第20話 地道な練習あるのみ

「ということで今日は十メートルな。リアはきついから構えた状態でフォワード行こか」


 リア、リアマーチは後進。

 フォワード、フォワードマーチは前進という意味だ。

 ダメだ、この流れはメンバーに入る流れだ。


 この五メートルからがすごくまずかった。喘息なんてほぼ治っている。呼吸法をやってみても発作には至らない。


 十が二十に増え、二十が五十に増えた。小藤先輩の指導の元、リアでもフォワードでもそこそこ歩けるようになった。

 

 当然だ。だって去年やったもん。


「光の成長はすごいな。流石、去年もメンバーやっただけあるわ」

 はははと笑うしか無かった。


 ただ、他のメンバーの練習はきつそうでいくら僕が去年経験していても一か月半で追いつくのは中々難しそうだ。


「気にすんな。前進はしてるから大丈夫や」

 メンバーは授業の後はひたすら練習で疲労困憊ひろうこんぱいだった。


 だからバスドラムを持っている男子部員が疲れから階段を滑り落ち、それをかばう形で僕が下敷きになることもあるかもしれない。


 おい、これは折れたやろ。な、折れたよな。絶対に折れた。

 

 足の痛みに耐えながら、幸運もありすぎるやろ。これはすごいラッキーやん。

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