第3話 晴れ女

 僕は、月曜日に学校で、早央里さおり先生に昨日の演奏会のことを話した。


「そう、北野先生も行ってたの?」


「え?ということは、早央里先生もいらしたんですか?僕、客席を見渡したんですが、見つけられませんでした。すみません」


「別にいいのよ。それに、私は、客席には居なかったんですもの」


「あーちゃんに頼まれてね、あ、“あーちゃん”って言うのは、天日去あびこ先生のことよ。演奏会の裏方を手伝ってたの」



 天日去先生が、以前の学校で一緒だったと言っていたが、とても仲が良かったんだと思った。お互いに、綽名で呼び合ったりするくらいだ。


「早央里先生も楽団に入っているんですか?」


「いや、私はね、あーちゃんに“借りを返してね”って、脅迫されちゃった。あははははは」


 早央里先生は、あっけらかんと笑っていたので、そんなに深刻な話ではないと思ったが、ボクは少し心配になった。



「えっと、それって、ボクがこの間、天日去先生に見学日程の相談に行ったからですか?」


「まあ、そうね。あ、でも、気にしないでね。彼女も意地悪でそんなこと言ってる訳じゃないの。私とはね長い付き合いだから、お互いにこんな感じなの。困ったこと、特に天気に関することは、助け合うことにしてるのよ」


 早央里先生の話しぶりから、天日去先生を信頼していることがよく分かった。


「あの~、それにしても“天気のこと”って、何ですか?」



「あのね、土曜日に彼女から電話が来たの。どうも日曜日の午後は雨が降りそうだって」


「ええ、僕には開会が午前に変更になったと連絡が来たんです。それで、一応いろいろな天気予報を調べてみたんですが、どれも一日中晴れマークでしたよ」




「うーん、何て言ったらいいかなぁ~。天気予報については、彼女は別格なのよね。データで、どうのこうのって言うのじゃないの。天気そのものが、彼女なのね」



「え?天気そのもの?…………“晴れ女”ってことですか?」


「そう言うのとも違うかなあ~」


 僕には、さっぱり理解できない話になってきた。


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