第58話 恋をかけた茶番劇

おゆうがなローズちゃんはじけんにまきこまれました。


イベントかいじょうはわるいこ『ヤミーズ』にとりかこまれています。


ぶたいのうえではひとじちになったアイドルさんがきょうふにふるえています。これはこわいですね。


ゆうきあるオタクさんもつかまってしまいました。



これは聖女さまが薙刀を振り回して乱入すれば・・・ いえ なんでもありません。



きゃああ だれかたすけてぇ


――――



『やめなさいっ 私が相手ですっ』



助けが来ましたっ 


舞台から伸びる花道の先端 世界樹の影から飛び出してジャンプっ スタッと舞台に立つ姿 かっこいいです。



「誰だお前はっ」



「世界樹の使者『ぷりぷりすいーと』」



待ってましたっ 『ぷりぷりすいーと』参上ですっ 初めて聞きましたけど・・・



でも舞台にジャンプで登れるのですか


あっ 男性スタッフさんが自分の背中を台にしてジャンプさせていたのですね。影のスタッフさんもかっこいいです。背中踏まれていたくなかったですか 


むむっ なんだかデレデレの笑顔ですね 踏まれたのはご褒美だったようです。



緑のタイツに葉っぱの付いたひらひらミニスカート おへそを隠せていないセクシーシャツ そして隠し切れない圧倒的な何か

身体にぴったりとした衣装なのですごいのですよ。



カッコいい音楽も流れ始めました。ここからが見せ場ですね。

がんばれマスクさん ・・・じゃなかった『ぷりぷりすいーと』



『可愛いは正義 すいーとあろー』



大きな弓を引くポーズ 何も持っていないのに弓を持っているように見えます。

そして発射っ ばしゅ と音がして光の矢が飛びます。


いまの幻覚じゃないよね。何か飛んだよね。




「ぐはっ」


こちょこちょ棒を持っていた悪い子さんが吹き飛んでしまいました。本当に後ろに吹き飛びましたよ。

悪い子さんすごくないですか 背中痛くないですか もしかして悪い子さんもご褒美なのですか



吹き飛ばなかった悪い子さんたちは『ぷりぷりすいーと』に迫ってきました。吹き飛んだお仲間さんを助けなくて良いのですか あれ いつの間にかいなくなってる。




迫る悪い子にはすいーときっく バシッと音がして吹き飛びます。悪い子の頭まで長い脚が高く上がってますよ。『ぷりぷりすいーと』カッコいいです。


会場のどこかにいる彼氏(仮)さん 見てますか カッコいいでしょ 惚れちゃうでしょ



すいーときっくだけで次々と倒しながら悪い子怪人に迫ります。倒れた悪い子はごろごろっと舞台の下へ

ご苦労様です。ナイス悪い子です。



悪い子さんたちがごろごろっと居なくなったところで怪人さんが前に出ます。



いよいよ怪人さんと対決です。



――――

――――



「想像よりすごいな」


「確かにすごい演出ですけどリハーサルとかしなかったんですか もう何回か見てますよね」


「いや リハーサルの時はジャージだったからね あんなにバルンバルンするとは」


「先輩 最低なこと言ってますよ」



オタクさんたちが応援している観客席の横

スピーカーの影に隠れるように舞台を見守る二人のスタッフ


ピエロさんと騎士くん



ピエロさんは手に持った機械を上下に動かしたりタップしたり軽口をたたきながらもお仕事中です。


色々な音をタイミングよく出しているのはピエロさんのようです。

照明の修正も細かく指示を飛ばしています。光の矢を飛ばしたのもピエロさん考案の演出


いろいろと高度な技術を持ったピエロさんです。発言には問題がありますが・・・



「ヤミーズのお姉さんに三番からフットライトちょうだい そう 立体的に見せたいからね」


指示と同時にヤミーズのお姉さんへ斜め下からの照明が加わりました。




「確かに威厳が出ましたね。悪の幹部っぽいですよ。流石です」


「狙いは威厳じゃないよ。魅力的な女性なんだからね。もっと立体的にバインと見せないと」


「先輩 さっきの感動を返してください」



――――

――――



悪い子は『ぷりぷりすいーと』に倒されてどこかに消えてしまいました。無双してます。


アイドルさんたちを捕まえていた悪い子はもういません。

さあ 今のうちに逃げましょう。今ですよ・・・ 



逃げずに舞台袖から見てますね。



あとは怪人さんとヤミーズお姉さんだけです。『ぷりぷりすいーと』の圧勝ですね。

観客席のペンライトはいつの間にか緑一色に染まっています。私の所にもペンライトが支給されました。


いったいどこから・・・


会場全体が『ぷりぷりすいーと』を応援しています。



応援の声に押されながらもめげない怪人さん 反撃します。



『ヤミーズネット』 ばしゅ



すきをつかれました。


かいじんさんの手からたくさんの糸がでてきて『ぷりぷりすいーと』にからんでいます。


きょうりょくな糸からだっしゅつできません。これはこまりました。



『ぷりぷりすいーと』をヤミーズお姉さんが後ろから抱きしめるように捕まえます。


怪人さんは捕まえないのですね。お姉さん同士なのでぎゅっと捕まえて問題ないようです。



ぴーーーーーんち



「さあ もう逃げられまい」



後ろからぎゅーーっと締め付けるヤミーズお姉さん ふたりのお姉さんがぎゅっとしてむにゅっとなって何かがこぼれてしまいそう。



R-じゅうななさい的に ぴーーーーーんち



――――

――――



「先輩 これで予定通りなんですよね。本当に大丈夫ですか」


「いや ここから先は何も決まってないよ。 助けが来るのを待つしかないんじゃないかな」


「でも待ってるうちにこぼれちゃいますよ」


「騎士くん 良い着眼点だね。お姉さんふたりとも演技に夢中で気が付いていないからね」



観客席からはヤミーズのお姉さんに罵声が飛びます。


「やめろー ぷりぷりすいーとを離せっ」「やりすぎだからぁ あぶないからぁ」


「もう少しだっ もっとやれっ」  



ぽこっ


となりのアイドルさんから怒られたようです。



§



「僕でも・・・ 僕でもヒーローになれるでしょうか」



目の前の観客席にいたオタクさんがピエロさんと騎士くんに話しかけてきました。


チェック柄のシャツにリュックサック 頭には赤いバンダナが巻かれています。

手には緑色に光るペンライト ぷりぷりすいーとの緑色


オタクさんのお手本のような人です。




でもペンライトが震えています。小刻みに手が震えています。



「君は『ぷりぷりすいーと』のファンなのかい」


「大ファンです。大好きです」



ピエロさんの質問に迷わず答えるオタクさん



「もしかしてあなたが・・・」


オタクさんの正体に気が付く騎士くん




「推しのピンチだろ オタクならどうする 漢ならどうする」


「・・・行きます」



観客席の後ろを走り抜けて舞台へと駆け出すオタクさん

さっきまで震えていたはずのオタクさん


もう迷いはないようです。



その背中に騎士くんは剣を掲げます。


「ご武運を」



にやりと笑ったピエロさん



「全スタッフ スタンバイ ヒーローが行くぞ」

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