好きな食べ物は林檎、趣味は料理です

「商人さん!あれは何ですか!」

「あれは馬車ですね。人を運ぶものですよ」


「商人さん!あの建物ってなんですか!」

「あれは教会ですよ。宗教の重要な所です」


「商人さん!あの果物はなんですか!美味しそうです!」

「あれはみかんですね。甘酸っぱいものです。美味しいですよ」


 街の中はすごいです。初めて見るものだらけで、忙しいです。商人さんから教わったものや、初めて聞くものもあって、とても楽しいです。

 とはいえ、流石に興奮しすぎましたが。


「すみません、商人さん。興奮しすぎました」


「全然大丈夫ですよ。楽しんでいるようで何よりです」


 はい、とても楽しいです。


「そうだ、フェンさん。世界ランキングというものを覚えていますか?」


「えっと、確か世界中の登録した人の実力をランキング形式で表したものですよね?」


「そうです。よく覚えていましたね。流石です。で、ですね。今日、ちょうど世界ランキングの登録試験の日なのですよ。良いタイミングですし、登録しませんか?」


「うーん……します」


「わかりました」


 微笑みながら商人さんが答えました。

 何事も挑戦です。




 ただいま、ギルド、と言うところに居ます。実力で順位が決まる実力主義なため、冒険者ギルドに兼用としてあるのだそうです。世界ランキング専用のところと冒険者専用のところで分かれているそうです。


「いらっしゃいませ。本日は…登録ですね」


「えぇ、この娘の登録をお願いします」


 商人さんはそう言って、私に前に出るように促しました。


「読み書きはできますか?」


「はい、できます」


「なら、こちらの紙に、書いている通りに書いてください」


 書いているのは、名前と年齢と性別、後は注意事項でした。注意事項は、3つで、怪我は自己責任だと言うこと、八百長等は即座に登録の取り消しと言うことと、最後は何があっても負けは自分の力不足だと言うことを理解していろ、とのことです。


「書きました」


「字、綺麗ですね……では、私についてきてください。模擬戦場で、ランクを決めますので」


「ランク、ってなんですか?」


「ランクと言うのはですね、ざっくり言うと、実力のある程度の指標となるものですね。下からH、G、F、E、D、C、B、A、S、SSの10個あり、ランク毎のゴーレムを昇格戦で倒すとそのランクになることができます。そして、ランク毎に給金として金貨が与えられます。ランクが上がるごとに増えていき、トップ100に入れば白金貨200枚が支給されます」


「なるほど、ありがとうございます」


 白金貨…ってなんですか?あとで商人さんに聞きましょう。


「ここです。ドレイクさんからの推薦なので、Cランクからですね、頑張ってください」


 模擬戦場は、前に商人さんに教えてもらったコロシアムというものに似ていて、広い丸型で、平な所の周りをぐるっと囲むように座るところが並んでいます。


 なんだか楽しみですね。戦いって実は好きなんですよね。


『Cランク試験、開始します』


 正面に魔法陣が現れて、そこから剣と盾を持ったゴーレムが出てきました。

 ふむ。弱いですね。ささっと消しましょう。


「はい、終わりですね」


 足元の石を拾って、軽く投げると、ゴーレムが砕け散りました。


「えっと、つ、次行きますね」


「はい」


『Bランク試験、開始します』


 さっきと同じ見た目のゴーレムが、また魔法陣から出てきました。うーん、やっぱり弱いですね。


「あんまりですね」


 さっきと同じ方法で倒しました。


「終わりました」


 呆然としていた受付さんに、声を掛けました。

 どうされたのでしょうか?


「えぇ……?……じゃ、じゃあ次に行きます」


『Aランク試験、開始します』


 同じ見た目のゴーレム、同じ登場の仕方です。まあまあですね。


「え~い」


 軽く蹴り上げると、何かが地面に少し跡をつけながら進んでいき、ゴーレムを真っ二つにしました。

 ちなみに、何か、とは、ただの空気のことです。


「はぇ……?」


「終わりましたよ?」


「あ、は、はい。じゃあ、次行きましょう」


『Sランク試験、開始します』


 おお、そこそこいいですね。準備運動程度はできそうです。

 というか、いきなりゴーレムの強さ跳ね上がってませんか?


「せい」


 ゴーレムに向かって真っすぐ走ります。近づくと、ゴーレムは持っている大きな剣を振り下ろしてきました。それを左手で払い、右手をゴーレムの体に当てるように振り上げました。


「それ」


 ゴーレムの上半分が砕け散りました。


「………もう驚きません。次で最後、と言いたいのですが、ただいまSSランクのゴーレムがいないので、ここまでです。お疲れ様でした」


「はい」


 なんだか少し引き攣った顔です。なぜですかね?

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