第35話 わっしょい

金曜日の放課後 今週のお勉強タイムは終わりました。


ねぇ ねぇ 明日は約束したデートの日だよっ


 ざわっ


しかも今回はお泊りですっ


 ざわわっ



「ローズちゃん みんなが混乱するから静かにしようね」


「声大きいよ みんな見てるよ」


だって だって 明日お迎えに来てくれるって わぁぁ リリーちゃん引っ張らないで



――――


いつもの図書準備室に連行されてしまいました。


「あかねさんのことないしょにするって言ってたのローズちゃんでしょ」


あかねさんに迷惑がかかるかもしれないですからね。ないしょのひみつの関係です。大人の関係です。でへへへ



「大きな声でデートなんて言ったらバレちゃうでしょ」


そうですけど そうですけど 自慢したいじゃないですか お泊りデートですよ。



「今日は聞き違いではごまかせないですよ お泊りって言っちゃったし」


どうしよう あかねさんに迷惑かかったらどうしよう 怒られますよね 嫌われちゃいますよね 婚約破棄されちゃいますよね


「婚約はしてないでしょ」


「『私の家でお泊り会なのを嬉しくてお泊りデートって自慢しちゃった』ってどうでしょうか」


そうしましょう それで行きましょう って言ってもどうしたら・・・


「情報操作部隊出動っ」


「ラジャー」 とてとてとて


ダリアちゃん 情報操作部隊だったのですね。初耳です。



§


「あっ トテちゃん戻ってきた」


「ねえ ねえ しおんちゃんがデートって言ってたよね トテちゃんは相手が誰だか知ってるの」


『知ってるよ 聖女ちゃんとデートだもん』



「聖女ちゃんってもう相手が決まってるじゃない もしかして浮気っ」


『そうじゃなくって聖女ちゃんのところでクッキー作りのお手伝いするらしいの それがデート』



「でもお泊りって言ってたよ。クッキー作るのそんなに時間かからないでしょ」


『今度のイベントで使うクッキーだからいっぱい作るの だからお泊りになるみたい』


「なんだぁ しおんちゃんの恋愛大スクープだと思ったのに」


「イベントってバンドとか集まってるヤツだよね 『うまぴょいフェスティバル』来週の土日だっけ」


「うちのお母さんも絵を出品するって言ってよ でも今年から名前がうまぴょいじゃないみたい」



『そこでcafeのお手伝いするんだぁ 聖女ちゃんもお手伝いするよ お姉さんと一緒にね』


「聖女ちゃんのお姉さん見てみたい 聖女ちゃんのお姉さんなら美人だよね」←先に謝っておきます。ご期待に沿えず申し訳ございません。by お姉さん


「俺も行くっ 聖女ちゃんに『いらっしゃいませ』って言ってもらえるよな ミニスカのメイドさんかな」


『妹大好きなお姉さんが見張ってるよ。それに騎士くんが護衛で付くけど』


「やべぇ 隙が無い」



――――



「あかねさんの所にはcafeで出すクッキー作りに行くんでしょ どうしてお泊りになったのかな」


司書さん よくぞ聞いてくれました。クッキーをたくさん焼くから時間がかかるのです。夜遅くなるから泊っていきなさいねって・・・ そしていちゃいちゃするのです。


「ローズちゃんが暴走して勝手にお泊りにしたんでしょ お泊りじゃなきゃいやだってお母さんに泣きついたでしょ あかねさんから全部聞いたわよ」


こんな時じゃないとお泊りできないって思ったんです。ちゃんとお手伝いするから許してください。 


「あかねさんは喜んでいるから問題ないと思うけど中学生なんだから節度は守ってね あかねさんを襲っちゃだめよ」


私が襲うわけないですよ たぶん・・・ でもちょっとだけいちゃいちゃしたいです。ちょっとだけ



「あかねさんのクッキーにはかなり期待しているからね ちゃんと手伝いなさい あの味なら天下取れるわ」


天下取っちゃうんですか 天下統一して髪型ちょんまげにするんですか 司書さんだけにしてくださいね ちょんまげ


「あかねさんのお手伝い聖女さまに変わってもらおうかな」


私じゃないとだめなんです。あかねさんが泣いちゃいますよ。ローズちゃんが来ないよぉって泣いちゃいますよ。


「はい はい あかねさんが泣いちゃうなら仕方ないわね ローズちゃんにお願いします」


やりました 司書さん先生のお墨付きです。



――――



「情報操作部隊 任務完了です。ついでにイベントの宣伝もしておきました」


ダリアちゃん有能です。なでなでしてあげますね。なでなで



「ご苦労様 ちょうど三人揃ったなら来週の話をしておきましょう。会場の設営は火曜日からスタート 木曜日の午前中にはお店が出来上がっているはずよ」


そんなに短い間に出来ちゃうものなんですか


「リズさんが本気を出したからねぇ」


わぁ お金の力だぁ


「お金だけじゃ人は動かないわよ リズさんがみんなをやる気にさせたの それに地域の人たちにお祭り大好きが多くてね 企画設計から手伝ってくれているけど慣れているというよりもほとんどプロ集団よ」 


お祭りのプロってなんですか わっしょい


「それに実行委員会の人たちが優秀だからかな 人材の宝庫だってリズさんが褒めてたわ 実際今まで自力で拡大してきたところを見ても優秀だからね」


実行委員会さんもプロなんですね わっしょい


「ローズちゃんたちが入れるのは木曜日の夕方だね 実際のお店で少しリハーサルをしましょう」


ここで私のお優雅な成果を見せる時ですね。お優雅にわっしょいでございます。



「細かいところは私たちがやっておくから当日の朝に来てもらえればよいかな 聖女さまが送迎もしてくれるそうだよ 更衣室も用意してあるから現地で着替えだね」


それまでにおいしいクッキーをいっぱい作りますね。あかねさんと共同作業です。でへへへ


――――


「あの・・・ セイ姉さまが最後の仕上げをするのはいつでしょうか 出来れば立ち会いたいのですが」


そうでした。リリーちゃん楽しみにしていたよね。私も見てみたいです。



「まだ細かくは決まっていないけど金曜日の夜に予定されてるよ。あとは聖女さまの都合かな」


「セイ姉さまが祈りをささげるのですよね。私たちも聖女見習いとして正装していった方がよろしいですよね」


「リリーちゃんたちが行ったらきっと喜ぶよ。それにね 聖女さまだけじゃなくてアイラさんとリズさんも参加するみたい かなり大掛かりになるよ」


仕上げって世界樹に祈る儀式をするんですよね。そんな盛大なんですか。恋が上手くいきますようにだよね。


「私も見たことはないからね。何とも言えないよ。祈りというよりもリズさんは『術』って言ってたかな」



「「術っ」」


どうしたの ふたりとも 

おぉい リリーちゃん 泣いちゃだめだよぉ なでなでしてあげるからね。


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