第16話 処置室 視点 ボルドー
私が目覚ますとベッドには目を閉じた私が横たわっていた。
頭には管のついた半球状のヘルメットが付けられている。
銀色に輝く、それにはガラスが埋め込まれていて定期的に赤や黄色に点滅している。
「魂をシステムに移転完了しました。」
頭の後から声がする。
何故か合成音声という意味不明の単語が浮かび上がる。
「コピーと変換を始めて、終わったら確認するから。肉体はペースト機に。」
白衣を着た魔族が頭の後に話かけてくる。
「ここは何処だ。貴様はいったい……」
私が話かけると魔族は手を止めてこちらを見た。
「あぁ、意識が戻ったのね。可哀想に。私は……そうポンコツとでも名乗りましょうか」
魔族は憐れんだ目をしている。
「処置が終わり、意識がなくなるまでシステムが見た物が流れ込むでしょうけど……まぁちょっとした悪夢だと思って下さい。」
ポンコツと名乗った魔族は作業に戻った。
何をしているかはわからないが……。
私は周りを見渡す。
私の頭から変なヘルメットは外され、ベッドごと体が運ばれてゆく。
ペースト機とは魔獣や魔獣の素体の食料を作る魔道具だ。
ここの魔族は資源を無駄にしないと何故か理解する。
近くの部屋では透明なバケツの様な物に入れられ
液体に浮かんだ、それは悲痛な表情をしているが意識はない様だ。
更に違う部屋を見ると、全裸のチカカが木馬の様なベッドに、うつ伏せに括り付けられていた。
正確には上半身が括り付けられていて、下半身はベッドからはみ出している。
ちょうど尻を突き出した姿だ。
「僕に何をする気だ!このロープを外せ!」
チカカは叫んでいる。
そこにポンコツの声がする。
「知りたいですか?そのベッドの下には変異混成の珠が活性化して置いてあります。貴方には雄牛の花嫁になってもらいます。」
変異混成の珠は活性化すると、通常結びつかない異種の子を孕ませる効果がある。
そんな知識が流れ込んできた。
ミノタウロスを作成する予定らしい。
聖王家にエルフの血筋が流れているのは嘘ではないかも知れない。
チカカの部屋の後扉が開き、黒い雄牛が入って着た。
幻覚魔法により、興奮した鳴き声を上げている。
雄牛にはチカカが繁殖可能な魅力的な雌牛に見えていると何故か分かる。
「な、や、止めろ!馬鹿なことは止めろ!」
半狂乱になったチカカが暴れるが、拘束しているロープは軋む音は上げてもビクともしない。
全身から油汗を滴らせるチカカに雄牛が近づく。
「止めろ!助けて!お願い!僕はまだ!」
雄牛の興奮した鳴き声とチカカの悲鳴が聞こえる。
「前の
ポンコツの声がする。
ないはずの頭が痛む。
心が引き裂かれそうに痛い。
増悪でどうにかなってしまいそうだ!
「そう、その増悪を侵入者にぶつけなさい。」
ポンコツの声がする。
「コピーも、処理も、問題なし。敵味方識別情報も正常。ガーゴイルにダウンロードして。ドワーフが帰ったら、起動するから……。」
頭の後から声がする。
私は研究所を守らねばならない。
仲間達の為にも……。
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