第32話 おかえりなさいませ ご主人さま

お嬢さまの素敵なわがままでお店におっきな木を作ることになりました。


世界樹のあるお店『cafe不思議のアリス』です。



「素敵なお店を作ってもらうのだから接客もきちんとしないとね」


そうです。私たちもスタッフなんです。ウェイトレスさんです。

しかもドレスを着たな聖女見習いですよ。


「・・・な聖女見習いね」

どうしたのですか ダリアちゃん


「何でもないです。練習しないとね」

練習あるのみです。



「飲み物はコーヒーと紅茶と緑茶 お菓子はクッキーにします」

本格的です。


「しかも今回は有料になります。売上金は全額寄付金になるからね。頑張って販売しましょう」

全額寄付金になるのですか それなら有料になっても納得してもらえますね。

でもお茶やクッキーを用意するお金はどうするのですか


「cafeの本店から無料提供してもらえることになりました。だから心配いりません」

そういえば今回のお店は臨時出店でした。本店ってどこにあるのですか


「それが私も知らないのよ。今回も紹介で店長さんにお願いできたけどお店には行ったことないから・・・ ネットで調べてもないんだよねぇ でも常連さんはいるんだよ」

常連さんって誰ですか


「聖女さまも常連みたいだよ。アイラさんもリズさんも常連だって言っていたし意外と多いのよね」

隠れ家的なお店ってことですね。それとも会員制のcafeでしょうか


「アリスお姉さんが店長さんならきっとないしょのお店だと思う」

ダリアちゃんは何か知っているみたいですね。


「何となくだよ。何となくないしょかなって」


聖女さまのまわりはないしょのひみつばかりです。



――――



今日からウェイトレスさんの練習が始まりました。



「いらっしゃいませ ご主人さま」

ダリアちゃん それはちょっと違うと思うよ。


「そうですよ。『おかえりなさいませ ご主人さま』ですからね」

そういう意味じゃないんですよ。リリーちゃんも何か勘違いしていませんか お店の種類が違いますよ。可愛いけど



話し合いの結果 みんなお嬢さま挨拶に決まりました。スカートのすそをくいっってする挨拶です。


「『不思議のアリス』へようこそ」


うんうん 良い感じです。ドレスがとっても似合いそうです。


「三人ともカーテシが上手だね。とっても自然だよ」

お優雅な聖女見習いのために練習しましたからね。



お店の入り口を一か所にして手の空いている人が順番にお迎えします。

テーブルまでご案内して、メニューを渡しまして


「『不思議のアリス』へようこそ こちらがメニューです。お決まりになりましたらお呼びください」


完ぺきではないですか しかも可愛いですよ。



「呼ばれたら注文を聞いてカウンターに向かって大きな声で『レイコー おねがいしゃす』」

司書さん それは違いますよね。 それにレイコーってなんですか


「(レイコー通じないんだ・・・)あはは ちょっとした冗談よ。イベント用に注文専用の端末を用意してあるからね。注文はカウンターに表示されるからスタッフがすぐに用意します」

専用の端末ってそんなに簡単に作れるんですかっ


「あかねさんにお願いしたら作ってくれたよ。ましろさんとふたりで作ったからもう出来たって」

さすが私のあかねさんです。あかねさんは何でも出来るんです。すごいのです。


「どうしてローズちゃんがドヤ顔するのですか」

妹としてドヤ顔代理です。ましろさんの分もドヤっ


「ましろさんもシステム作る人なんですね。聖女チームですし会ってみたいです」

あかねさんとシステムを作る人なんてどんな人だろう。イベントの時には会えるかな


「そっかぁ ましろさんには誰も会っていないのだったね。私だけかぁ ドヤ」

司書さんのドヤ顔 何となく悔しいです。


私も会ってないけど連絡は出来ますよぉ 同じ聖女チームですよぉ


「ローズちゃん 対抗してないで練習しますよ」


はぁい



――――



注文をするとお茶入れスタッフさんが用意をしてくれます。

私たちはトレーにのせてテーブルへ・・・ 意外と重いですよ。大丈夫でしょうか 落としそうです。


「大丈夫よ 運ぶのはワゴンに載せるからね。そっと押していくだけで運べるから安心して」

お茶会の時に聖女さまが使ってました。あれならお優雅に運べます。


「床は全部平らだから運びやすいとは思うけどお出しするときに割らないように注意してね」

紙コップじゃないんですか


「お茶の味が落ちるから紙コップはダメって 店長のこだわりです」

本店はかなりこだわりのお店なんですね。臨時でも手を抜かないなんて素敵だと思います。


「細かいところまで本格的なんですね。ゴミが少なくなって良いと思いますが洗う手間は大丈夫でしょうか。スタッフさん大変ですよ」


「それは覚悟してるわ。でも店長の言うことはもっともだからね。お客さんとしては素敵なカップで出てくれば嬉しくなるもの」


だんだん臨時のお店とは思えなくなってきました。



――――

――――


ただいまぁ 今日は疲れたけど楽しかったなぁ


あっ この靴はっ あかねさぁん ただいまぁ


「しおんちゃん おかえりなさい ローズちゃんと言った方が良いかな」

はい お優雅な聖女見習いのローズちゃんですよ。


「会うのは久しぶりね。ちょっと忙しかったからごめんね」

毎日メッセージをもらっていたから久しぶりな気がしないです。


「『フェアリー』のおかげで毎晩ローズちゃんの『おやすみなさい』が聞けるのは嬉しいのよ。疲れが吹き飛んでしまうもの」

私はあかねさんと会えて練習の疲れが吹き飛んじゃいました。



「イベントの用意しているのよね。順調かしら」

それがですね。リズさんってお嬢さまが費用を出してくれることになってお店が豪華になりました。


「リズさんね。私もcafe管理システムを依頼されたわ ローズちゃんにも使いやすいように作ったからね。可愛いシステムよ」

聞きましたよ。あかねさんすごいです。簡単に作ってしまうなんて天才です。


「もう元になるシステムがあったから変更しただけ それほど大変じゃなかったよ。それに手伝ってもらったから楽だったの」

ましろさんですよね。聖女チームだから私も仲良くしたいです。


「ローズちゃんからメッセージ送ってみたらどうかな きっと返事を返してくれるよ」

あかねさんの紹介なら怒られませんよね。メッセージ送ってみます。仲良くなりたいです。あかねさんのお友達とはみんな仲良くなるんです。


「仲良くなってくれると嬉しいな。今度のイベントでもいろいろな人と会えるから仲良くなってね。みんな優しい人ばかりだよ。ちょっと個性的だけど」

個性的なお姉さん・・・ たしかに聖女さまは個性的でした。聖女さまのお母さんも個性的でした。




「今日はね。イベントのことでローズちゃんにお願いしに来たの」

あかねさんのお願いなら何でも聞きます。


「cafeでクッキーを出すでしょ 私が作る予定だけどローズちゃん手伝ってくれないかな」


手伝いますっ 今からですか お泊りセット用意しないといけないです。


「作るのは今度の土曜日だから 今日じゃないから 落ち着いて はい深呼吸」

ひっひっふぅ ひっひっふぅ ひっひっふぅ もう大丈夫です。


カレンダーにマル付けます。フェアリーにも登録です。聖女チームみんなに自慢です。


あかねさんとクッキー作るんだよぉ



「落ち着いてローズちゃん」


ひっひっふぅ ひっひっふぅ

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