第33話 反響:海外リスナー

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※本日は2話更新です(33~34話)。次は18時。

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◆米国ロサンゼルス 現地時間 15:09



「やあリスナーのみんな……」


・やあニック

・元気がないね?

・知らない人が多いようだ、昨日ニックはトラブルに巻き込まれていたのさ


「その通りだ……」


 ダンジョン配信をノリノリで紹介しているときとは、あまりに落差のあるテンションで彼――ニックはリスナーに向かって語りかける。


「昨日、【シルバーレイク・ダンジョン】の周りで友人とライブストリームの準備をしていたのさ……そうしたら、向こうから2人組の警官がやって来たんだ……」


・ほう、それがトラブルの元かい?

・警官とニック……相性は悪そうだね


「……彼らは僕たちに尋ねたのさ。『撮影の許可は得ているのか?』ってね。僕はすぐさま友人のほうを見た。彼が申請しているはずだったからね。ところが――」


・まさか

・話が見えてきたよ


「――そう、許可なんて取っちゃいなかったんだ! とはいえ、僕らも撮影する気マンマンだったからね。逆に言ってやったよ、『君たちこそ、誰の許可を得て僕たちのカメラに入って来てるんだい?』ってさ」


・またケンカを売ったのか

・恐れ知らずだ


「そこから言い合いになっちゃってね、友人がついカッとなって手を出したものだから……僕らはカメラどころかスマートフォンさえ取り上げられて、一晩中、ネットからも隔離された狭い部屋に拘留されたんだ!!」


・それで落ち込んでいるのか

・ニックらしくない


「いやそんなことはどうでもいいんだ! ファ●キンポリスのことなんて、どうでもね!!」


・落ち着くんだ、ニック

・そんな調子ではまた警官の厄介になるぞ


「でもそのせいで、見逃してしまったんだよ!」


・??

・ああ、察しがついたよ

・なるほどね、例のライブストリームか

・どういうことだ? 何を見逃したんだい?


「アイビスの【レン】さ! 昨日は彼の配信があったんだ!! 釈放されてからアーカイブで見ざるを得なかったんだけれど…………あんなエキサイティングな配信を、生で! 見逃してしまったんだ!! フ●ッッッック!!!」


・あまり叫ぶとまた通報されるぞ

・気持ちはわかるよ、僕だって仕事で見られなかったからね!

・あれは実に驚きだった、あんなユニークスキルを隠し持っていたなんて


「そうだ、【ヘカトンケイル】! 重力魔法をあそこまで見事に操るなんて! 信じられない!! しかも12歳の少年がだぞ!?」


・ヘカトンケイル……彼はギリシアにゆかりのある人物なのかい?

・いいや、おそらくスキル名を名付ける際に参考にしただけだろう

・日本にはあるのさ、一定の年代の少年少女が、そういったネーミングに凝ることが。神話の創造物をスキルや武器に付けたがるような、ね。

・我々も身に覚えがあるんじゃないか?

・どこの国でも共通なんだね


「あああ、僕は自分の見込み違いを謝罪しなければならない!」


・見込み違い?

・謝罪とはどういうことだ


「前の配信での彼を見て、実力の70%ほどで戦っている――なんて見当違いの発言をしてしまったのさ! 僕が間違っていた! 彼の実力はそんなものじゃない!」


・なるほどそういうことか

・確かに、凄まじいポテンシャルを秘めていそうだね


「ヘカトンケイルにも興奮したが、彼はそれだけじゃない! あのスタンスティールの熟練具合、いくつものバトル・ストリームを見てきたが、あれほど華麗に決めてみせたのは彼が初めてだ!」


・剣を振るっていた、パートナーの少女が素人だったからでは?

・彼女もキュートだったね


「それを差し引いても、だよ! あらゆる属性の魔法を操り、一流の戦闘技術を持ち、パートナーのためならその行使をいっさい厭わない……!! レンこそ、次の時代を引っ張って行くストリーマーになるね、断言する!!」


・うん、異論はないよ

・ダンジョンの構造体を崩壊させるほどだった。その点も注目だね。


「…………、決めたよみんな! 僕は東京へ行く!」


・!?

・彼に会いに行くのか?


「まさにそうだ! レンに会って、謝罪をし、一緒に写真を撮って、サインをもらうんだ!!」


・lol

・それが目的か

・ただの熱狂的なフォロワーだ

・いいね、ぜひその様子を配信してくれ

・今度はきちんと〝許可〟を取るようにしたまえ


「そうと決まったら僕は行くよ! 次の配信を楽しみにしていてくれ!!」


・ああ、楽しみだ!

・よい旅を、狂犬ニック

・レンによろしく!



 そうして彼は早速、日本行きのフライト予約を入れたのだった。


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