第49話 アリスちゃんですよぉ
「少し休めば大丈夫だそうです」
休憩室に様子を見に行ったスタッフの声に本部席にほっとした空気が広がります。
「『聖女の術』の用意で徹夜をしてしまったそうです。そこであれだけの大舞台です。緊張が解けた瞬間に力が抜けてしまったそうで」
「少し脱水症状でしたよ。この湿度も良くなかったみたいです。温度も急激に変えましたし、霧のスクリーンを一瞬で作るアイディアは良かったのですが機械や人への負担が大きすぎました。しかも聖女さまは制御装置を仕込んだ世界樹の目の前ですからね。一番影響が大きかったと思います。この演出方法は封印ですね。あとでお詫びに行きましょう」
「パニックになった妹さんを抱きしめて止めるなんてリズさん流石としか言えませんよ。冷静に見ていたんですね」
「駆け寄ったアイラさん躊躇がなかったなあ スタッフが出遅れたなんて自分でも情けない」
「結局スタッフ誰一人動けなかったですからね 対応したのは全員聖女さまの関係者ですよ」
「誰よりも早く駆けつけて抱きしめて 最後はお姫様抱っこなんて 俺がやってたら王子様だったよなぁ」「聖女さまが・・・ でも彼くらい居るよなぁ」「このイベントでお近づきくらい・・・」
「あんたたちわかってないよね」「空気読めないんだから」「ほんとっ うちの男どもは」
「「「ねぇ」」」
「おっ おう」「なに この女性陣の圧力」
§
「マジックポーションを飲ませていたみたいですけどあれは何だったのですか」
「中身はポカリだそうです。脱水を起こすと予想して用意してあったとか 他にも栄養ドリンクまで用意してありましたよ。本来であればスタッフで用意すべきでしたね」
「あのアリス店長って何者ですか 聖女見習いの子たちを『魔力切れだからポーション飲めば心配ない』って一瞬で安心させましたよ。ポカリも栄養ドリンクもそれっぽい瓶で用意して」
「なによりも『シュークリーム』で不安を全部持っていかれましたね。私たちまで安心させてもらいましたよ」
「話題のシュークリーム 差し入れで頂きましたよ。これ有名店のシュークリームだよね。これを大量に用意できるなんてアリス店長もリズさんみたいにお嬢さまですか」
「確実に言えるのはリズさんと同じ『切れ者』だということだね。可愛らしい仕草も含めて底が見えない」
「考えてもわかることでもないし 魔法のシュークリーム ありがたくいただきましょうか」
――――
――――
「姉さま きちんと最後まで飲んでくださいね。魔力が回復しませんよ」
二本目のマジックポーションは茶色の小瓶
ソファーに座った聖女さまにぴったりと寄り添ってポーションを飲ませるリリーちゃんです。自分で飲めるからと聖女さまが言ってもリリーちゃん離れません。お姉さんにべったりです。
アイラさんもお世話しようとするのですがさせてもらえません。マジックポーションを飲ませる役も取られてしまいました。お世話させてあげないとリリーちゃん泣いちゃいそうですからね。
聖女さまを取られて寂しそうなのでアイラさんには私のお世話をさせてあげましょう。さあ 妹の頭なでなでしても良いですよ。
アイラさん大活躍でした。お姫様抱っこカッコ良かったです。ごほうびに妹がぎゅってしてあげますよ。
「ポーションは少しずつゆっくりゆっくり 全身になじませるように飲ませるのがコツですよぉ」
謎のシュークリームお姉さん マジックポーションに詳しいのですね。
「私が作りましたからねっ ふふん」
「えっ アリスお姉さんが作ったのですか マジックポーションって作れるの」
驚くダリアちゃん 私も驚きですよ。ポーションを作ることができる人って初めて聞きました。リリーちゃんも驚きますよね・・・ お世話に忙しいですね はい
「これからは魔力切れにそなえて『アリスcafe』にも置くようにしましょう」
アリスお姉さんって・・・ もしかして店長さんですか
「そうです。私が『アリスcafe』店長のアリスちゃんですよぉ 明日からは『cafe不思議のアリス』の店長です。ローズちゃんよろしくね」
明日オープンの『cafe不思議のアリス』の店長さん 突然のご対面です。本店は『アリスcafe』と言うのですね。偶然ですがそっくりな名前になってしまいました。てへです。私が決めたんですよ。
本店はどこにあるのですか みんな教えてくれないんです。ローズちゃん可愛そうなんです。
「『アリスcafe』はねぇ 不思議の国にあるんですよぉ」
やっぱり教えてもらえないみたいです。
§
「今日は良いもの見ましたねぇ リリーちゃん お姉さんかっこよかったよね」
「はい アリスお姉さん もっとたくさんの人に『聖女の術』を見てほしかったです。でもないしょのひみつなんですよね・・・」
「リリーさん 聖女はね 人知れず助けてこそ聖女なんですよ。今日みたいなことはもうしませんからね」
聖女さま やってくれないみたいです。かっこよかったのになぁ
「妹が頼んだらやってくれるわよ きっとね」
アイラさんもそう思いますよね。妹には激甘の聖女さまですからね。
§
「聖女さま 本当に大丈夫ですか」
心配そうに声をかけるマスクさん
「もう大丈夫ですよ。少しめまいがしただけです。ご心配をおかけしました」
「ねえさまっ」
立ち上がろうとする聖女さまをぐいっと座らせるリリーちゃん 強いです。
「もう大丈夫 心配し過ぎですよ」「心配させるねえさまが悪いんです」
やっぱり今日のリリーちゃん 強いです。
「あのっ みなさん ありがとうございました。こんなに強く願ってもらえるなんて私 幸せです。どんな結果になっても私は笑っていられそうです」
「悪い結果にならないです。ねえさまが『聖女の術』で願ったのです。ぜったいに大丈夫ですっ」リリーちゃん ちょっと怖いですよ。
「聖女は人の恋心を変えてしまうようなことはしませんよ。リリーさんも騎士くんの心を変えてしまったらいやでしょ」
「はい・・・ でもマスクさんのお願いはかなって欲しいです」
「マスクさん 私たちの祈りは届きましたか 少しでも支えになれたのであれば幸いです」
――――
――――
休憩室から出ると会場の照明は明るくなっていました。スタッフさんがテキパキとお店を作っています。
おしゃれなカウンターも昨日の通り テーブルやいすも出てきました。どこに保管してあったんですか
幻想的だった霧も光の粒もなくなってさわやかです。むわっとしてません。快適です。
見上げると大きな世界樹 儀式が終わっても少しだけ光ってます。
不思議な世界樹の下 不思議な店長さんがいるお店
『cafe不思議のアリス』
明日 オープンです。
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