第12話 ミノタウロス 視点ポンコツ&フォニ
「そういやA5とか言う魔獣はどうなった?ポンコツ」
隣を歩く
「外部にて交戦後、ロストしました。」
これは嘘だ。
正確には[外部にて島への上陸者と交戦後、目標をロストしました]になる。
「待て、島に他の冒険者がいるのか?」
ドワーフが話に割り込んできた。
「水を求めて複数の上陸者が発生しましたが既に退去しています。」
これは事実だ。
「2号船か3号船かもしれませんね。」
「だと良いが。遺跡探索が被るならまだしも、上前をはねる狙いの奴等もいるからな。」
「一度戻るべき」
「登録したら戻ろう」
「あぁ、それには賛成だぜ。」
何故かラアナが珍しく同意した。
「ついでにポンコツを持って帰る。駄目なら壊しちまおう。」
「許可なく備品を持ち出す、もしくは破損するのはお止めください。さもなくば警備を呼びます。」
登録の警告音声を発する。
「そうかよ、ポンコツ。冗談だ」
ラアナは、そう続けたが声色は真剣だ。
「魔術的価値は有りそうだが、かさ張る上に一般受けしない。他に価値ある物が無ければ仕方がないが、商人としては、積極的回収はおすすめしない」
「スチールゴーレム、島への来訪者は間違いなく退去したんだな?」
私は肯定する。
ドワーフとボルドーは安堵した様だ。
「小盾を新調しなきゃ。また出費だよ……。」
「大金持ちになれば、装備の心配は無くなりますよ。そもそも冒険者を続ける理由も無くなります。」
冒険者達は戦闘からの開放感からか、好き勝手話している。
本当に気軽なものだ。
その後、B1入口の転送装置まで、ドワーフ達、素体一行を連れて戻った。
そして改めて確認の為話しかける。
「それでは皆さん。転送装置のタッチパネルに、それぞれ仮のコードを入力後『受付フロア』と音声入力をお願い致します。」
「ポンコツはここでお別れか?」
ラアナが、こちらを見ながら話す。
少し、眼つきが鋭い気がする。
「いえ、皆様のフロアからの退去確認後、引き続き御案内させていただきます。」
素体達は、それぞれタッチパネルにコードを入力した。
彼らに配布したのは臨時職員を除けば素体コード。
こちらでも確認したが、入力間違いはない。
後は音声入力を済まして貰うだけだ。
「音声入力をお願い致します。」
自動音声を発して行動を促す。
「「「「「受付フロア」」」」」
「外へ」
?!
やれやれ、1人だけ予定したフロアに行かなかったか。
こういう奴がいるから困る。
私はスチールゴーレムの入力操作を自動に戻し、他の警備画面に切り替えた。
☆☆☆
私は一足先に地上へ戻った。
灯りは持ってないが、倉庫の入口は開いたままになっているので明るい方向に行けば外に出られる。
パーティの、みんなには怒られるかも知れないが、私は元々人が苦手だ。
村にいた時も神殿の司祭様とチカカ以外の人とは極力関わらない様にしていた。
旅に出たのも、親友のチカカが旅に出ざる得なかったからで、司祭様は神職として人嫌いでは務まらないからと3年を期限に賛成してくれた。
チカカの両親は冒険者をしていて、村にはオーガ退治を機会に住み着いていた。
ただ他所者は他所者で村人は表面上は愛想良く振る舞っても決して共同体には入れない。
両親が仕事で旅に出る度に、チカカは良く神殿に預けられていた。
そして、年が開けたらチカカも冒険者になり、村を出て行くという時に事故は起こった。
チカカの両親が所属していた冒険者パーティが貴重品輸送警護に失敗したのだ。
貴重品は強奪され、チカカの両親は戦闘中に死亡。
更に悪い事に、その輸送隊襲撃の手引をしていたのがチカカ両親の所属するパーティのメンバーだった。
[貴重品に問題発生時。輸送に関わった者に重大な過失ありし時は、賠償責任を負う]
逃亡した手引者以外の生き残りパーティメンバーは自害した1人を除き奴隷として売られ姿を消した。
そしてチカカの両親については、契約当事者は死亡という事実を持ってしても、賠償責任は免責されなかった。
未成年のチカカは本来、両親の財産として換金処分される予定だったが、長年尽くしてくれたとして商会が賠償金を支払い、チカカの借金に変えてくれた。
基本的な教育さえもロクに受けてないチカカは、即時返済を免れた事に感謝していたが、金貨60枚年利1%の借金の大きさは多分理解していない。
利息が膨らむ前に何とかして借金を減らすしかないのだが……。
私は倉庫を出てベースキャンプに向かった。
!?
キャンプの側に金属鎧を身に着けた牛頭人身の化物がいる。
[加速突進](使1残24)
頭を下げて突進してきた化物にメイスを構える間もなく跳ね飛ばされる。
落下し背中を強打した私に、化物の持つポールアックスが振り下ろされた。
まさか、こんな所で…………。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます