んでくる。

「イーサンは、いないか?」

「は? だからあんたら誰?」

「スッ」王国の印を見せる。それは、皇帝からの最後の令状だった。

 仰々しい装飾文字がならんでいた。

「はっこれは大変失礼いたしました」

 

 

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