夢判断

第6話 幹太の夢のなぞ解き

「大先生か・・・まあ良い。・・・早速本題に入るが、実は、・・・お前の見た

　夢は、お前の夢であってお前の夢ではない」

「はぁ？」

「あの夢は、お前が見ているのだから、お前は自分の夢と言いたいのであろうが、

　あの複雑に絡んでいる夢は、とてもお前が見るレベルの夢ではない」

「レベルと言われても、その通りなんですが、見てしまったんだから、しょうがな

　いじゃないですか・・・」

「いやいや、そもそもお前は夢など見ていないのだ」

「え？それじゃ、アッシは嘘をついていると言いなさるんで？」

「いや、そうではない。あの夢の持ち主は、実は私なのだ」

「はぁ？」

「幹太、まあ落ち着いて聞いておくれ。・・・お前の見たと言う夢はこ

　うだ。・・・・・・朝起きてから一日の出来事を夢に見る。・・・

　寝て起きたらそれが夢だと気づく。相違あるまい」

「その通りで・・」

「然しそれもまた夢だとしたらどうだろう」

「つまり、アッシは朝起きてから一日の出来事を夢に見て、寝て起きたらそれが夢

　であったと気づいた自分がいて、それもまだ、夢の中ということですかい？・・

　で、実はそれは先生の夢と言うんですかい？・・・じょ、冗談じゃねえ。・・・

　それじゃ、先生は、人の夢に難癖付けた挙句、自分のものにしようとする夢泥棒

　じゃないですかい。・・・泥棒、詐欺、ペテン師、番所へ訴えてやる」

「まあまあ、お前が怒るのも無理の無い話しだが、科学的、物理的、歴史的にみて

　も　お前の夢では百パーセント有り得ない。学問を積み重ねた人のみが見る

　夢、・・・・お前なんか足元にも呼ばない超スーパー級スペシャルドリームな

　のだ。・・・・　ではその夢を見ることが出来る資格のある人物、即ちお前の

　近隣で学問がある人間は居るか？」

「居るかといわれれば、先生しかいないけれど・・」

「そーら、見ろ。即ちその夢の持ち主は、私と言うことになる」

「それじゃ納得いきませんよ。証拠は？証拠をみせると言っておりませんでした

　かい、先生」

「良いだろう。その証拠は、今まさに、お前が自分の頬を指でつねってみなさい。

　痛く感じるかな」

　そう言われた幹太は、思いっきり自分の頬をつねるが・・・なんどもなんども。

　つねるが・・・。

「どうだい。痛くも痒くも無いだろう。・・・お前は、目覚めていれば頬の痛みを

　感じるが、今は感じない。つまり寝ているということだ。・・・しかも私の夢の

　中で・・」

「え～い。面白くねえ。・・・ここ数日、先生の為に嘘をこしらえてきて、そのた

　めに寝不足になったと言うのに、それも全部人の夢の中の出来事なら、アッシの

　責任でもねえ。・・・もう破れかぶれだ」

「まあ、幹太、落ち着きなさい。・・・お前をゆくゆくは、大身旗本ご用達植木職

　人にしてあげても良いぞ。なにせ、この夢の主人は私だからなあ、ははは・・」

「べらんめい、先生、耳を大きくして良く聞きなよ・・・お凛ちゃんの夢に出てき

　た先生の股間から取り出したキングサーモンのような大きな魚は、生きが良く

　大変美味しい夢であったというのは、実はアッシのつくり話で、・・・

　本当は、メダカみたいに小さくて、口をぱかぱか開いたり閉じたりで、今にも死

　にそうだったが本当のお凛ちゃんの夢。

　また次の日の夢に出てきたお稲荷さんだと思ってよく見たら米俵が二俵もアッシ

　のつくり話で、・・・・

　“お稲荷さんだと思ってよく見たら梅干の種ふたつだったのよ。変でしょう”

　が、本当にお凛ちゃんが話してくれたこと。アッシの夢判断では、お凛ちゃんに

　とって先生は、凄く下衆で、しかも貧相であり、一緒になれば一生不幸な夫婦に

　なると確信付いて言えるさ。・・・・ざまーみろてんだぃ」

「無、無礼者！言わせておけば、・・・人の夢の中で好き放題、・・成敗してくれ

　るから覚悟しなさい」

怒り抑えきれなくなった先生は、刀を抜くと、幹太は、慌てて逃げた。