第23話 スカートのすそをつまんで

前略 道の上から  そいやっ


  ・・・いえ ・・・なんでもありません。



聖女『セイさま』のお茶会にお呼ばれして向かう丘の道 


リリーちゃんのお家からゆったりとした上り坂が続いています。

三人でトコトコ トテトテ テクテク


昨日お母さんに聖女さまからドレスを貰えるんだよ♪って自慢したら青い顔されました。お母さんは聖女さまを知っているみたいです。手土産を・・・と大騒ぎになりましたが『何も持ってこないように』と先に言われてしまいましたので何も持ってきませんでした。

お父さんまで『絶対に失礼のないように』と言い出したので怒らせると怖い人なのでしょうか

でもあかねさんがお友達だって言ってました。あかねさんのお友達でリリーちゃんのお姉さん 悪い人な訳ないです。


でも怒られないように大人しくしようと思います。私はローズちゃん お嬢さまですからね。おほほほ



――――



広場に到着です。


大きな木の下にある小さな広場 ここがうわさの広場ですか 意外と家から近いところでした。


小さいけれど奇麗な広場 奥にはしっかりとしたテーブルがいくつか


ダリアちゃんとリリーちゃんが座ったので私も大人しく座ります。



・・・誰もいませんよ。



「ここでお茶会に来ました。お話ししたいですってお祈りするんだよ」


例の謎儀式ですね。あかねさんもお願いしただけでお家に招待してくれました。

きっと来てくれるんですよね。


手を組んでお祈りのポーズ 目をつぶって 『お話ししたいです・・・』



§



「はじめまして ローズさん 素敵な名前ね」


うわっ いつの間に後ろにいたのですか



「リリーさん ダリアさんもこんにちは お茶会へようこそ」


どうして昨日決めたばかりの名前を知ってるんですか



突然現れた聖女『セイ・タカナシ』さま


噂の通り 腰まで届く長い黒髪 指先まで細くて真っ白な手 やっぱりお嬢さまですね。

そして全体に細い印象です。全体に・・・いえ深い意味はありません。リリーちゃんが大きくなったらこんな感じかなって思います。特別な妹って言われても納得です。どこから見てもリリーちゃんのお姉さんです。


赤を基調としたワンピース 聖女さまの服ですよね アニメで見た聖女さまです。コスプレじゃなくて本物です。



「セイ姉さま 仮面舞踏会に出席するのですよね」


「そうですよ 一緒に楽しみましょう」


「セイ姉さまはイベントで何をするのですか」


「私もcafeのお手伝いをさせていただきます。 少しだけステージも参加しますよ」


ステージに立つんですか 舞踏会だから踊っちゃうんですか



「もしかして術を・・・」「やりませんよ」

リリーちゃんが一瞬で否定されてます。 術って何するんですか


「ないしょのひみつです」

リリーちゃんと同じこと言いますね。さすが姉妹です。



「ダリアさんもcafe担当ですか 可愛い店員さんですね」


「えへへ ねえさまに褒められるとうれしいです」


ダリアちゃん可愛いですからね。なでなでしたくなりますからね。



「さあ こちらへどうぞ」


公園のさらに奥 隠れたところに扉がありました。これはわからないです。


扉の前に立つと「かちゃ」っと小さな音 鍵が開いたみたいです。何もしてませんよ。あかねさんのお部屋みたいです。聖女の術で開くのでしょうか きっと聞いても教えてくれませんよね。ないしょのひみつですよね。



――――



ひみつの扉をくぐると静かなお庭

リリーちゃんもダリアちゃんも慣れてますね。迷わず歩いていきます。


私はきょどきょど 不審者です。玄関はどこにあるのでしょうか。


大きな窓のあるお部屋の横 またひみつの扉です。


「かちゃ」


どうしてふたりはおどろかないのかな 鍵もないのに「かちゃ」だよ やっぱり聖女見習いになると当たり前の術なのでしょう。

わたしだけ聖女初心者です。どうしよう。



玄関通らずにお部屋に入ってしまいました。通ってきたお庭が見える部屋 大きな木もよく見えます。


窓際のきれいなテーブルに着席するリリーちゃんとダリアちゃん


・・・慣れすぎていませんか



聖女さまはかちゃかちゃとお茶会セットの乗ったワゴンを押して入ってきます。


わぁ 三段重ねのお皿だ ちいさなケーキがいっぱい乗ってます。

お嬢さまが『おほほほ』ってするお茶会セットです。

ダリアちゃんは『おほほほ』ってしないって言ってたけどこれは『おほほほ』です。



リリーちゃんがお手伝いして紅茶を入れてくれて・・・かっこいいです。


見とれているうちにお茶会の用意完了です。

私 何もしていません・・・ ぼぉっとしているうちに・・・



――――


「それでは改めまして 私のお茶会へようこそ 聖女『セイ・タカナシ』と申します」


スカートをつまんできれいにご挨拶します。


わぁ やっぱりお嬢さまです。おほほほです。私も自己紹介しなければっ



あかねさんの妹『ローズ』です。ご招待ありがとうございます。 

えっと スカートをつまんで持ち上げてぺこりとおじぎ これで良いかな。



「まぁ さすがあかねさんの妹ですね。素敵ですよ」


やりました。ほめられました。これであかねさんの妹として恥ずかしくなかったでしょうか



「聖女見習いのダリアです。」

「聖女見習いのリリーです。」「「本日はお招きいただきありがとうございます」」


ふたりそろってスカートをつまんできれいなご挨拶


衝撃の事実 私以外みんなお嬢さまでした。リリーちゃんはなんとなくわかっていたけどダリアちゃんもお嬢さま

この部屋に入ってから二人とも雰囲気が違いすぎます。



お嬢さまに囲まれた なんちゃって社長令嬢の私 緊張のお茶会 始まります。

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