第52話 ハッピーエンド

 今日で全て終わる。

 八神高校吹奏楽部は定期演奏会を迎え、舞台袖から見守った。最後の礼には呼ばれ一緒に頭を下げた。


 自主勉強を続けても高卒は出来ない。

 休学から退学し、通信課程の高校へ新学期から転入することになっていた。


 最後の本番が定期演奏会で、最後の交流が本日の卒業生送別会である。


「それではめでたく進路を決定された先輩方、残念ながら見込みのない皆さん。紙コップを持って、乾杯」


「ちょっと待てまだ失敗したとは言っていない」


「失敗しているなんて言ってませんよ」



 騒がしい音楽室を出て講師室に入った。

 坂下先生の隣の監督用の事務椅子に座れと坂下先生に手招きされた。


「松山が倒れ込んだ映像は残ってない。安心せぇ、みな知らん。それでどうやった。ここでの生活は?」


「もう繰り返したくないです。僕は楽器の練習嫌いなんで」


 そうかと坂下先生が笑い、僕も思わずげらげら笑った。


「写真撮ろうぜー」

「行け光。いったんここで終わりだ」


 桜舞う中、僕はゆっくりと仲間に支えられながら、校庭に歩き出した。

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