第4話 確率

 早央里さおり先生は、少し神妙な顔になり、話を続けた。


「北野先生、知ってる?校長先生は、“晴れの確率”を取ってるって」


「何ですか、それ。聞いたことは無いです」




「うーん、これは噂よ。

 …………それぞれの教師が担当した天候に左右される活動があるわよね。その晴れの確立を取って、次年度の学級担任や分掌の担当者を決めてることよ。

 例えば、北野先生の“晴れ確率”が90%以上だったら、運動会の担当にしようかとか、“晴れ確率が50%以下”だったら、学級の行事日程を決める担当から外すとかね」



「うへーー、そんなことをしてるんですか?」


「あー、だから、これは噂よ!」


「噂ですか……」


「そう。……それで、私ね、前の学校で、これを自分でやってみたの。みんなには内緒でね」


「それで、何か分かったんですか?」




「その時に、一緒に働いていたのが、天日去先生、あーちゃんなのよ…………そして、彼女は、その確率が100%だったの」


「ということは、すべて、完璧に“晴れ”だったんですね」



「そうなの。私は嬉しくてね、そのことを彼女に話したのね…………それで、彼女と仲良くなったの。

 もちろん、他の人には話さなかったわ。面倒くさいでしょ」



「そうですね、そんなのが分かったら、余計な仕事を押し付けられるかもしれないし」



「そうそう。

 それで、私達だけで、この確率を楽しんでいたの。

 時々、私が日程を決めなければならない時は、彼女に相談したりしてたのよ…………今回の北野先生みたいにね!」



 そうか、それであの時天日去先生は、すべてを理解して、何の質問もせず、淡々と日程を決めてくれたんだ。



「すごい“晴れ女”じゃありませんか!早央里先生も、凄いお友達がいて羨ましいですね。日程をきめるのは完璧じゃないですか」


 ボクも、内緒で天日去先生にお願いしようかと本気で考えた。







「ところがね、そうは上手くいかないことが分かったのよ。ある出来事を切欠にね……」


 そう言うと、早央里先生は、物思いに耽るように沈黙してしまった。

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