第4話 お凜ちゃんの夢
「お凛ちゃん、相変わらず可愛いね。ひとつ団子くれ。」
「・・・はぁーい、お待たせ。お茶と団子ね」
「ところで、お凛ちゃん、最近店の前で侍が刀を抜き、変わった団子を真ふたつに
切った事件なんか無かったかい?」
「そんなのあるわけ無いじゃない・・・夢でも見たの?」
「やはりあれは夢だったのか。どうもこの茶碗を見ていると例のものが入っている
ようで飲み辛いなあ・・」
「幹太さん、なんか、あったの?」
「いや、なんかと言うわけではないのですが、お凛ちゃん、このところ綺麗になっ
たんで・・・、誰か好いた人がいるのかなって思っていたところなんだよ」
「なーんだ、私の好きな人は、幹太さんよ。」
「え?アッシ?」
「あはは。冗談よ。まだそんな人はいないわ、誰かとっても良い人を紹介してもら
えれば嬉しいのだけれど・・・」
「・・・例えばだよ。アッシが時々仕事で行く、町一番の蝋燭問屋の手代、留吉は、
どうだい?好みかい?」
「そうね、留さんは、優しくて時々面白い冗談を言うのよ。好みよ」
「では、道場を経営している剣術の平戸師範は、どうだい?」
「男らしくて、正義感が強くて、頼もしいわ。大好きよ」
「それでは、町一番のインテリと言われる西洋学の先生はどう思う?」
「・・・そう言えば、この前、二日連続してあの先生の変な夢を見たわ」
「先生の変な夢?」
お凛の見た夢は、先生が、団子を食べるに来たのだけれども、金子を支払う段になって財布を忘れたことに気づき、股間から魚を取り出してこれで勘弁してくれというもの。
「で、で、で、で、で、その股間から取り出したる魚とは、どんな魚だった?」
「メダカみたいに小さくて、口をぱかぱか開いたり閉じたりで、今にも死にそう
だったよ」
「あちゃ~。
こりゃあ、ダメだ。死にそうなメダカじゃなあ・・で、次の日の夢は?」
「それが、次の日の夢もお団子を食べるに来たのだけれど、金子を支払う段になっ
て先生は、またもや財布を忘れたって。
夢の中だけれども・・・。今度は、股間からお稲荷さんを取り出してこれで勘弁
してくれと言うのよ。・・・それがお稲荷さんだと思ってよく見たら梅干の種
ふたつだったのよ。変でしょう?あっはは」
「あっちゃ~。こりゃ、困った。・・・先生は、プライドが高いお方。学もある
し、財もある。・・・では、私の何が気に入らないのかと言われれば、どう説明
すれば良いのやら。・・・一歩間違えれば、“無礼者”とスパッと首を斬られるか
も知れない。
“・・・きっと上手く行きますよ” か、変なこと言っちゃったなあ・・・弱った
なあ。・・・まいったなあ。・・・こんなこと受けるべきではなかったな・・・」
幹太は、頭を垂れながら、団子屋を後にした。
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