第56話 簡単な魔法

『恋する仮面舞踏会』二日目



舞台ではオタ芸特集が開催中


異様な盛り上がりですね。それは良いのですがローズちゃんにふさわしいあのお優雅な空気はどこへ行ったのですか



動画では見たことありましたが本物のオタ芸を見るのは初めてです。

腕をぐるぐる回してキレッキレの動きは体育会系です。鍛えないとできません。あんなに激しく踊るのを数曲続けてやってますよ。すごい体力です。

これはスポーツと言ってよいのではないでしょうか オリンピックの新種目に名乗りを上げましょう。


 

観客席にはアイドルのコスプレしたお姉さんたちがいっぱいです。 ラブなライブのお姉さんたち アイドルなマスターさんや推しちゃうアイドルさん みんな可愛いです。

なんとほとんどのアイドルさん今回がコスプレ初挑戦 それなのに弾けてます。心から楽しそうですよ。


ペンライトふりふりオタクさんを応援しています。きゃあきゃあ言って盛り上がってますよ。特に自分たちがコスプレしているアイドルの持ち歌になると一緒に歌いながらの応援です。


客席のアイドルに応援されて舞台に立つオタクさん これも良いですね。




この中からカップルさん誕生するかもです。



――――

――――



「しおんちゃぁん 遊びに来たよぉ」


「わぁ しおんちゃんがドレス着てる」「これが世界樹ね 奥の方で光ってるよ 本物・・・じゃないよね」



『cafe不思議のアリス』に学校の友達が来てくれました。

にぎやかになりました。みんなが来てくれるなんて嬉しいです。



「妹がお世話になってます。これからもよろしくね」


アイラさんがお姉さんとして挨拶してくれました。えへへ



「こちらこそ お世話になって・・・ お世話してます」


そこは大人の対応してくださいよぉ もう中学生なんだからさぁ



「しおんちゃん お姉さん居たんだ」「美人でスタイル良くて優しそう・・・ いいなぁ」「男子が知ったら騒ぎそう」


そうでしょ そうでしょ  私の自慢のお姉さんです。 えへん



「褒めてもらえてうれしいわ 手作りクッキーサービスね」


お姉さんと一緒に作った手作りクッキーですよ。ちょっと良いクッキーですからね。



「お勧めのメニューは何があるの」


えっとね シュークリームとドリンクのセットが『アリスちゃんって可愛いよね』って言えば100円だよ。



「何それ 安すぎない」「アリスちゃんって誰」「みんなそれでいいよね」


「「「アリスちゃんって可愛いよね」」」



「ありがとぉ みんなぁ」


注文すると返事してくれるのですね アリス店長 



「えっ 不思議の国のアリスがいるっ」「店長なのっ」「店長さんが可愛い・・・」


可愛い店長さん 大好評ですよ。


バリスタましゅうお兄さんからドリンク受け取って、まみやお姉さんからシュークリーム

ワゴンに乗せてしずしずと

お待たせしました。『可愛いアリスちゃん』セットです。


お優雅に・・・どぞ



「しおんちゃんがお嬢さまみたい」「しおんちゃんじゃないみたい」


むむっ 失礼ですね。



§



「聖女見習いのリリーさんはいますか」


微妙な距離のカップルさんご来店です。これはすでに恋愛成就確定ですね。でもリリーちゃんは聖女さまと一緒に休憩中と言いますか・・・

待ってもらいますか まだ時間かかりますよね。



「聖女姉妹は休憩中でして、魔導士アイラでよろしければお受けしますよ」

アイラさん 対応できるのですか



「魔導士さんですか 実は・・・ その・・・」


リリーちゃんご指名と言うことは恋愛のお祈り目当てですよね。



「大丈夫ですよ お手伝いは出来ると思います」


アイラさんは自信あるのですね。何でもできる完璧お姉さんですから大丈夫でしょう。


まずはご注文のコーヒーとクッキーをお出しします。これは妹のお優雅なお仕事です。 


お優雅に・・・どぞ


ふたりとも緊張しているみたいでテーブルについてからお話もできていませんよ。



「それでは簡単な魔法をお見せしますね」 アイラさん 魔法を使えるのですか 簡単なのですか ハト出しちゃいますか



「ふたりとも手を出してもらえますか そう ふたりで指を絡めて手を握ってください ゆっくりですよ」



まずはお姉さんがテーブルの上に手を出して お兄さんをちらっちらっ


お兄さんはゆっくり手を重ねてそのまま・・・にぎっ  それって恋人つなぎってヤツですよね。お姉さんがとっても嬉しそうですよ。



「もう少し強く握って・・・ はい そのまま相手の顔を見つめてください」


普通にいちゃいちゃしているカップルにしか見えません。これで魔法ってかかるのですか

見つめあってテレテレのお姉さんと固まっているお兄さん すでに甘々ですよ。



「それでは手を離したいと感じた方から離してもらっていいですよ どうぞ」


離しませんね ふたりとも手を離しません。それどころかお兄さん 手を引き寄せてますよ。



『きゃぁぁ』



静かに見守っていた周りのテーブルから黄色い声


お姉さん脚パタパタさせてます。嬉しい気持ちがあふれちゃってますよ。ものすごく可愛いですお姉さん



「相手の気持ちがわかる簡単な魔法でした。いかがでしたか」


魔法です。これは魔法です。私のお姉さんはすごいのです。



「す すてきな魔法でした。ありがとうございます」


ふたりとも真っ赤ですよ。お姉さんがにっこにこです。

アリス店長さんの言う通りきっかけが欲しいカップルが来るのですよね。



あのぉ まだ手をつないだままですよぉ もう離しても良いですからねぇ



§



「なにいまの お姉さん魔法が使えるのっ 一瞬でカップルできちゃったよ」


「ぞくぞくってしちゃった」


お友達がざわざわしてます。目の前でカップルができる瞬間って衝撃だよね。何度見ても驚きですよ。



「何度見てもって そんなに何組もカップルできてるの」


この世界樹の前でリリーちゃんにお祈りしてもらうと恋が叶うって噂がありまして・・・



「リリーちゃんって聖女ちゃんのことだよね。あぁ なんか納得しちゃった。聖女ちゃんなら出来そう」


「それなら今度学校でこっそりお祈りしてもらえば叶うよね」



それがですね。お姉さんの聖女さまが特別な儀式をしたこの世界樹の前でしか効果がないみたいなんですよぉ

それに噂ですからね。ウ・ワ・サですよ。 



「聖女ちゃんのお姉さんが聖女さまって姉妹揃って聖女なの」「お仕事で聖女さましてるってことなのかな」


そうなんですよ。姉妹で聖女さましているんですよ。でもお仕事ではないと思う・・・たぶん



「イベント今日が最終日でしょっ 今日中かぁ」

「今から電話で呼び出して・・・ 来ないかなぁ」



あれっ みんな祈ってもらいたい男子はいるんだ。

ちょっとその辺りくわしくお話聞きたいですよ。誰を電話で呼び出すのですか 同じクラスですか



「聖女ちゃんにお願いしたら何とかなるかな しおんちゃんのお姉さんの魔法も今日中かな」

「来年はっ 来年もやるよね」



私の話・・・聞いてないですね。


気持ちはわかりますけどちょっと必死過ぎます。みんな目がマジですよ。




リリーちゃん 早く帰ってきてぇ 怖いよぉ


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