第64話 どうしよう 捨てられちゃう
無事にイベントも終わってメイドさんに送ってもらう帰りの車の中
なんだか送迎してもらえることに慣れちゃったよ
明日は自分で学校まで行かなければいけないのにまずいです。
ずっとメイドさんがお迎えに来てくれたらお優雅なのになぁ
「聖女ちゃん嬉しそうです です」
さっきから聖女ちゃんが百面相を披露中
ぼぉっとして、にやにやして、ちょっと難しい顔して、またにやにやして・・・
ひとりの世界に入り込んでまわりが見えてないです。
面白いからトテちゃんとふたりで見学してます。 幸せそうだから良いのです。
でも見学だけでは終わりません。おまちかねのじんもn・・・ 質問の時間です。
にやにやしているほっぺをつんつんしてこちらの世界に戻ってきてもらいましょう。
「ふたりともどうしたのですか」
どうしたのじゃないでしょ 質問の時間ですよ。
§ § §
「聖女ちゃんは始めから告白にOKするつもりだったの?」
トテちゃんナイス質問です。それ一番聞きたかったよ。
「いいえ 迷っていました。だから姉さまに言われたように騎士くんに告白された瞬間に決めようと思いました」
聖女さまがそんなこと言ってたんだ。
告白の瞬間に決めたなら、告白のどこが良かったの? 全部です♪ なんて言わないよね。
「雰囲気から誠実さが伝わってきたからです。騎士くんが『騎士の誓い』をしてくれたのです。憧れている騎士の伝統を軽はずみに使わないと考えたら言葉が胸に響きました」
そっかぁ 騎士の誓いかっこよかったよね。
「でもでも 騎士の誓いならOK する時は最後に剣で肩をぺんぺんするんじゃなかったっけ」
トテちゃん詳しいですね。でも肩をぺんぺんするのは座禅するときだと思うよ。お坊さんが長い棒でぺんぺんって
「騎士くんは『白百合の聖女』と名前を呼んでくれました。聖女の作法では剣を使わないそうですよ」
聖女ちゃんもかなり詳しいじゃないですか さすが聖女ちゃんです。
これで聖女見習いから卒業だね。
『白百合の聖女』と『騎士くんの彼女』の称号ダブルゲットだよ。
「かっ かのじょなんて そんな・・・」
嬉しいでしょ
「・・・はい」
あれからずっと二人で見つめあっていたもん そのままキスすると思ったのに残念
「そんな 人前で恥ずかしいことしませんよ」
「じゃあ 人のいない所でするんだぁ」
「ぷしゅぅ」
トテちゃんの攻撃 クリティカルヒットでした。お見事っ
§
遠くに世界樹が見えてきました。本家の世界樹さんです。
もうすぐ聖女ちゃんのお家ですよ。
世界樹を見て、急に顔色を変える聖女ちゃん
「あっ 姉さまにきちんとお礼を言っていません。どうしよう」
いやいや きちんとお話してました。お礼も言ったじゃないですか。
「いちばんお世話になったのに失礼ですよね。妹として失礼なことしましたよね。姉さまに嫌われてしまいます」
どうしたの 落ち着いて 落ち着いて
「あかねさんとリズさんと聖女さま 三人で見送ってくれたよ。優しく笑ってたよ。聖女さまもおめでとうって言ってたよ」
そうだよね。トテちゃん みんな優しかったよ。聖女ちゃん聞いてなかったの・・・
「でも でも いつもの姉さまならぎゅっと抱きしめて髪を優しくなでてくださいます。私が騎士くんばかり見ていたので姉さまが引いてしまったのでしょうか」
「聖女ちゃんが騎士くんばかり見てるのはいつものことです。です」
聖女ちゃんが『白百合の聖女』になったんだよ。特別な妹が聖女になったんだからきっと喜んでるよ。
「そうです。私が『白百合の聖女』の名前を姉さまからもらわなかったからいけないんです」
騎士くんがつけてくれたんでしょ いいじゃない すっごく良いと思うよ。
今日から聖女見習いじゃなくて聖女さまだよ。一人前の聖女さまだよ。
私も学校で『白百合の聖女ちゃん』って呼んじゃうよ。
「『白百合の聖女』になったらきっと独り立ちしなさいと距離を置かれてしまうのです。姉さまと離れるくらいなら『世界樹の聖女見習い』が良いです。姉さまと一緒が良いです」
だめだ 聖女ちゃんがぽんこつになってる。
――――
聖女ちゃんの家に到着です。
「お母さん どうしよう 姉さまに捨てられちゃう」
お母さんびっくりしてます。
そうじゃないでしょ まずは『騎士くんに告白されちゃったぁ 彼氏が出来たよぉ』だよね。聖女さま捨てたりしないよ。
「怒らせるようなことしたならすぐお詫びに行かないと」
慌てないでください お母さん 話が全然違います。
すっと横から出てきたメイドのお姉さん
「お初にお目にかかります。お嬢さま専属でお世話をさせていただいている者です。私からご説明いたしましょう」
お願いします。私たちではどうにもならないみたい。
「あら やっぱりメイドさんがいたのね 初めまして」
「実は本日のイベントにて、かくかくしかじか うまうまぴょいぴょい だったのでございます。さらに最後に告白されて有頂天でございます」
「だからうちの子がぽんこつになったのね。お赤飯炊かなきゃ でもどうして聖女さまから捨てられるなんて話に」
「姉さまに失礼なことをしたからです。どうしよう」
だから落ち着こうね。きっと怒ってないからね。もっと楽しいこと考えよっ 騎士くんのこと考えよ ねっ ねっ
「しおんちゃん トテちゃん 一緒に謝ってくれますか 姉さま許してくれるでしょうか」
私たちは味方だから大丈夫だから 今日のところはお付き合いのお祝いしてね。
メイドのお姉さん なんとかしてぇ
「お嬢さまは喜んでいらっしゃいましたよ。急な事だったのでまだ心が追い付いていないだけです。まずは騎士くんとの恋を喜びましょう。騎士くんにも失礼ですよ」
お姉さん良いこと言いました。せっかく告白が成功したのに騎士くんがっかりするよ。
もっと喜ぼうよ。ねっ ねっ
今日はお赤飯でパーリーナイだよっ
「うちの子がぽんこつでご迷惑おかけしました。さ パーティーよ。お赤飯でパーリーナイよ」
お母さん あとはお願いします。
§
聖女ちゃん きっと幸せ過ぎてまわりが見えてなかったんだよね。
「気が付いたらお話ししたかった聖女さまとお話しした記憶がなかったと・・・」
あれだけ騎士くんに怒っていたあとだから気になるよね。
「お見送りしてくれた聖女さま 笑顔がちょっとだけ硬かったよね」
「お嬢さまはシスコンですから拗ねてるだけですよ。そのうち復活しますからそのまま放置しておきましょう」
メイドのお姉さん 意外と厳しいですよ。お姉さん 本当に聖女さま専属のメイドさんなのですか
「メイドですよ」
あやしいです。どうしてお姉さんはみんなないしょのひみつが多いのでしょうか
あかねさんは良いですよ。妹ですから信頼してますからね。ないしょのひみつがあっても安心なんです。
あっ あかねさんときちんとお話ししないで帰ってきちゃったよぉ
あかねさんに嫌われたらどうしよう。今からフェアリーでメッセしたら許してくれるかな。
どうしよう トテちゃん
「しおんちゃんもぽんこつになってるよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます