第44話 いたずらっこ

離れた場所でも何でもないように合奏する聖女さまとアイラさん

きっと何度も何度も練習してきたから出来るんですよね。とっても仲良しなんですよね。


余韻を残すようにバイオリンの音が終わるとスタッフさんから拍手 聖女さまとアイラさん 深々と頭を下げています。

リリーちゃんは胸の前で指を絡ませお祈りのポーズのまま泣きだしそう そして私も泣き出しそうになってます。



アイラさんがメインステージから世界樹へ延びるステージをゆっくりと歩いてきます。


どうしよう 何と声をかければよいのですか 


抱き着いてしまいたい気持ちでいっぱいです。


ステージから降りてきて目の前に・・・ あのっ・・・



「やっと会えたね アイラ・ミソノです。よろしくね」 

いたずらっこの笑顔です。もうお祭りは始まっています。『恋する仮面舞踏会』それなら返す言葉は決まっています。


「聖女見習いのローズです。よろしくお願いいたします」スカートをつまんでお嬢さま挨拶 私が出来る最高のあいさつ


ふたりでクスッと笑ってぎゅっと抱きしめあって・・・幸せです。



リリーちゃんは聖女さまに寄り添うようにして肩を抱きしめてもらっています。


リリーちゃんにもダリアちゃんにも紹介したいです。今だけならいいですよね。初めて紹介できます。親友に紹介したいんです。



―――― ふたりに紹介します。私の自慢のお姉さん あかねさんです。 ――――


「私がしおんちゃんのお姉さんをしている『あかね』です。驚いたかな。今まで言えなくてごめんね」



リリーちゃんもダリアちゃんも驚いています。でも・・・


「しおんちゃん 私たちお姉さんとは小学校の頃から仲良くしてもらっていたの でもしおんちゃんの大好きなあかねさんだって初めて知りました。あかねさん しおんちゃんは私たちの大切な友達です。これからもよろしくお願いします」


「二人ともいいなぁ 私だけお姉さんがいないよぉ」


でもダリアちゃんはカッコいい彼がいるじゃないですか 彼といちゃいちゃしてください。


「いちゃいちゃしてないです。それならお姉さんも彼もいるリリーちゃんが一番ずるいよね 両方といちゃいちゃですよ。 いいなぁ」


「騎士くんとはまだお付き合いしてないから彼じゃないです。いちゃいちゃしてないです」


わぁ あれでいちゃいちゃしてないっていうんだぁ 



「リリーちゃん 今回のイベントは『恋する仮面舞踏会』

当日は仮面をかぶって聖女ちゃんはリリーちゃんになるの 恥ずかしさがちょっとだけなくなるんじゃないかな」


「あかねさんの言う通りですけど・・・」


「無理に前に進めなんて言わないよ でもほんの少しだけ勇気をもらえるイベントになると思うの その少しの勇気が出せなかったのが私と聖女さま 後悔はしないでね」



「あかね・・・ そんなにいじめると泣きますよ。妹には幸せになってもらいたいですが置いて行かれる身にもなってください」

いじめちゃだめですよ。聖女さま泣いちゃいますよ。なでなでしてあげますからね。なでなで



――――


あかねさん・・・ いえ アイラさんもcafeのお手伝いをしてくれるそうです。

クッキーも作っているし大活躍ですよ。アイラさんと一緒にウェイトレスさんです。でへへ


「可愛い聖女見習いが多いお店だからの警備の人が付くから安心してね」

専属で付くのですか 警備員のつくウェイトレスさんって何者ですか


でもアイラさんみたいにえっちなウェイトレスさんは警備が必要かも・・・ 口説かれそうだもん アイラさんの警備は私がしますっ お姉さんは私が守りますっ


「大丈夫よ 私が危ない時には聖女さまの力で守ってくれるわよ 薙刀とか」


「聖女関係ないじゃないですか それに薙刀なんて持ち出しません」


「それなら聖女の力をこぶしに込めて・・・」


「聖女の力を変な使い方しないでください」


「聖女の魔力は万能だって聞いたけど」


「もう聖女の力は関係なくなってますよね それ腕力です」


やっぱり聖女さまとアイラさん仲良しです。リリーちゃんとダリアちゃんがなんだか優しい目で見守ってます。


・・・いつもの事なんですね。



――――



「まだ明日がありますから今日はこのくらいにして帰りますよ」

そうでした。まだ明日は金曜日 学校があります 授業がありますよ 金曜日は英語の授業があるんですよぉ はぁ


「でも学校が終わったらいよいよです」

リリーちゃん きらきらしてますよ。そうでした。明日はリリーちゃんが楽しみにしていた世界樹の仕上げをする日ですね。でも世界樹とっても立派に出来上がっていましたよ。もっと何かするんですか 七夕みたいに短冊付けちゃいますか


「まあ いろいろとね」聖女さま口をにごしますね。あやしいですよ。


「そうです。いろいろなんですよ。いろいろ」リリーちゃんまであやしいですよ。


「私も参加するから楽しみにしていてね」アイラさんも仕上げをするのですかっ 楽しみになってきました。わくわくです。


「ローズちゃん 明日は気持ちを静かにして大人しくしなきゃだめよ 神聖な儀式だからね リリーちゃんとダリアちゃんも・・・ わかってるみたいね」

リリーちゃんとダリアちゃんはもう真剣な顔してます。わくわくなのは私だけですか 子供みたいじゃないですか


「はい 車に乗り込んでください 家まで送らせていただきますよ」


§


お優雅に家に到着です。毎日メイドのお姉さんに送ってもらえたらいいなぁ


「明日は儀式の用意がありますのでお迎えに上がります。お嬢さま方よろしくお願いいたします」

こちらこそ お願いします。謎の圧力を感じますが大丈夫ですよね。


――――

――――


聖女見習いさんたちを送り届けた後の車内 


「しおんちゃんから聞いたよ って言い張ったんだって 本当にメイド服着てくるとは思わなかったけど似合うね」


「楽しいですよ 一緒にいかがですか」


「楽しそうだけどメイドさんが多くなりすぎるから遠慮しておきます。いまは『魔導士アイラ・ミソノ』だからね」



§



「どうしたの 大人しいね お嬢でも緊張してるんだ それとも恥ずかしくなって来たかな」


「恥ずかしさはもう抑え込みました。これだけの人たちが動いて演出してくれるのですから本人だけが恥ずかしがっているわけにはまいりません」


「それなら緊張・・・でもなさそうだね」



「怖くなってまいりました。この催し物に恋の運命をかけている人がいるのです。先程会場でお会いしました。


『世界樹の聖女さま 噂は聞いています。私の恋も見守っていてください』覚悟を決めた目で言の葉を頂きました。


世界樹が見守る舞台に希望を見ていました。聖女という存在に期待している様子も感じました。

もちろん大人ですから本気で『聖女の術』を信じてはいないでしょう。でも願いたくなる気持ちもわかるのです。

その願いを希望を私ごときが受け止めて良いものでしょうか 特別な力もない私は祈ることしかできません。それでも良いのかと怖くなってまいりました」


「お嬢はひとりで背負いすぎ 私も一緒に祈るって言ったでしょ 自己満足かもしれないけれど本気で祈ってあげましょう。 お嬢は言の葉に神が宿ると信じているって言ってたじゃない。それなら『聖女の術』に祈りを乗せることもできると思う」


「そうでしたね。ひとりで弱気になっていました」


「不安なら今夜泊りに行こうか」


「ありがとう でも今夜は私なりに『聖女の術』と向き合ってみようと思います。妹が憧れる聖女になりたいですからね」


「私もあがいてみるよ。憧れの『あかねさん』で居たいからね」

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