1 過去

「キャーッ」森の中に甲高い悲鳴が響き渡る。

「ま、前が見えない!」スライムに顔を覆われ右往左往している

 人がいた。

「今助けてやる!」その様子を偶然発見した魔術師が

 高速で移動してスライムに攻撃を加える

「ホーリーブレイク!」魔術師が魔法の攻撃で低レベルの

 ザコスラライムが砕け散る。

「ありがとうございます」

「男かよ…」助けた魔術師の男が落胆する。

「いや、すいません。た・助かりました」

「はぁ…シッシッシ。お礼なんてどうでいいよ」

 煩わしそうに魔術師の男は追い払う。

「ありがとうございます」イーサンは、お辞儀をする


「しっかしこの辺だった気がするんだけどな~」

イーサンは、森の道なき道をぐるぐると迷う。

「こんな時探索スキルでもあればな~」

イーサンは、異世界に転生したものの

全くと言っていいほどなんのスキルも所持

していなかったため探索すら苦悩する

ありさまだった。

「一旦もとの道に戻ってみるか…」

イーサンは、もときた道に戻り。

マップを表示する。マップには、すでに探索

したエリアだけ表示されあとのエリアは、

真っ黒で表示されていた。目的地のピンの

周辺も真っ黒だった。

「近くなんだけどな…まいったな…」

森の入口入ってすぐに右に曲がる。

「あ…」急に辺りが開け荒野と小さな建物が

眼の前に現れる。真竜会とかかれた看板を

掲げてい。イーサンの異世界での職場だった。


「これが君の担当するドラゴンだ」ギルド

 の人事担当者に荒野を案内される。

「ど…どうも…」見た瞬間に伝わるほど

 高圧的なドラゴンだった。鋭いめつき

 だるそうにいっぺいしてすぐに顔を

 反らす。

「ハハハ…すぐに懐くようになるさ」人事の

 人間が苦笑いする。イーサンの新しい

 職場は、モンスターテイマーだった。


 その日からドラゴンリィデァの世話が

 始まった。

「どうだ気持ちいいか?」リィデァにブラシッ

 シングをしてあげる。

「…」しかしリィデァはなんの反応も示さない。

「そ、そうか…気持ちいいんだな」


「はい食事だ」ドラゴンは、種族によって

 食べるものが違う。イーサンが担当者すること

 となった真竜は、鉱物を食べるドラゴンだった。

「どうだおいしいか?」

「…」リィデァは、もくもくと鉱物を食べる。

「なんともとっつきにくいドラゴンだな」

 

「イーサン仕事が入ったぞ」

「ほんとですか?!」

「テイマーが一人病欠したパーティーからのようせいで

 ドラゴン使いを派遣してほしいらしい」

「分かりました」


「イーサンです真竜会から来ましたよろしくお願いします」

「おうよろしくな 俺はジェノバ」剣士の男があいさつをする。

「私は、ヘラ」魔法少女の女も挨拶をする。

 パーティーはイーサン合わせて三名だった。

「今日のクエストは、街に現れる魔法少女」

「ほー、ついに手を出しますか」

「難しいのか?」イーサンが尋ねる。

「そうだな。なんせ月下の魔王に挑戦するわけだからな」

「私たち魔術師のかでもレベルナインと言われている

 最上位クラスの魔術師で、しかも原始魔法使い」

「原始魔法?」

「クローリの弟子のひとりということだよ。聞いたことない?

 クローリ? 異世界に転生してくるぐらいだからそいう

 話題好きでしょ?」

「あ、まあ現代魔術の創設者で、現実世界でいうとことろの

 オカルト今でいうところのただの詐欺師」

「ひどい言われようだな。だがここは異世界、異世界では

 当然の偉大な存在だよ」

「そのお弟子さんってわけ当然超強力魔法少女ね」

「でも、助かったよ。テイマーが見つかって、彼女は

 空中戦もできるからね。足が必要だったんだよ」

「私は、飛べるけどジェノバは足がないからさ」

「ま、なんとか頑張るよ」

「今日は、満月やつが現れるはずだ」

「満月と関係あるの?」

「満月の夜に姿を見たことあると目撃証言があがっているんだ」

「あだの由来もそこから」

 

「で、さっそく出番だ」

「え?」

「え? じゃないでしょ。あなたのドラゴン見せて」

「あ、ああ」イーサンは、外でゲートを開きリィデァを呼び出す。

「え? 真竜?」ヘラが少し驚く。

「いいだろ」ジェノバが少し威張る。

「そんなにいいのか?」イーサンは、転生したてでこの世界のことを

 まだ詳しは知っていなかった。

「破壊スキルを持つ強力なドラゴンじゃないいいわね」

「じゃあ行くぞ!」


「どうだ? いたか?」リィデァには、イーサンとジェノバが乗り

 ヘラは、自らの魔法で浮遊し空の探索を行う。

「いなわね」

「もう少し探すか」

「なんか、魔法でも使って気配消してるんじゃないの?」

「聞いたは話だと、爪ぐらいの大きさに変身する魔法も使えるらしい」

「嘘でしょ…そんなどうやって探せば」

「キィツ!」その鳴き声は、決して人間には聞き取れないような

 小さなものだったがリィデァの耳はぴっくと反応しすぐに方向を変化させる。

「おい! リィデァ! 止まれ!」猛スピードで飛ぶリィデァに

 二人は、必死にしがみつく。

「いや、これは何か見つけたのかもしれない ヘラ!」ヘラの方を振り返ると

「OK! 準備万端よ!」飛行しながら魔法陣をすでに展開していた。

  

「なんだ?」目の前に、ピンク色のマントを着た魔法少女と精霊が姿を現す。

「精霊狩りは中止にしてもらおうか!」

「え?!」ピンク色のマントを着た魔法少女が後ろを振り変えると

 そこには、魔力の玉が迫っていた。

「アイスプロテクト!」氷の壁が魔力の玉をはじく。

「何するの!」

「君の持っている真空管をもらいにきた」

「この真空管は、渡すことはできないの!」

「そんなこと最初から知ってるわ エリアスラッシュ!」

 ジェノバの剣撃が波動となり辺りを振動させる。

「あっ!」魔法少女がふっとばされる。

「よっと!」魔法少女は、真空管を空中でこぼしその真空管を

 ヘラが回収する。

「あ!」

「まずは、一つ」ジェノバは、エリアスラッシュで

 魔法少女に追い打ちをかける。

「キャッ!」また魔法少女は、打ちのめされ真空管をこぼす。

「ふたーつ 楽勝だね」ヘラがあっさり回収する。

「夜天の魔王は、名ばかりみたいたいだな」

「返してよ…」巨大な魔法陣が展開する。

「来るぞ!」

「え!?」イーサンが、ジェノバの声に反応する前に

「ファイヤーブラスト!」辺り一面火炎に包まれる。リィデァは、

 急に角度変え飛行しなんとかかわす。

「ヘラ!」ヘラは、物言わず焼け焦げて落下していく。

魔法少女は、真空管を取り返す。

「ごめんね…」

「おい! お前のドラゴン攻撃できないのか?!」

「え? リィデァ!」

「…」 イーサンの呼びかけにリィデァは、反応しない。

「おい! どうなってるんだ! まあいい! 戦闘の続きだ!

 飛べ!」

「…」リィデァは、飛ぶどころか顔をこちらに向けることすらせず

 そのば丸くなってしまう。

「クソが! つかえねぇドラゴンだな!」ジェノバは、悪態をつく。

「返してよ…」上空から不気味な声がする。

 二人は、殺気を感じ取り空を見上げる。天球にかかる巨大な魔法陣が

 おおいつくしていた。

「ホーリーカッタ!!!」閃光が天よりイーサンとジェノバに降り注ぐ

 ジェノバは、大ダメージを受ける。

「なめやがって…」ぶちぎぎれたジェノバが立ち上がる。

「エンジェルヒール」巨大な天使に魔法少女が、包まれる。

「え? 回復技?」イーサンの疑問をよそに魔法少女は、

 撃墜される。

「そうだ、もともと満タンのHPをさらに回復させてHPのゲージそのもの

 を破壊した」

「は?」

「あまり調子にのるなよ【絵】の分際で!」怒ったジェノバが

 残りの真空管を奪い取る。

「え! 紫藤溟!」ジェノバの回復魔法でボコられ地面に横たわっている

 魔法少女の姿に見覚えがあった。

 現実世界では、一時代を風靡した大人気魔法少女アニメの主人公の

 女の子だった。

「転生眼…あなたたち転生者ね」紫藤溟が、うめきながらにらみつける。

「あ? まだ生きてたのか? そうだな転生者だからなんか文句あるのか?」

「さっきの技なんななの…あんなのヒーラーの技じゃないそもそも

 なんで剣士がヒーラーの技使えるの…」

「あ? ヒーラーだから決まってるだろ。いいから死ね。そうだな

 ヒール」本来ならただの回復魔法のはずの技をジェノバが詠唱する。

「あ? なんのつもりだ?」イーサンが、紫藤溟の前に立ちはだかる。

「もういいだろ」

「クエストの邪魔するのか? 俺は客だぞ?」

「クエストは、終了したはずだ」

「そうか、まいったなそうだお前を殺してしまえば真空管を奪うクエストの

 中で偶然お前もお前も死んだことになるはな」

「ヒール」本来強力な魔法使用するさい絶対に必要な魔法陣も一切

 展開せずに本来回復魔法のはずのヒールを詠唱する。

「ドーン!」イーサンは、近くのビルまで体を吹っ飛ばされ叩きつけれる。

「ぐはっ」

「ちょっと! あの人は関係ないでしょ! なんでそんなひどいうこと

 するの!」溟はイーサンのこと気遣う。

「あ? てめえ 他人のこと気にしてる場合かよ ヒール!」

「ジェノバ…」ヘラのうめき声が聞こえる。

「ヘラ!」ジェノバはヘラの方に駆け寄って行く。

「あなたたちは! いつもそうやって卑怯なことばかり!」

「命拾いしたな 卑怯? それは現実世界で俺たちを虐げたやつらに

 言うだな。現実世界で幸せならこんな絵の世界なかにははなから来るきねーよ」


「減額の話がったよ」イーサンの使役したドラゴンが全く言うことをきかず

 戦闘を放棄したため後日料金の減額をジェノバが提案し受け入れるしか

 なかった。

「そうですか…」

 

「お前も災難だな あんなドラゴン預けられて」同僚が話しかけてくる。

「え?」

「あのドラゴンこのギルド一の問題児なんだよ。いうことは効かないし

 戦闘も気まぐれだったり。まあ運が悪かったな 気にすることないから

 お前がテイマーに向いてるかどうかとあのドラゴンが言うこと聞く

 かどうかは全く別問題だからさ」同僚が、イーサンの肩を軽くたたいて去っていく。


「なんで言うこと聞いてくれないんだ」リィデァのブラッシングをしながら

 イーサンは、リィデァに語り掛ける。

「…」リィデァは、目を閉じたまま無反応。

「まいったなこれじゃあ仕事にならないな…」


「イーサン依頼が入ったぞ」

「はい…」

「どうした元気はないな」

「…」本来喜こべるはずの依頼だったが、もはやリィデァでは、

 まともにクエストなどやれると思えず憂鬱だった。

「依頼人は…」


「よろしくお願いします」

「よ・よろしくお願いします…」依頼人は、溟だった。

「こんにちは、お名前は?」溟が、イーサンの使役するドラゴンをなでる。

「リィデァだよ」イーサンが教える。

「リィデァさんよろしくね」

「あの…つい先日あんなことがあったのに…」イーサンは、先日

 別ギルドの応援に入り溟と闘ったばかりで真意を確かめないといけなかった。

「こちらこそありがとう…」

「いや…何もできなくてごめん」

「そんなことないよ」

「やっぱり転生者を恨んでる?」

「うん…突然現れて今次々にこの世界の秩序を変えていっているから

 こままだと私たち現地の人間が一掃されるかもしれない…」

「そんなことないよ俺が…」俺が守ってみせるその一言が重くて

 言えなかった、イーサン自身が誰よりも異世界転生者の

 チート能力の高さを知っていた。

「一緒に真空管を集めてくれる?」

「え? ああよろしく」溟の純粋な笑顔に戸惑いながらもうなずく。


「ところで、この真空管ってなんで集めてるの?」

「この真空管一つ 一つに能力があってそれを悪用させないように

 するために集めてるの」

「へー」


「あれか…」イーサンは、溟に連れられてクエストの場所までくる。

 目の前の塔には、デジタル時計があった。

「あの時計の影響で時空のひずみが生まれているの」

「あの時計も真空管の影響でおかしくなってると?」

「そう、真空管の魔力でデジタル時計が強力なアイテムなっちゃたの」

「あの中に真空管が…」

「じゃあ行こう」

「うん!」リィデァに乗った二人が時計へと近づく。

 触れそうなところまで近づくと時計は突如としてカウンターが回り

 数字が天文学的なまでに増え最終的に無限を表示する。

「しまった!」

「え?」イーサンが、溟に尋ねる間もなく。


「今日が最終日だね」異世界は、最終日を迎えていた。

「いやだいやだ!」心音が駄々をこねる。喫茶店は比較的にぎやかだった。

「ふっ終わりの一杯だな乾杯」そらりがかっこをつける。

「だっさ」心音が突っ込みを入れる。

「うっさいわね!」

「最後になにをやりたい」」

「セックス!」そらりが堂々と言う。

「おい!」心音が否定する。

「それは、いろいろ配信者的にアウトだろ」そらりと心音の一挙手一投足は

 視聴者たちに見られていた。

「夏祭り行こう!」心音が叫ぶ。

「いいね!」そらりが即座に賛同する。

「は? だって今朝の八時だぞ?…あれ?」イーサンが時計に目を向けると

 もうすでにいい時間【夕方の六時だった】おかしいな

 さっき入店したときは、まだ朝だったのに…。

「何ぶつぶついっての! 夏は夏らしいことしなきゃ!」

 イーサンは、強引に連れ出される。

 外に出ると一気に気温が上がる。


「台パンだって」縁日にあった台パンなる出し物にそらりが反応する。

「なんだよこれ」

「いいじゃんやろよ」

「ドンッ!」そらりの台パンは平均の数値が表示される。

「はい、りんごあめね」屋台のおじいさんが台パンの威力に

 応じて景品を渡す。

「うおりゃああ!」心音は大声で大げさに拳を振り下ろす。

「はい、残念賞ね」心音は、目を点にしてティッシュをもらう。

「ん?」イーサンが、拳を振り上げ違和感を感じて止まる。

「どうしたの?」

「いや…」なんだろう。拳を振り下ろすと台パンマシーンが故障しそうな気がした。

「ドンッ!」

「ピー」

「あちゃー故障だね。おかしいな」台パンマシーンが故障して

 数字が出なくなる。

 

 「あ! 雪だ!」そらから粉雪が降ってくる。

「え? 雪?」イーサンが驚く。

「あ、やばいホワイトクリスマス。ときめいちゃう。昔の思い出が」

「思い出なんてないだろ」視聴者のファンたちが突っ込みを入れる。

「うっさしわね! あんたちと違って私にはいっぱい思い出あるの!」

 いつものプロレスが始まる。

「じゃあクリスマスパーティーの会場に行こうよ」

 イーサンは、連れられるままに学校の教室へ向かう。

「すごい!」教室の一室は、典型的なクリスマスパーティーの

 準備ができていた。

「みらいありがとう!」待って準備をしていたのは、

 彼女たちと同じグループのアイドルVtuberみらいだった。

「え…」みらいは照れてうつむきぶつぶつ独り言をつぶやく。

「あーみらい照れちゃって!」そらりがみらいにうざがらみを

 してひつく。

「よっしゃ! 私が一曲歌ってやるよ!」

「そらる!」心音がどこから出したかわからない

 アイドル団扇を出して声援を送る。

「そらるー」ミライが野太いおたく声で

 声援を送る。

「いくぞーお前達!」

「おおおー!」そらるが視聴者たちを煽る。

 そらるがひと昔前の懐かしい電波ソングのエロゲのオープニングを歌う。歌唱力に定評があるだけあって

かなりうまかった。

「88888888」歌い終わり視聴者たちが

 一斉に拍手する。

「どうよ!」そらりがイーサンに感想を

 聞いてくる。

「ん〜七十点かな」

「なんでだよ!」そらりが野太い声で怒る。

「だってセリフの部分カットしたじゃん」

「チッ!」そらりが舌打ちをする。

 この曲には、セリフパートがありその

 セリフというのがとてもエロかった。

「いいこと言った」視聴者たちがイーサンの

 側につく。

「さてと…何百回もクリスマスやってると

 飽きるなー!」イーサンが椅子から立ち上がる。

「頭おかしいだろこいつ!」サンタのコスプレ

をしていた心音がイーサンのことをでぃする。

「ちょっと! そらり様の歌謡ショーは

 まだ終わってないわよ!」

「バッン!」イーサンが教室のドアを蹴り飛ばす。ドアは外れ外の世界に繋がる。


空間が代わり足元には、溟が倒れていた。

「お! 遅かったな!」ジェノバが真空管を

 手で弄びながら余裕の表情で言い放つ。

「時間の止まった世界は楽しかった?」

 ヘラが言う。

「正直ビビったぜ、てっきりお前転生者

 だと思ってたからなお前脳内覗いたら

 アイドルVtuberの同級生と過ごした

 クリスマスの記憶が出てきて驚いたよ」

「時間の真空管を使った思い出のループ

 は」

「最高だったよ。だけど、ひとつだ勘違いしてるみたいだから

 言っておくが、俺は転生者だ。

 現実世界の記憶がないのは、俺が自ら

 現実世界の記憶を全て消し、異世界の記憶だけに

 すり替えたからだ」

「とんだキチガイだな!」ジェノバが笑う。

 「とりあえずお前らに

 その真空管を渡してはいけないこと

 だけは分かったは」

「お前みたいな何やるかわからないキチガイに言われる筋合いはないわまあいい

 ああじぁお前もそこの魔法少女と同じように

 ここでくたばってもらおうか ヒール」

「バーンッ!」

「クッ」イーサンがふっとばされ壁に

 叩きつけられる。

「どういう理屈だ」

「ダメージがなきゃヒーラーは、必要ないだろ

 だから回復が必要なまでダーメージを

 与えるそういう理屈だ 弱いなお前

 お前もチートクソ神託を受けてスキル

 もらったらどうだ? 紹介してやるよ」 

「おまえらまで腐ってないからなお断りだ」

「そうかよ!」

「ドッ!」

「グハッ」イーサンは、ジェノバに蹴り飛ばされる。

「お前なにを…」ジェノバは、真空管のなかに

 溟を吸収し始めた。

「彼女が最後のピースよ。彼女は、

 全ての真空管の核となる原始魔法の

コアを持っているの」ヘラが説明する。

 説明している間にも溟からだか砕けて

吸収されていく。

「クッ…ソッ…」イーサンは、身動が取れない。

「自分が一番好きだったキャラすら守れないのか…」それまで目をつむり無視を決め込んでいた

 リィデァの耳が立ちまぶたがわずかに上がる。

「ペタッ」

「あ? なんだ? てめぇいたのか?」リィデァの尻尾がジェノバの顔面に当たる。

「バチン!」強烈な一撃がジェノバを襲う。

 ジェノバはふっとばされそばの建物に叩きつけられる。リィデァの攻撃だった。

「ジェノバ!」ヘラが叫ぶ。こぼれた真空管から

 溟の体がこぼれ元の状態へと復元されていく。

「てめぇ…なめたことしてくれるじゃねえか…」瓦礫から人影が揺らめく。ジェノバは大ダメージを受けたものの無事だった。

「駄目だリィデァ…あたつは、クソみたいなヒーラーだ…一瞬で回復してしまう…」

「ヒール!」しかし、チートを利用していたがゆえにヒーラーにも関わらずジェノバは、(回復)魔法を使用することがてきなかったというかやり方すらしらなった。そのためジェノバは、ボロボロの体を引きずり戦闘を強行する。

「ドッン!」地鳴りとともにリィデァが大爆発に包まれる。ジェノバの攻撃だった。

「リィデァ!」

「使えないドラゴンが偉そうに」ジェノバが悪態をつく。

「!!」イーサンもジェノバも驚く。

「馬鹿な…」そこには無傷のリィデァが佇んでいた。

「バサ…バサ…」リィデァがゆっくり飛翔する。

「な、なんだよ…お前! ヒール! ヒーラー」恐怖で硬直したジェノバが錯乱状態になり連続で猛攻撃を加える。リィデァのからだ閃光や爆発に何度も包まれるが全く微動だにせずゆっくり…と飛翔していく。

「ゴゴゴゴ…」リィデァが羽ばたきから殺人破壊的なスパイラルの風を発生させジェノバを吹き飛ばす。

「…」ジェノバは、物言わず伸びた。

 イーサンの意識はすでになかった。

「イーサン!」意識が朦朧とするなか

 誰が顔を覗き込む。

「だれかがよんで…」イーサンの頬を涙が流れる。

「誰の涙だろう…そうか異世界での日々もこれで終わりか…」異世界での日々が走馬燈のように流れる。そして、消したはずの現実世界の記憶極めておぼろげ蘇る。

「大丈夫だよ」誰かの声がおぼろげながら耳に入る。

「もう駄目…もう十分だ」

「絶対大丈夫だよ!」

「そうか…もう忘れたいのにまだ未練があるといのか…クソせめて異世界では…」イーサンは、

 拳で地面の砂を握りしめる妄想するが、

 指は力なく伸び切っており、口は半開きで

 よだれがたれ瞳孔は、開ききっていた。


「よく無事だったな…」結論から言うとイーサンは、生きていたギルドの仲間が見つけなんとか

回復も間に合った。

「いや…それが記憶がほとんど飛んでしまってて…」

「無理内はなすごかったぞ戦闘痕」リィデァとジェノバの戦闘であたりは破壊し尽くされたらしい。

「そうだ! 依頼者は!」

「依頼者? あーあの魔法少女か…それが

 連絡が取れないんだよただ報酬は、ギルドの

 受付に渡したみたいだから無事だと思うぞ」

「そうか…よかった…」

「あ…イーサン…飼育長から手紙」

「手紙? なんだろ」飼育長は、このギルドでは、モンスターテイマーたちを束ねる現場のトップだ。手紙の表紙にははてなマークが書かれていた。

「さあここでクエッションリィデァは、

 どこに行ったでしょうか! 探して来てください! 明日までにね…ん…?」回復したてのイーサンには、この手紙の意味が理解できなかった。

「イーサン…言いにくいんだがリィデァが脱走して待ったんだ…」

「え?!」モンスターテイマーにとって使役するモンスターの脱走は絶対に許されないミスだった。

「そうか…」明日までにそれは事実場のクビ宣告だった。イーサンは、ギルドを追放された。


「あいつ気の毒だったな…」ギルドを去っていくイーサンの背中を見ながら元同僚たちが噂話をする。

「そうだなリィデァなんて元々誰の言うことも聞かないドラゴンだったもんな」飼育長のいうことも聞かなかった。

「こうなることはめにみえてたよな」


「リィデァが逃げったて」一人の老人がやってくる。

「フィルさん」彼は長年このギルドで飼育長を勤めた長老だった。

「まあ、誰の言うこともきかなつたからなー」

 フィルを除いて誰のいうこともきかなかった。

「すいません」イーサンが逆走してもどってくる。どうやら帽子を忘れたらしい。

「ありがとうごさいます」帽子を受け取り足早に去っていく。

「馬鹿な…」フィルがその場で腰を抜かす。

「フィルさん大丈夫ですか」

「見間違いか…」フィルの目には、リィデァの霊がイーサンに取り憑いているよう見えたのだ。そしてその霊の姿は、無を司る者 サオケモス

そっくりだった。

「サオケモス…サオケモスの霊があの男に取り憑いておる」

「え?! サオケモス!!」強力なモンスター揃いのドラゴン族のなかでも知らないものはいない

 ドラゴンだった。(対象にならない)といスキルをもっており物理攻撃以外ほぼダメージを食らわせることのできないドラゴンだった。


「フィルさんもすっかりボケちゃたな…」腰を抜かしたフィルじぃさんを救護所に預けた二人がぼやく。

「そうだな…昔は新種のドラゴンをはけっけんしたり、扱えない種族はないとまで言われたらしいゲド」

「まあもっとも俺がこのギルドに来たときは、すでに引退していて現役時代の姿みたことないけどな(笑)」

「俺もあのじぃさんがモンスターをテイムしたとこなんてみたこないけどな」

「やっぱあのじぃさんボケてるだけじゃないのか?」二人には到底フィルの言うことが

 信じられなかった。そもそもサオケモスは、使用が禁止されているドラゴンで

 存在すらすはずがなかったからだ。

「まさかリィデァがサオケモス…」

「お前もボケたか?」

「だな」二人は笑いあう。


「飼育長お手紙です」イーサンの手紙の返信が飼育長に渡される。

「あいつは?」

「辞めるそうです」

「まあそうなるはな」飼育長はどうでもよさそうに失笑する。

「カタカタ…」余裕の表情で手紙を受け取った飼育長の表情がみるみる

 うちに怒りへと変わっていく。

「クソが!」飼育長は手紙を床にたたきつける。

「シ ネ」とだけ書かれた手紙を部下が拾い上げる。

「追跡魔法を撃て、イーサンを見つけだし殺せ!」

「はい」


「すいません。こちらの方ご存じでないですか」

 ギルドの正面でフィルの介抱を終え雑談をしていた

 ギルドの従業員二人の前に憲兵が現れる。

「え? 飼育長…」

「ご存じなのですね」

「ええ、建物の中にいますけど…」

「失礼」ぞろぞろと憲兵たちがギルドの建物になだれ込む。

 ギルドの従業員二人は、顔を見合わせる。


「どうした?」ギルドに所属している魔術師にしびれを切らした

 飼育長が直接訪れる。

「すいません。探索魔法がかかりません」

「なんだと?」

「無駄じゃよ。彼には対象に取らないスキルが付与された

 我々じゃ太刀打ちできんよ」フィルがよろよろと現れる。

「は?! あの男にそんなスキルあるわけないだろ」


「ホフだな」憲兵が現れる。

「ん?」

「封印生物解放罪で逮捕する」

「ちょっと待ってください?! 封印生物?! うちには

 そんな生物いませんよ」そばの魔術師が驚き突っ込みを入れる。

「使用禁止生物サオケモスを飼育しているとの密告が入った

 詳しい話は署でうかがう…」

「ガシャンッ!」ホフが部屋の窓ガラスをたたき割り逃げ出す。

「追え! 追跡魔法だ!」追跡魔法でホフはばっちり

 マーキングされる。


「いつか必ず自分の好きだったキャラをこの世界で守れるぐらいに

 強くなってやる」イーサンは、ギルドを去りながら決意する。

イーサンのステータス

 ステータス

 LV 一

 HP 十二

 攻撃 七

 防御 四


 獲得スキル

 一バトルに一回全てのアイテム及び

 魔法の効果の対象に取れない。

 


 

  

 

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