第51話 恋が叶うってさ
ひまです。
お優雅なウェイトレスさん出来ません。
ウェイトレスお姉さんたちが優秀過ぎて私たちまでお仕事が回ってこないのです。それにお客さん少ないのです。会場にはそれなりにいるのにcafeに入ってくれないのですよ。
ステージが盛り上がっているからcafeまで来てくれないのでしょうか
さっきはビートルズのコピーバンドおじさまが大好評でした。いまからおばさまバンドの演奏です。ぷりぷりコピーバンドだそうですよ。
誰ですか 『ぷりぷり』
ダイアモンドだねぇ♪ エリーさんはわかるようです。
――――
――――
ひまだよぉ リリーちゃんのいちゃいちゃを見てるの飽きたよぉ
「「いちゃいちゃしてません(ないから)」」
はいはい ナイトくんはきちんと守ってあげてくださいね
アリスてんちょぉ このままじゃお店つぶれちゃいますよ
「サービスが足りませんでしたね。それではエリーさんとエルシーさんにもミニスカメイドになってもらってですね」
「それはいろいろとダメだから」
反対されてしまいました。
「しかたないですねぇ」
§
「みなさま ご来場ありがとうございます。ステージ後方では飲み物をご用意いたしました。売り上げは全額寄付となっております。みなさまのご支援よろしくお願いいたします」
場内アナウンスをお願いしました。アリス店長 アナウンスできるんですね。急に口調が変わりましたよ。
「このあと 世界樹前にて聖女さまの煎茶パフォーマンスが行われます。ぜひご覧ください」
アリス店長完璧じゃないですか 聖女さまのパフォーマンスまで用意してたなんて驚きです。
「セイ姉さま 煎茶パフォーマンスは何を予定されているのですか 私も見たいです」
「何も聞いていないのですが・・・ 煎茶パフォーマンスって・・・ 何をやればよいのですか」
聖女さま 何も聞いていないようです。 アリス店長 あとで怒られますよ。
――――
世界樹前にテーブルで特別ステージを作りました。聖女さまがお茶の教室を行うようです。
おじさま おばさまが集まってくれました。お兄さんお姉さんもいますよ。
「お茶を熱湯で煎れる方が多いですが、良い茶葉ほど出来るだけ温度を下げて入れてみてください。にがみが抑えられてうまみを強く感じることが出ますよ」
「『熱湯玉露』って売ってたお茶は熱湯で良いんじゃないのか」おじさまから質問ですよ
「熱湯玉露と銘打っているものは熱湯で煎れてもかまいません。あれは玉露とは名ばかりで茶葉に後からうまみ成分を加えたものです。付加茶などと呼ばれることもございます。気軽に飲める良さもありますので好みによって使い分けてくださいね」
そんな作り方をしていたのですね。勉強になります。
「抹茶を混ぜることで安い茶葉でもコクやうまみを感じさせるように工夫された製品もございます。悪いことではありませんが、購入の際には違いを確かめたうえでお買い求めください」
なんだか混ぜ物でごまかされたような気がします。私の家では何を使っているのでしょうか アイラさんに出していたお茶が気になります。アイラさんはお茶の違いが分かりそうですからね。
「それでは実際に煎れてみましょうか まず熱湯を用意します。この時ふたをしないで沸騰させると味が丸くなると言われております」
「それは聞いたことがあるわ カルキが飛ぶって」 おばさま 物知りです。
「さて熱湯の状態は98度程度と言われます。一般的な煎茶の適温は80度 玉露になりますと70度以下と言われております。
最適な温度まで湯温を下げるには専用の茶器『湯冷まし』などというものがございます。これですね。
ここにお湯を入れ温度を下げた後、湯呑にお湯を移します。そのあとに茶葉を入れた急須に移せば約80度にまで下げることができます。湯冷ましなどの専用茶器がない場合は複数の湯呑で移し替えれば湯冷ましの代わりになりますよ。一度移し替えれば10度下がると覚えてください」
「意外と面倒ね」
「この『お茶を煎れる』という行為を楽しむのも良いものです。茶匠さんが仕上げたお茶と対話するつもりで楽しんでみてください」
「それも面白いわね」
「興味を持っていただきありがとうございます。今日はせっかくですのでちょっと変わった方法で玉露の温度70度まで下げてみましょう」
聖女さまは細口のケトルを持って湯冷ましを下に置きます。
湯冷ましに向かってお湯を入れながらぐいっと頭よりも高く引き上げました。高い場所から糸のように細く細くお湯が落ちて行きます。
聖女さまは真剣な表情でピクリとも動きません。糸のようなお湯が聖女さまの目の前を流れます。
「「おおお」」
これはきれいです。ローズちゃんから花丸あげちゃいます。
すっと手を下ろすとにっこり笑顔に戻りました。
「細く落とすことで空気を含ませながら一気に温度を下げる技です。あまりご家庭向きではありませんがご参考までに」
拍手です。みんなで拍手です。聖女さまこんな技もできるのですね。
急須から小さなおちょこみたいな湯呑に次々お茶を煎れていきます。ちょっとずつ何度にも分けて順番に
さあ 私たちの出番です。
ワゴンを持ってきていっぱいできたお茶をお優雅に配るのです。
「どうぞ お試しください」 ふふん やればできるローズちゃんです。
「ローズちゃん ドヤ顔出てますよ」 ダリアちゃんのチェックが厳しいです。
聖女さまのお茶 みんなに大好評ですよ。
「よろしければ奥でゆっくりしてください。手作りクッキーもご用意していますよ」
――――
大繁盛です。忙しくなりました。
聖女さまのパフォーマンスでお客様が入り始めたら一気に増えました。初めて見るお店ですから入りにくかったみたいです。
「作戦通りですっ」
アリス店長 作戦を考えてあったのですか エリーさんミニスカ作戦は反対されましたけど
「聖女さまにぶん投げれば何とかなります作戦です」
それって作戦じゃないですよ。
「聖女の魔力は万能だって聞きましたっ なんとかなるんですよぉ」
まあ なんとかなりましたけど
「ローズちゃん お客様ですよ」はーい がんばります。
§
忙しくなってナイトくんも案内係になりました。イケメンナイトくんお姉さま方に好評です。コスプレも似合っていますからね。一緒に写真なんかお願いされてますよ。
「もう デレデレしてっ 年上が良いのかなっ」
ナイトくんを睨んでいる美少女がいます。聖女見習いはお優雅に笑顔ですよ。
「そうですよ ここは正妻の余裕を見せるところです」
「正妻なんて・・・ そんなぁ」くねくね
お姉さんに似てリリーちゃんもちょろいです。エリーさんに遊ばれてますよ。
§
始めはおじさまおばさまが多かったのですが少しずつお兄さんお姉さんも増えてきました。
こちららでもお兄さんとお姉さん 仲良くお茶してます。楽しんでますか
「立派な木だなぁ 本物か」「ちょっと光ってるけど・・・不思議ね」
立派ですよね。きれいですよね。
「cafeのシンボル『恋を叶える世界樹』です。祈ると恋が叶いますよ」 リリーちゃん なんだかドヤ顔になってますよ。
「おふたりの恋が叶いますように」リリーちゃんがお祈りのポーズ ・・・清楚です。可愛いです。
「・・・恋が叶うってさ」「・・・それじゃあ ・・・叶えてよ」
あれ・・・ あれぇぇ
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