第34話 聖女さま ちょろいです

無敵のお嬢さま リズ先輩の声が大きく反映された会場設営


間に合うのでしょうか・・・ と心配していた時期もございました。



――――


早朝より設営に参加する方々が集まり作業前の打合せ みなさんヘルメットが良くお似合いです。


「それでは怪我の無いよう安全作業に心がけてください」


「「「安全作業で行こう ヨシ」」」



あの・・・ 有志の方々ですよね・・・



――――



午後になり差し入れを持って様子を伺いに来たのですが大きなものはほとんど完成しておりました。


なぜか加工済みのパネルや柱が大量に運び込まれて数時間で組みあがったランウェイ型の舞台 今は安全性の検査が行われております。

展示ブースはいち早く完成しておりました。すでに数点展示されております。スタッフさんの出品だそうです。


今朝お伺いしたときは普通の講堂だったはずですが・・・ 唖然とします。



私たちが担当するcafeも見事に出来上がっておりました。世界樹も立派な姿を見せております。

帯状の布などを組み合わせて天井から吊るしています。枝葉を伸ばしているように見えるのは驚きです。


世界樹を背にしてお店の中心となるカウンター 観葉植物が各所に配置されて森のようになっています。

小鳥のさえずりまで聞こえますよ いろいろと仕掛けてあるようです。

これはリリーさんたちも喜びますね。



――――

――――

――――


竹刀の音が響く武道場



「ちょっと騎士くん 頼みごとがあるんだが」


「何でしょう先輩」


「今週末にイベントがあるのは知ってるよな」


「はい 大きなイベントになるみたいです」


「うちの学校からも何人か参加するみたいだが・・・ まあ知っているよな」


「はい・・・ 知っています」


「そこでだ 参加する生徒の専属警備をして欲しいと依頼があってな 頼まれてくれないか」 


「もちろん先輩の頼みとあれば何でもしますよ」


「助かるよ 騎士くんしか頼めなくてな」


「俺ひとりですか」


「騎士くんしか出来ないんだよ 詳しいことは紙に書いてあるから読んでくれ 警備用の制服も用意してあるそうだ」


「制服があるんですか」


「まあ しっかりといちゃついて来てくれ 頼んだぞ」


「いちゃ・・・っ 先輩っ何を・・・ はい 頑張ります」



§



「司書先生 話をしておきましたって・・・ 聞いてましたよね」


「ご苦労様 良い感じだったよ。ありがとう 良い生徒をもって幸せだよ あははは」


「あまりいじめないでくださいよ」


「騎士くんの夢をかなえてあげるんだからね 優しい先生でしょ 良い先生でしょ ね ね」



――――

――――


実行委員会 in イベント会場



「すごいことになっちゃってますけど何ですかこれ」


「何ですかはないだろ 資料の通り立派に出来ているじゃないか」


「そうですけどね こんな予定じゃなかったというか 大きくなりすぎたっていうか」



「恋の応援をするのにここまでするんですね。リズさん素敵です。ただのお嬢さまじゃないですよ」


「来年から実行委員会だけでこんなことできないぞ 『去年はすごかったのに今年は・・・』 なんて言われると思うとなぁ」


「いや それがな リズさん来年も面倒見てくれるってよ」



「恋の応援イベント 今年限定じゃないんですか かなりの費用負担してもらっていますよ」


「リズさんにメリットなさすぎませんか 大丈夫かな」


「お前らがここまでイベントを企画運営してきたその実力を認めていただいたんだぞ 優秀な人材は育成するべきだってさ 能力がある人材は企業としていくらでも欲しいとまで言ってくださっている。 この意味 わかるよな」


「委員長 イベント絶対に成功させましょう」


「リズお姉さま 結婚してくださいっ」 「おい 複雑になるからやめてくれ」 



――――

――――


技術スタッフさん with リズさん  『cafe不思議のアリス』予定地にて 



「想像以上に素晴らしいcafeが出来上がりましたね」


「世界樹の存在感がすごいんですけど」


「しかし世界樹と呼ぶわけにはまいりません。素晴らしいですが今は何も宿っていない木のオブジェにしかすぎませんから」


「そこでセレモニーをするんですよね。世界樹の聖女さまが祈りをささげるとはなかなかファンタジーじゃないですか」


「彼女が祈ると何かが起こるのです。今までも恋する乙女を助けてきた実績があります。任せてよいと思いますよ」


「リズさんがそこまで言うのなら本物なんでしょう。楽しみです」


「祈りを見届けましょう。今回はイベントのためもありますので『ほんの少しだけ演出』はしますけど・・・ よろしくお願いしますね」


「任せてください 俺も聖女さまのアニメ三周しましたからイメージ出来上がってます。奇跡のシーンだけなら十周はしましたからね。『聖女の術』発動の瞬間 再現して見せます」


「私たちのラボにとっては最高の技術発表の場になります。驚かせますよ」


「人を笑顔にするための技術は良いですね。これからも支援させていただきます」



――――

――――


あかねさん with リズさん


「世界樹の件 視覚的な演出は期待できそうです。開発中の物まで使っていただけるそうですよ」


「これは期待してしまいますね。ローズちゃんの驚く顔が楽しみです」


「妹を溺愛していると聞きましたよ。茶菓子のクッキーも一緒に作ったそうですね。しかもお泊りもされたそうで・・・ 自慢話が聞こえてまいりましたよ」


「聖女さまが妹を溺愛する気持ちがわかってきました。今回の『聖女の術』を見たらお姉さん尊敬されますよ。今でも聖女として崇めていますからね」


「そこであかねさんにお願いなんですが良い雰囲気になるような楽曲を演奏してもらえないでしょうか アニメの楽曲を流してみたのですがしっくりとこないのです」


「それなら心当たりがございます。聖女さまも気に入るかと」


「長年のお付き合いがあるからこそですね。お任せいたします。あとは聖女さまの説得ですね」


「一押しすれば大丈夫かと感じております。彼女は妹に恥じない姉であるために本気で『聖女』であろうと努力しております。今回は良い機会になるでしょう」


「本気の聖女さま 楽しみにいたしましょう」



――――

――――



「・・・というわけで世界樹に命を吹き込む『聖女の術』をお願いね♪」


「『お願いね♪』じゃないですよ。リズさんと結託しましたね。やりませんから」


「妹たちにはもう声かけてきちゃったよ。楽しみにしてますよ。セイ姉さまの聖女姿」


「すっごく恥ずかしいんですよっ 絶対に痛い人って思われてますよ」


「イベント前日だから一般客はいないし一部スタッフとコスプレに理解ある人しか居ないんだよ。こんな機会滅多にないよ。妹があんなに憧れている聖女さまを見せてあげられるんだよ。喜ぶだろうなぁ 感動するだろうなぁ お姉さま大好きって抱き着いちゃうよねぇ」


「・・・大好きって言ってくれるかな 尊敬してもらえるかな」


「恋を応援する為に本気を出す聖女さまだよ 乙女なら感動するでしょ 大好きでしょ」



「・・・今回だけですよ こんなサービス滅多にしないんだからねっ」


「ありがとぉ 受けてくれると思ったよぉ きっと喜ぶよ 新しく衣装も用意したから期待してね 術のセリフも考えてあるからっ はい これ」



「はいって・・・ 何これ・・・ 恥ずかしい 恥ずかしい 恥ずかしい 無理 無理 むりぃ 今までの聖女の術こんなに恥ずかしくないっ」


「私がそばで歌って雰囲気作るから 一緒だったら恥ずかしくないよ ねっ」


「笑わないでよっ 笑ったら泣くからねっ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る