第14話 侵入者達 視点 ボルドー&チカカ
転移魔法による移動は最初同様スムーズに終わった。
ただ違うのは全員が転移されていなかった事だ。
自分と共に転移してきたのは
そして近くでは、けたたましく音が鳴り響き、どこからか声がする。
「B4フロアに侵入者です。侵入者です。」
スケルトンウォリアーが何体か駆け寄ってくる。
「
チカカが叫び通路に飛び出してゆく。
可能性は限り無く低いが、魔獣の材料が運び込まれている以上、何処か遠くの大陸に通じている転送陣があるかも知れない。
もしくは魔族と交渉出来るなら、身代金で自分とチカカぐらいは見逃してくれるかも知れない。
そんな非現実的な妄想を抱くぐらい状況は絶望的だ。
2体のスケルトンウォリアーが片手剣と小盾を構え近づいてくる。
が、剣の届く範囲に入る前に止まった。
?
なんだ?
[交易の神]が哀れな信徒に奇跡を、もたらしてくれたのか?
と、途端に息ができなくなる。
眼の前がオレンジに染まっている。
スライムだ。
スライムが天井から落ちて来たんだ。
「[殺さないで。それは加工してからガーゴイルに搭載するのだから]」
部屋のタッチパネルから、魔族語で声が聞こえた。
[鋼鉄の鍋]には黙っていたが、ルースほどではなくとも、商人の端くれとして、多少は魔族語が分かる。
そして自身に降りかかる運命がわかり、絶望が深くなった。
息が苦しい。
オレンジのスライムが私を包んだまま硬化を始めた。
チカカの言う通りだ。
我々は騙されていた。
スチールゴーレムが現れた時から、魔族は我々を魔獣の素体として見て管理していたのだ。
そして私は騙されていた。
奴は……
「[硬化処理済んだら、処置室へ転移させて]」
スケルトンウォリアーはチカカを追って通路に向かった。
窒息こそしないが、息が苦しい私は呼吸をしようと藻掻く。
だが硬化したスライムは、ビクリともしない。
やがて目の前が暗くなり、私は意識を手放した。
☆☆☆
僕が通路に飛び出すと、武器を構えた警備のスケルトンウォリアー2体が、こちらに向かってくる。
[大地母神流抜剣術]
すれ違いざまに抜剣し、1体を両断して1体は、すり抜けた。
両親から、それぞれ学んだ剣術と体術があれば、スケルトンウォリアー位なら対処出来る。
本当はボルドーと共に通路に出られれば良かったのだけど、彼の護身術程度の腕では難しかったのだろう。
ただ、断末魔の悲鳴も聞こえてないから、上手く立ち回っているんだろう。
後からスケルトンウォリアー追って来ていた。
いつの間にか3体に増えている。
どこかで奴らから隠れなければならない。
瞬発力で負ける僕ではないが、持久力では、魔術で作られたスケルトンウォリアーの方が勝るに決まっている。
咄嗟に通路の扉を開けて、中に飛び込んだ。
このフロアは行く先々で自動的に明るくなるから便利だと思う。
飛び込んだ部屋も明るくなった。
だけど、僕には運がない。
部屋には、いくつもの管が繋がれた黒い全身鎧が鎮座していたのだ。
黒い全身鎧は金属の軋み音と白い蒸気を出しながら立ち上がった。
全身鎧の頭の部分の奥が赤く光る。
[魔蒸気式リビングアーマー、自立モードにて起動、内部魔力による起動時間は600セカンド、職員は10セカンド内に室外に退避して下さい]
魔族語で音声が流れたが、僕には内容が分からない。
分かるのは眼の前の全身鎧が繋がれていた管から切り離されて、片手半剣を抜剣した事ぐらいだ。
そして足元から蒸気を吹き出し、微かに浮かび上がると、こちらに突進してきた。
速い!
前に一度見た竜人の[竜縮地]みたいだ。
正面からぶつかったり、斬り込んで来た剣を受けようとしたら大変だろう。
でも、一目見た感じ制動に難がある。
僕はステップで躱すと、横薙ぎに剣を振る。
そして全身鎧が大回りターンする隙もついて、連撃を浴びせた。
しかも、全身鎧の稼働部分の隙間に向けてだ。
人間なら血を出す代わりに、全身鎧は蒸気を噴き出している。
蒸気で多少の火傷を負ったが深刻な怪我じゃない。
フォニと合流したら直ぐに治してくれるだろう。
全身鎧の動きが少しづつ遅くなる。
どうやら、こいつは見掛け倒しみたいだ。
無理に壊さなくても、そのうち動かなくなる。
僕は部屋の奥の扉を開けて先に進んだ。
まっすぐな通路が続いている。
後からは全身鎧が追ってくるが、浮かび上がる蒸気を失ったからなのか、スケルトンウォリアーよりも遅い。
[この先、浮遊して通過すること]
通路の上に掲げてある看板に赤い文字が流れている。
魔族語だとは思うが、意味は分からない。
しかし看板を流れる文字なんて流石魔族の遺跡だ。
僕が看板と流れる文字に気を取られていると、突然床がなくなった。
え?
水音を立てて僕は床に開いた穴に落ちる。
[硬化開始します。]
急にオレンジの水が固まり始めた。
僕が力を込めてもビクともしない。
呼吸が思う様に出来ない。
意識を失う前に、僕が覚えているのはそこまでだった。
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