第45話 伝説にしないで
ついにこの日が来てしまいましたか・・・
今日は金曜日 催しの前日でございます。
そして世界樹へ命を吹き込むセレモニーがございます。
そう私セイ・タカナシが『聖女の術』を使います。
――――
「聖女セイ・タカナシさま 現場入りまぁす」
本日はよろしくお願いいたします
「「「よろしくお願いします」」」
活気がございますね。
もともと演劇関係で舞台には慣れたスタッフさん セレモニーのチーフスタッフさんはプロとして活躍されている人だとお伺いしております。 みなさん生き生きとしております。少々気合が入りすぎているような気もしますね。
観客はほとんど身内のようなセレモニーです。いろいろと試したい演出があるとのこと みなさんの舞台で役に立つのであればと了承しましたが詳細を聞かせていただけません。本番までお楽しみだそうでございます。
不安しかございませんが・・・
§
「魔導士アイラ・ミソノさま 現場入りまぁす」
「本日はサポート役として参加します。よろしくお願いいたします」
「「「よろしくお願いします」」」
待っていましたよ。引っ張り出したのはアイラさんですからね。最後まで責任取ってください。
「責任を取って結婚いたしましょう。まずはお友達からということで」
私たち お友達でさえなかったのですか お嫁さんへの道が遠すぎます。
§
「侯爵令嬢エリザベス・アシュレイさま 現場入りまぁす」
「みなさま ごきげんよう 本日はよろしくお願いいたしますわ」
「「「よろしくお願いします」」」
「さすがリズさま もう役に入っていらっしゃる」
いえいえ あれは普段通りです。
さてリズさん 言い訳を聞かせていただきましょうか どうして私が聖女の術を・・・
「まず衣装合わせの前に足並みだけ揃えさせてください。こちらの資料をどうぞ」
出鼻をくじかれました。スタッフさん わざと狙っていませんか リズさんから何か指示を受けてますよね ねぇ
――――
――――
聖女さまには世界樹前のメインステージで『聖女の術』発動をお願いします。
「メインステージとはどこのことでしょうか」
世界樹前の床の一部分は液晶パネルになっています。その中央に立ってください。セレモニー前は周りと同化するように落ち葉を散らした床を映してあります。中央にほんの少し濃い緑の点を表示しますのでその上に立ってください。特殊効果をいろいろとプログラムしてありますので立ち位置は正確にお願いします。
「特殊効果ですか・・・ 不安しかございませんが」
はい 楽しみにしていてくださいね。
魔導士アイラさまには生演奏の予定でしたが、私たちが未熟でタイミングが合わせられませんでした。そこで今回は打ち込みでお願いさせていただきました。ありがとうございます。その分生歌でお願いします。
「練習してきましたよ。セイさまと一緒に歌で祈りますからね。楽曲は予定通り『シャ・リオン』を使います。聖女さまとは何度も演奏した楽曲です。音は取れますよね」
アイラさまはメインステージ後方左側にある岩の上でお願いします。蓄光でバミッてありますので立ち位置を合わせてください。正面の観葉植物に指向性マイクを仕込んであります。足元の岩がリターンPAです。衣装替えの後音合わせお願いします。
「それでは後ほど音だけでも通しでお願いしますね」
エリザベスさまには 『リズですわ』 ・・・失礼しました。リズさまにはアイラさまとは反対側 メインステージ後方右側 アイラさまの反対側に立ち位置を用意させていただきました。すぐ横に聖女見習いさんやゲストさんが並びますのでフォロー願います。
「お任せください 聖女見習いさん方にはお姉さまの凛々しいお姿を見ていただきましょう。」
「あぅううう」
それでは衣装替えをお願いします。注意事項ですが『すべての電子機器は更衣室ロッカーに入れてください』本番では持ち込みは出来ません
「どうしてですの 聖女の力が影響してしまうのでしょうか」
「リズさん それはないですよ」
演出の都合上 どうしても結露が発生しやすいんです。こちらで使う機器は完全防水してありますが、個人の機器は性能がわからないので壊れるかもしれません。ご協力をお願いします。
「スマホで撮影できませんね。残念です」
恥を残さないで済みます。良いことです。みなさんすべて置いて来てくださいね。特にカメラ関係をっ
――――
お着換え きゃいきゃい
「リズさん 変わりましたね。やはり金髪になると見違えます。アイラさんもショートヘア似合いますよ」
「聖女さまも神聖な儀式に良く似合います。やはり本物は良いですね」
「聖女さまの伝説にはふさわしい舞台と衣装です。さあ参りましょうか」「アイラさんまで・・・」
――――
みなさんお揃いですね。それでは立ち位置に移動お願いします。聖女さまはもう少し後ろ・・・ そうそのあたりで
環境音として小鳥のさえずりを流していますが、小さくカッコウの鳴き声がしたらスタートです。
聖女さまはイントロからAメロの間に立ち位置へ歩いてスタンバってください。短い間奏のあたりからBメロにかぶせるようにゆっくりと『術』を唱えてください。サビと同時に発動の演出が入ります。軽くですが重低音と冷たい風を出しますので驚かないでくださいね。
聖女さまはアドリブで手を広げたりして良い感じにお願いします。
二回目の間奏明けでもう一度演出が入ります。ここも合わせて良い感じにお願いします。リズさまもタイミング合わせお願いいたします。
すべて曲に合わせてプログラムされていますので4分48秒で終わります。アドリブには手動で合わせますから自由にお願いしますよ。それではリハ入ります。
「「「よろしくお願いいたします」」」
§
ありがとうございました。素晴らしかったです。みなさん素敵でしたよ。
今から会場をもう少し蒸し暑くしますので客入れまで休憩室へお願いします。
「見ていて恥ずかしくなかったですか 痛くなかったですか 妹に嫌われませんよね 夢 壊しませんよね」
「聖女さま 立派でしたよ むしろもっと感情を込めましょう。愛する妹さんの夢ですよ。派手に参りましょう」
「主役の恋する乙女も見ているのです。少しでも勇気が出るように本気を出しましょう」
「昨夜は緊張であまり眠れませんでした。少し足元がふらついてしまいます」
「『聖女の術』台本と違ったよね。寝ないでオリジナルを考えたでしょ 本気で想いを込めようと必死になってるでしょ あまり心配させないで」
「そんなときにはシュークリームですよぉ」
「アリスさんっ いつの間に」
「開店準備の重要な時に店長がいないとだめですよねっ」
「・・・本音は」
「『聖なる力よ』ってかっこいいじゃないですか 伝説を見に来たんですよぉ」
「黒時代になりそうですので伝説にしないでくださいませ」
――――
――――
そろそろ ゲストさん入れますよ 対応お願いできますか
「もちろんです」
さあ みんなっ 伝説を作りますよっ
「お願いだから伝説にしないでください 忘れてください お願いします」
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