第31話 お嬢さまのわがまま


「最初は『うまぴょいフェスティバル』みたいな名前だったんだよ。それが今回は『恋する仮面舞踏会』ちょっと驚きだね」

司書さんの説明に驚きです。でもイベントの名前変えてしまったのは司書さんの圧力ですよね。


「私は提案しただけだからね。イベントの名前までは言ってないよ」

司書さん陰の実力者と見ました。裏ボスと呼ばせてもらいましょう。


§


最初は地元の高校生さんがバンド演奏するイベントから始まりました。


 ―― 趣味でバンドを作っても発表できる舞台がない

 ―― ダンスを練習していても見てくれる人がいない

 ―― 油絵を描けるのに 

 ―― 可愛い絵が描けるのに


『発表する場が欲しい 頑張った結果を自分の目で確かめたい』


意外と発表の場がないのですね。


バンドの発表だけのイベントから始まって少しづつ大きくなったイベント 


司書さん初期段階からのスタッフさんでした。


お客さんが増えてきて、舞台用の観客席以外にも休憩できる場所を作りました。

無料でお茶を飲めるようにもしました。


そして今回本格的にお茶を提供できるようにcafeを開くことになったんです。

司書さん こんなこともしていたのですね。さすが裏ボスです。



――――



当日の説明会 in 図書準備室


「これが会場の見取り図で・・・」


体育館みたいな建物がメイン会場 前の方にある舞台で発表会するみたいです。


「このあたりが作品展示ブース・・・」


展示用の壁と机をたくさん置いて作品を並べるそうです。



「私たちのお店は一番後ろ」


空いている場所がお店になるんですね。


「小さな部屋があって水道が使えるところがあるの そこがお店の中心になる予定」


cafeですからね。お水を使えないとだめですね。



「・・・のはずだったんだけど どこかのお嬢さまがわがままを言い出しまして会場は大幅に見直しになりました」


どこのお嬢さまですか こんな発表会の関係者にお嬢さまがいるわけ・・・ いましたね。



「セイ姉さまはわがままなんて言わないと思いますけど・・・ それに今から変更なんて大変ですよね」

そうですよ。作り直す時間ってあるんですか 実行委員会の人泣いちゃいますよ。お嬢さま 悪い人って言われちゃいますよ。


「それがね。イベントの企画運営に強い人たちが派遣されてね。舞台や展示スペースを全部作ってくれちゃうの」


うわぁ お金の力だぁ

こうなると実行委員会の人たち役目を取られちゃって怒ってませんか



「実行委員会は企画に集中できるってノリノリなのよ」

ノリノリって・・・ 


「実行委員会もスポンサーが付いたことで主催が『presented by 恋するプロジェクト』に変わったからね。企画のプロと一緒に打合せすると良い案が次々出てきて、さらに企画を当日までに実現できる設営の人たちまでいるんだよ。実行委員会の人も燃えるでしょこれ」



「上手くいっているのならよかったです。悪いお嬢さまはいないんだね。ざまぁはないんだね」

ダリアちゃん ラノベな展開はないですよ。悪役令嬢は転生していません。


「悪いお嬢さまなんていないよ。聖女さまもかかわっているけど一番はリズさんだね。費用のほとんどはリズさんの出資 おかげで私たちのcafeも豪華になるよ」

リズさんってお嬢さまなんだね。でもどうしてそんな費用を出してくれるのですか


「『乙女の憧れ』ってヤツかな このイベントにはね ある女性の恋の行方がかかっているの リズさんは恋する乙女の味方だからね」

えっ イベントで告白しちゃうパターンですか


「ちょっと違うけど似たようなものかな 応援してあげましょうね リズさんの願いはこれからも『このイベントで素敵な恋が生まれますように』だそうよ」

これからもってリズさん来年も費用を出すのですか


「スポンサー契約したみたいよ。リズさんにもメリットあるんじゃないかしら」

うわぁ 大人の事情だぁ でもすごい人なんですね。リズさんって



「私たちが出来るのはコスプレとcafeでイベントを盛り上げる事 『乙女の憧れ』をかなえるのよっ」



「私たち聖女見習いでも出来ることがありそうですね。恋のお手伝いができるなんて嬉しいです」

そうでした。リリーちゃんの言う通り私たちは聖女見習いですからね。


「イベントの前に世界樹の加護をもらいに行くのです です」

ダリアちゃん 燃えてます。でも世界樹の加護ってどうやったらもらえるの


「世界樹に祈るんですよ この恋がかないますようにって」

世界樹って聖女さまのところにあるおっきな木のことだよね



「それならちょうどよかったよ。リズさんの提案で世界樹さんに会場まで出張してもらうからね」

世界樹さんに出張してもらえるんですか あの 意味が・・・



「まずはこれを見て 変更後のお店のイメージ図だよ」

イメージ図があるんだ・・・ わぁ 設計図まである。これプロのお仕事ですよね。



「森になってます。世界樹もあります。こんなお店を作れるのですか」

リリーちゃん 目がキラキラです。


「こんな森の中をドレスで歩くなんて素敵です です」



でもね すっごく素敵だと思うけど作り物の世界樹は特別な力ってないと思う。

本物を持ってくるなんて出来ませんよね。



「それがね リズさんが言うには最後の仕上げを『世界樹の聖女さま』にお願いすれば大丈夫だって」


何と言ってお願いすればよいのですか 優しそうな人だから断られないと思うけど



「『恋する乙女に聖女の力を貸してあげてください』ってお願いすれば仕上げをしてくれるみたいだよ」



リリーちゃん 口を手で押さえて何か感動していますね。今の感動するところでしたか

どういうことですか ダリアちゃん


「内緒だと思うから詳しく言えないんだけど、聖女さまが正式に特別な力を使うところを見られるから嬉しいんだと思う。 リリーちゃんの憧れだからね」


「憧れなんです。本当に特別なんです。私が初めて見たときの感動は今も忘れられません。これが聖女さまなんだって・・・ 思い出すだけで涙が出てしまいます」


リリーちゃん本当に泣いてます。そんなにすごいことなんだ 楽しみになって来ました。すっごく楽しみです。



「でも皆さんの前でやっていただけるのでしょうか 聖女見習いとしてあの奇跡にもう一度立ち会いたいです」


奇跡とまで言っちゃうの ちょっと想像できないよ なんだか話が大きいよぉ



――――

――――



「どうしたのですか 聖女セイ・タカナシさま」


「何か嫌な予感がするのです。今度の催し物で何かありそうで不安になってまいりました」


「アイラさんは何か不安を感じますか」


「いえ 不安というより楽しみな気持ちが強いですね。リズさんが尽力されていると聞いております」


「わたくしの出来ることは限られております。肝心な仕上げは聖女セイ・タカナシさまに頼ることになりますから」


「聖女さまに任せれば間違いないかと存じます」



「えっ 私は何も聞いていないのですが何か・・・」



「「楽しみでございますね。ふふふ」」

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