異世界に転生してからのあれやこれ 過去2

 俺は異世界スキル『ミラー』を活用し、この世界での生活をスタートさせた。


 まずは情報収集。これは、実に簡単だった。

 

 なにせ俺は、一度見た相手であれば誰にだって変身できるのだ。


 街を歩いて顔の広そうなやつの姿を見かけたら、そいつの姿に変身し、酒場や神殿に行けばいい。


 そうして、何気なく人の話に耳を傾ける。

 怪しまれることはない。だって俺は見た目だけならこの世界、この街の住人だもの。


 予想した通り、やはりこの世界には様々なファンタジー生物が存在しているようだった。


 普通の人間ヒューマンの他、エルフやドワーフ、ゴブリンやオークなどのデミ・ヒューマンが存在しており、それぞれが小競り合いを繰り返しているとか。


 ここ『クーラ』はヒューマンの街なので今のところはデミ・ヒューマンには出会えていないが、俺はまだ見ぬファンタジー生物の姿を空想し、胸を高鳴らせた。


 やっぱ、ドラゴンとかもいるのだろうか――?


 しかし空想するより先にまず、俺は自分の生活を整える必要があった。


 なにせ俺はこのスキル『ミラー』と、転生する前身に着けていた地球の服以外、何一つ持たずにこちらの世界にやってきたのだ。


 どうにかして、金と宿を確保しなくてはならない。


 だが案外、それも簡単だった。


 くどいようだが俺のスキル『ミラー』は一度目にした相手の姿を真似できる。

 

 このスキルを使うと、恐ろしいほど簡単に泥棒ができるのだ。

 

 裕福そうな家にそこの主人の姿で入り込み、金貨や銀貨を失敬する――いや悪いことをしている自覚はあったが、こっちも必死だったのだ。


 せめてもの罪滅ぼしとして盗んだ金の半分は、貧しそうな家の中に放り込むことにしていた。

 ねずみ小僧気取りである。

 

 そして残った半分の金をつかって安宿に泊まり、朝がきたらまた『ミラー』で姿を変えて、情報収集に繰り出す――そんな日々を送って半月ほどたつと、俺の体はすっかりこの世界に慣れてきた。


 慣れると、別のことがしたくなる。

 冒険の旅に出たくなる。

 

 旅に出て、ゴブリンやオークと戦いてえ……!


 旅へと出立することを決めた俺は、準備を整えるため商店街へと向かった。


 自分の本来の体にぴったりな武器や防具を探すため、俺は『ミラー』を使わずに、左右を商店に挟まれた道をそのままの姿で歩いていた。


 すると――。


「あー! 地球の服着てる人めっけー!」


 声にふり向くと、そこには女子高の制服を身につけた女がいた。


 俺は初めて、俺以外の地球からの転生者に出会った。 

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