第11話 室内実験場 視点 ポンコツ

「メェェェ!ブベ」(使1残27)

「メェェェ!ブベ」(使1残26)

「メェェェ!ブベ」(使1残25)


実験場に入ってきたタイプ2a、通称キメラはヤギの頭から、冒険者達に向かい立て続けに強酸を吐きかけた。


待ち伏せていた戦士チカカ盗賊ラアナ、ドワーフらの前衛は、それらを掻い潜り三方からタイプ2aに接近する。


[高速詠唱][魔力付与]×2(使3残1)

魔術師ルースが呪文を唱えるとチカカの片手剣とドワーフの戦斧が魔法付与特有の鈍い光を放つ。


冒険者達の連携攻撃のデータを少し離れて記録している。

やはりタイプ2aは出来損ないだ。

マンティコアの様に多様な魔術攻撃がない為、複数の白兵に対し対応が後手に回っている。


酸を吐きかけても、飛び散った飛沫が多少の火傷を負わせるぐらい。

致命傷は負ってはないが、小さな傷は複数。

それでいてライオンの爪や牙も有効打は与えられてない。


「グガー」(使用1残20)

突然タイプ2aが飛翔し、前衛のドワーフを飛び越えた。


「付け馬!行ったぞ!」

司祭フォニ商人ボルドーがルースを守りながら後退する。


「下がるな!牽制しろ!糞馬!」


一瞬だが下がった後衛と飛び越された前衛の間でタイプ2aはフリーになった。


「メェェェ!ブベ」(使1残19)

フェイントをかけて、ヤギの首だけが振り向いて酸を吐きかける。


「ウァ!」

チカカが咄嗟に小盾で防ぐが、盾は煙を上げて溶け、腕を負傷する。


雷撃[使1残0]

ルースがチカカに飛びかかる寸前のタイプ2に雷撃を浴びせ足止めをした。


「囲め!削りきれ!」

雷撃で脚が止まったタイプ2aに冒険者達が周りから殺到する。


その後、しばらく粘ったがタイプ2aは倒された。


☆☆☆


「至高神よ、この者らの、火傷を、癒やし給え」(使3残2)

フォニが前衛達3人の負った傷を癒やし、ボルドーとルースはタイプ2aの死体の検分をしている。


「価値ある素材は取れなさそうだな。」


「臨時職員コードで他のフロアに回った方が良さそうです。」


冒険者それぞれに対応コードを先程発行した。

戦闘データは取れたし、使い道も決まった。

後はどう処理するかだけだ。


「臨時職員の皆様、ご苦労様でした。B2受付にて登録頂いた後であれば3級職員区間なら自由に見学、ご利用頂けます。」

プログラムに沿った案内音声を出す。


「受付に御案内いたしますか?」


「ん、だよ。なんか手続きが必要なのかよガラクタ。」


「仮登録は6刻で登録が切れます。」

実際の仮登録は12刻だが、素材に真実を伝える必要はない。


「ちょっと待ってください。探索を中断しキャンプに戻るべきです。私はもう魔力が切れてます。」


「僕もそう思う」


「私もだ」

ルース、チカカ、フォニが一時撤退を言い出した。


「このチャンスを逃さず探索を続けるべきだ。いくつかでも、魔道具を得られるチャンスを逃すのか?」

ボルドーは続行希望。


「アタイはディッツの旦那に従うよ」

ラアナは予想外だが様子見。


「魔力、神力の残りが厳しいのは分かっている。だが登録を済してから一度キャンプに戻る手もある。」

ドワーフが人間達に話かける。


「正規登録なら魔族暦で30日、更新も可能です。」

仕切り直しても構わないが、出来るなら決着をつけてしまいたい。

上手く誘導出来るなら越した事はない。


「そういう事なら」


「うん」


「反対」

ルースとチカカは折れたが、フォニは反対のまま。


「ポンコツ。受付とやらに案内してくれ」


「畏まりました。御案内します。」


不服そうなフォニを無視してディッツが

続行を告げ、スチールゴーレムはそれに案内音声で答えた。

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