第37話 恋の魔法が使えたら

クッキー作り in あかねさんのお部屋


あかねさんとふたりきりでいちゃいちゃクッキング♪


・・・のはずだったのに


まぜまぜ まぜまぜ ひたすら まぜまぜ



――――


「ローズちゃん 卵割れるかな」

任せてください。出来ますよ。『うぁん 殻がちょっと入っちゃったぁ てへ』なんてしませんよ。


「それじゃあ ここに入れてね。割った殻はこっち側」


まずは慎重に行きましょう。

コンコン かさっ ぱかっ


上手じゃないですか さあ次行きましょう。


「上手じゃない その調子でお願いね」


そうでしょう そうでしょう ローズちゃんやればできる子なんです。


コンコン かさっ ぱかっ


コンコン かさっ ぱかっ


コンコン かさっ ぱかっ あっ ちょっとだけ殻が入っちゃいました てへ


――――


まぜまぜ まぜまぜ ひたすら まぜまぜ


あかねさんはココアも入れてまぜまぜ 抹茶の登場はもう少し後です。


「大変でしょ お菓子作るのって」

こんなにたくさん作ると疲れちゃいますよ


「でもね 食べてくれる人がいるんだよ きっと『おいしいね』って言ってくれるんだよ おいしいお菓子を食べてるときはみんな笑っているの 笑顔にする魔法だよ」


このクッキー食べた人が笑顔になるって考えるともっと作りたくなります。



「それにクッキーは手作りの中でも定番のお菓子 女の子が初めて作るお菓子がクッキーかな」


私もあかねさんと一緒に作ったのが初めてでした。あかねさんが初めてです。でへへへ



「手作りお菓子を作るのは食べてもらいたい人がいるからね 好きな人に喜んでもらうために初めて挑戦するクッキー なんて考えると素敵でしょ」


私も大好きなあかねさんに食べてもらえました。うれしかったなぁ


「恋をかなえるための特別なお菓子 今度のイベントにはぴったりでしょ」


そうです。『恋する仮面舞踏会』です。ぴったりじゃないですか さすがあかねさんです。あかねさんは恋の魔法も使えるんですね。


「・・・恋の魔法かぁ 使えたら彼ができるかな」


やっぱり使っちゃダメです。



――――


出来ましたぁ 生地が・・・ まだ先は長いです。


「ラップをかけて冷蔵庫で寝かせるよ お疲れ様 休憩しようね・・・って もうお昼ね」


おなかぺコリーヌです。お昼のご飯はどうしよう。クッキーしか作っていませんよ。しかもまだ生地です。


「大丈夫 そろそろくるはずなんだけどな」


宅配のピザ頼んだんですか



§



「お待たせしました。ランチの時間ですよ」

メイドさんが持ってきて・・・ 違いました。聖女さまっ 聖女さまが宅配ですかっ



「待ってたよ おなかぺコリーヌさんもお待ちです」


「さあ ランチにしましょうね」


大きなカバンを持った聖女さま そのままキッチンに来てお皿を次々に出していきます。慣れていますね。

まず盛り付けたのはサンドウィッチ サラダまでありますよ。


保温容器からはシチュー ピクルスも出てきました。 魔法のカバンです。

フルーツヨーグルトも出てきましたよ。


あかねさんといっしょにテーブルまで運んで並べて準備完了


座る席はもちろんあかねさんの隣ですよ 


いっただきまぁす


シチューおいしいです。


「はい ローズちゃん サンドウィッチどうぞ」

これは幻のいちゃいちゃ『あ~ん』ではないでしょうか 嬉しいけど聖女さま見てますよ。


でも・・・ ぱくっ 恥ずかしいけどおいしいよぉ 聖女さまもニコニコですよぉ


「今度はあかね はい」 聖女さまがあかねさんにサンドウィッチを差し出します。

あかねさんは迷うことなく ぱくっ ニコニコしています。

聖女さま 対抗してきましたね。


あれ 聖女さま あかねさんを呼び捨てですよ。なかよしです。

こうなったら私も・・・


聖女さま はいどうぞ ぱくっ 迷わずに食べてくれました。

あかねさんのことで争わないって二人で決めましたからね。あかねさんのお友達とはみんな仲良くするのです。



「ふたりともいつの間にか仲がいいんだねぇ ローズちゃんは取っちゃだめよ 私のだから」


『私の』って言いましたよね。 あかねさんが『私の可愛くてお優雅なローズちゃん』って言いましたよね。

私はあかねさんの特別な妹です。聖女さまの妹にはリリーちゃんがいますから大丈夫です。


「取らないですよ。でもローズさんは優しいわね。私にやきもち妬かないもの それとも愛されてる自信かしら」

愛されてます。えへへ



――――



「さあ 焼き始めましょう。焼き方は覚えてるかな」


はい『ひゃっくなっなじゅうどで じゅうななふん♪』です。



「ローズさんにあの歌で教えたのですか 楽しく覚えるには良いですけど最初はきちんと教えないとだめですからね」


「ローズちゃんには教えてないけどね あの時はしおんちゃんに教えただけですよぉ」


「言い訳しないのっ」


あかねさん 怒られてます。 でもなかよしです。



「今回は全部ハート型にするからね だから全部型抜きします」


聖女さまもお手伝い 台の上でぐいっと伸ばして棒でころころ広げます。

この台って上が石でできてますよ。


「お菓子作りのために天板は大理石にしたの 便利でしょ」

あかねさん お菓子を作る情熱がすごいです。


生地が上手に広がらないです。デコボコです。力が入らないです。


「そこは力を使うからね」


でも聖女さまの生地はとってもきれいに広がってますよ。


「聖女さまはすっごく強いんだよ 異世界では薙刀で魔物を倒す聖女さまなんだよ」


「変なお話を作らないでください か弱い女の子ですよ」


なんだか強いみたいです。



「ローズちゃんには型抜きしてもらおうかな 聖女さまの広げた生地でどんどん作りましょう」

それなら出来そうです。魔物は倒せないけど型抜きは出来ます。


「私のイメージが崩れて行くのですが・・・」


――――


ハートがいっぱいできました。順番に並べてオーブンへ それっ ぱたん


『ひゃっくなっなじゅうどで じゅうななふん♪』



出来上がったら次のクッキー じゅうななふん♪


どんどん出来て行きます。これは楽しいです。



あかねさんが焼く前の生地に何かしてます。ハンコみたいなのをぎゅって・・・ あっ ハートの生地に小さなハートの模様です。でもちょっとしか押さないのですね。


「これはね 当たりのクッキー」

当たり入りなんですね。当たると何かあるんですか


「当たると・・・ ちょっと嬉しくなります」

確かにちょっと嬉しくなります。何か良いことありそうな気分になります。


「ハートを見つけたら『恋が叶う』なんてどうでしょうか」

すっごく良いと思います。聖女さま名案です。



「それじゃあ 当たりのクッキーに聖女の『やりませんからね』」

何をやらないんですか


「ローズさんは良い子だから知らなくても良いのですよ。知らないままでいましょうね」


「そのうち誤魔化せなくなるからね 聖女さま♪」


あかねさんが悪い笑顔しています。なんだろう ないしょのひみつでしょうか

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