異世界で最初のパーティーを組むまでのあれやこれ 過去3
「君も地球からの転生者だよねー? あたしもなんだ! 超偶然だよー! うっひゃー! 仲間が増えたよ!」
俺に街で声をかけてきたのはルルカという名の女で、この世界に転生する前は女子高生をしていたらしい。
ルルカは転生する前に通っていた、地球の女子高の制服を身に着けていた。
その制服はずいぶん高級そうで、おそらくどこぞのお嬢様学校のものだろう。
「転生者仲間かぁ。いいもんだな」
俺は思わずにやけてしまった。
同胞に出会えたことで一気に心細さから解放されたし、何よりかわいい女子と一緒にいられて嬉しくならない男などいない。
俺との出会いに喜び、ぴょんぴょん跳ねるルルカ。
めくれたスカートからのぞくピンクのパンツ。ブレザーの裾からも、時折へそが見える。
ルルカと今後どうなっていくのだろう、と俺はよからぬ妄想をめぐらせた。
「ところでさ、君の名前はなんてーの? ユー自己紹介しちゃいなよ!」
「ん? ああ、モトキだ。カトーモトキ。よろしくな」
「モトキくん! じゃあモっくんだね!――じゃあモっくん、さっそくだけどあたしの仲間を紹介するね!」
「え、仲間が……いるのか?」
ルルカと二人っきりじゃないのはちょっと残念だったが、しかし仲間が多いのは喜ばしいことだ。
もし他に男がいたら、いずれルルカを取り合うことになるかもしれないが……しかし俺とルルカには『地球からの転生者』という共通項がある。
なんやかんやあるにせよ、結局俺はこの子と結ばれることになるだろう、なんてことを考えながら、他の仲間のところに向かった。
「あれがあたしの仲間たち! おーいみんなー! 新しいお友達連れてきたよー! 紹介するね、地球からきたモっくん!」
ルルカの仲間は二人だった。
まず、魔法使いっぽいかっこうをした女エルフが一人。
彼女の名前はエリエーヤ。ルルカがこの世界に来てから最初に仲良くなったはぐれ者のエルフだとか。
見るからに気むずかしそうだが、デレるとべたべたになりそうなタイプだ。ネット小説にもこういうエルフよくいた。
そしてもう一人は――。
「オッス! 俺はカイ。俺も地球出身者だ」
カイ、という男。
なんと、彼もまた地球からの転生者らしかった。
転生者って、そんなに珍しくないのか……?
初対面の俺に握手を求めてきたカイは、見るからに気のいいやつだった。
カイは大剣を持っていた。
魔剣『グルキュート』。
転生する時女神にもらったらしい。
俺はカイの姿に、ひどくショックを受けていた。
カイの方が、俺なんかより数倍『主人公』っぽかったからだ。
同じ地球出身者なのに、俺がもらった能力は地味だし、しかも俺はこそ泥だ。
地球からの転生者だからって、誰もが異世界で華々しく活躍できるわけではないのだ。
俺がこの世界にきたのは、カイを引き立てるためだったのだろう。
つまりこういうことだ。
カイ……主人公
ルルカ……ヒロイン
エリエーヤ……助手(当て馬枠、ハーレム要員)
俺……助手(カイの引き立て役)
……どうやら俺は、異世界ですら何者にもなれないらしい。
魂がそういう構造にでもなっているだろうか。
悲観しても仕方がないので、俺はカイのパーティーでおとなしく引き立て役をすることにした。
こうしてカイ、ルルカ、エリエーヤ、俺の4名は冒険へと旅立った。
ヒューマンを苦しめる悪いデミ・ヒューマンの討伐に向かうことにしたのだ。
ちなみに、エルフだけはヒューマンと同盟を結んでいるので、主な敵はゴブリンとオークである。
俺は主人公ではないが、ゴブリンやオークを倒しまくれば、英雄パーティーの一員として有名にはなれる! ――そうやって自分を奮いたたせていた。
この時はまさか、後に自分が仲間を裏切り、オークの女王様につくとは思いもしなかった。
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