第52話 成功率100%
「『cafe不思議のアリス』評判良いみたいね」
「おかげさまでいっぱい来てもらえました」
ダリアちゃんとスタッフのお姉さん 美術品展示ブースでさりげなくウワサ話をしています。
「恋が叶うって噂が出てるけどほんとなの」
「はい 先程恋が叶ったお姉さんが喜んでました。世界樹の前で聖女見習いリリーちゃんに祈ってもらうと叶うみたいです」
「聖女見習いでも効果あるんだね」
「聖女さまが正式な儀式で祈りをささげた世界樹の前ですからね。『cafe不思議のアリス』限定なら効果があると言ってました」
「手作りクッキーもおいしいみたいね」
「お菓子作りの名人アイラお姉さんが作りましたからね。ここだけのお話ですけど特別なクッキーが混じってるんです。当たりのクッキーを食べると良いことがあるそうですよ。ないしょのひみつですからね」
「それは良いわね あとで私も行こうかしら」
「ぜひお待ちしてます♪」
絶妙に周りに聞こえるようにさりげないウワサ話をしていますね。さすが情報操作部隊ダリアちゃんです。
でも嘘じゃないんですよ。
§
「リリーちゃんすごいじゃない お祈りで恋を叶えたじゃない」
「恋が叶う瞬間を見られるなんてもうお肌つやつやになりそう」
エリーさんたちもリリーちゃんを絶賛です。
「セイ姉さまが世界樹に祈りをささげたからです。私の祈りは小さなものですよ」
あれからcafeがなんとなくざわついているんですよね。
恋の叶ったお姉さん となりのテーブルからおめでとうって言われて真っ赤になってました。
お会計は飲み物とクッキー二人分で三百円程度を募金箱にお願いします。
・・・ってお兄さん財布の小銭をぜんぶザザァって入れてしまいました。嬉しかったんですよね。
わき腹をお姉さんに肘でつつかれたりしながらお店を出ていく姿はもう何と言いますか
「ありがとうございました。お幸せに♪」エリーさんが追撃をしていました。
――――
午後になると会場全体のお客さまも増えまして、cafeも混雑してきました。
アリス店長さんも大人気 写真を一緒に撮ったりしてます。
「アリスちゃんの撮影料金もらおうか」
エリーさん それはやめておきましょうよ。
そんな中 ちらほらと見られるのが注文をお伺いに行きますと
「聖女見習いのリリーさんがいると聞いてきたのですが・・・」
とカップルさんにこっそり尋ねられるようになりました。
情報操作部隊ダリアちゃんお手柄です。
リリーちゃんが飲み物とクッキーを運んで行って『おふたりの恋が叶いますように』ってお祈りのポーズ
可愛いです。美少女です。絵になるんですよね。
お祈りを受けたカップルさん
「聖女さまにお祈りしてもらったなら叶うよね」「うん 叶ったと思う」
また恋が叶ったりしてしまうのですよ。
「イベント名が『恋する仮面舞踏会』 男女で来る時点で両片思いだからねぇ さらにふたりでウワサの聖女さまに会いに来たなんてもうくっつくきっかけが欲しいだけですよぉ」
冷静に分析するアリス店長さん 言われてみればその通りなのですけどね。
「リリーちゃんの指名料金もらおうか」
エリーさん それはやめておきましょうよ。
その後も何組か恋の花が咲きまして、なんと成功率100%
『恋を叶える可愛い聖女ちゃん』の伝説が生まれました。
――――
――――
休憩時間は発表を見られるのも良いですね。お仕事しながらでも見えますけど客席からは迫力が違います。
舞台ではフラダンスが披露されています。その前にはフラメンコでしたよ。それぞれダンス教室があるそうですが発表の場がなかなか無いそうです。
ここなら何でもありで発表出来ますからね。しかも今年からイベントが二日間になりましたので時間はたっぷりあります。
フラメンコのお姉さんはアンコールを受けて嬉しくて泣いてました。どんな賞をもらった時よりも嬉しかったそうです。フラメンコのアンコールなんて聞いたことないですからね。見ているお客さんもスタッフさんもみんなノリが良いのです。
仮面をつけたことでみんな恥ずかしさが薄くなって自由に発表して、自由に拍手して素敵な発表会です。
客席からは紙テープが飛んでいるんですよ。
「紙テープは演者に当たらないように投げるのよ」
観客席が隣になったおばさまが紙テープをくれたのでチャレンジです。
「投げて伸びきったら素早く引いて邪魔にならないようにするのがコツね」
おばさま 紙テープの達人のようです。言われてみるといっぱい紙テープが飛んでいるのに舞台には残っていないですね。あっちのおばさまからも紙テープがシュッと投げられて・・・床についたと思ったらさっと引き上げられてます。
一度投げられた紙テープは回収されて、後方にいるスタッフさんがハンドドリルみたいなのを使ってくるくるっと巻き上げて出来上がり またおばさまたちの所へ送られています。なんとリユース紙テープです。
紙テープのプロチームっているのですね。初めて見ました。舞台よりも感動しているローズちゃんです。
私も盛り上げるのです。えいぃ ささっと引っ張って・・・ 気持ち良いです。クセになりそう。
いっしょに休憩中のエルシーさん 片手で紙テープふたつ持ってシュッと投げてくるくるっと・・・妙に慣れていませんか
理由を聞けないローズちゃんでした。
――――
楽しいイベント一日目 そろそろ終了です。
「明日は『恋する仮面舞踏会』コスプレデーです。今日とは違う演出がありますのでご期待ください。来てくださいよぉ 来てくれないとお兄さん泣いちゃいますよぉ」
相変わらず面白いスタッフさんです。
「おじちゃん あしたもくるからね」
「お兄さんとお呼びっ」
やっぱり楽しいスタッフさんです。
§
「「「お疲れ様でした」」」
『cafe不思議のアリス』閉店のお時間です。
「本日の売り上げは・・・いっぱいでしたっ」アリス店長さん 数えないのですか
ドンとテーブルに置かれた募金箱 ふたを開けてみると・・・うわっ 一万円札が入ってますよ。
「おそらく『世界樹のしずく』を注文していただいたご夫婦かと思われます」
どこで『世界樹のしずく』のお話を聞きつけたのでしょうか これもらいすぎですよね
「募金にご理解を頂けたと受け取りましょう」優しい人だったんですね。
ちなみにあのお茶の値段っていくらですか
「値段は聞かない方が良いよ 聖女さまは簡単に出したけどなかなか手に入らないお茶だからね」
あかねさん それ本当ですか 私おいしいなって普通に飲んじゃいましたよ。やばたんです。やばたにえんです。
「おいしく飲んでもらえばそれでよいのですよ。あかねは値段の事言っちゃダメ あなただってクッキーの原価いくらなの」
ちょっと良い牛乳とか使ってますからね。それにあかねさんの手作りです。あかねさん料金は高いですよ。
「私の可愛い妹が一生懸命に作ったクッキーだからね 原価高いよ 本当なら売らないでぜんぶ私だけで食べたいくらい」
可愛い妹なんて でへへ
「全部食べたら太りますよぉ」
「アリスさん ここで正論はやめましょうか」
「聖女さまが食べたらもう少しあかねさんみたいにどどぉんと」
「アリスさん その話もやめておきましょうか」
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