第18話 うさぎさんダンス

日を改めまして金曜日


放課後にいつもの図書準備室です。



今からイベントの打ち合わせ会です。まだ詳しいことを何も聞いていませんからね。



「まだもうひとり来ていないけど先に始めましょうか」


聖女ちゃんもトテちゃんも来てますよ。



「私の後輩が来る予定なの 仕事終わってからだからもう少し遅くなるからね」


司書さんの後輩さんってどんな人なのでしょう。ちょっとわくわくします。だってあの『恋の勇者』司書さんの後輩ですからね。



「まずはイベントの概要から説明しましょうか はい これが当日のパンフレット」


きれいなパンフレットですね。

えっ 司書さんの後輩さんが作ったのですか きちんと印刷してありますよ。プロのお仕事ですよ。可愛い女の子のイラストも入っています。素敵ですね。



「今回は合同イベントになります。養護施設と高校、それに農家の方々のお祭りも合わせますからちょっと規模が大きいですよ。そこに休憩施設の一つとしてcafeを開くことになりました。はい みんな拍手」


ぱち ぱち ぱち


会場マップをみると広い会場ですね。ステージまでありますよ。



「高校の演劇部の子たちが劇をしてくれるみたいよ。吹奏楽部やボランティアの演奏もあるからね」


ボランティアの方がいらっしゃるのですね。



「ボランティアで支えているようなものだよ。私たちもボランティア それぞれ自分の特技を生かしてみんなにご奉仕するの」


私の特技って・・・ ないですよ。悲しくなるほどないですよ。



「私も特技というほどのものはないですね。楽器の演奏もできませんし」


「考えてみるとみんなの役に立つような特技ってないよね」


聖女ちゃんもトテちゃんも特技ないんですか

 

大丈夫です。ふたりはそこに存在するだけでみんなの役に立ちます。美少女は『そこにいる』ことが能力なんです。可愛いは正義ですっ



「そうそう 君たちがいる事で役に立つんだよ。中学校から可愛い女の子がボランティアで来てくれたって嬉しいことなんだよ」



「「「可愛い女の子っ」」」


私も可愛い枠に入るんですかっ でへへへ 可愛くしていかなくてはいけませんっ




「そこで可愛くなってもらうためにコスプ・・・ 衣装を用意しました」


今コスプレって言いましたよね。絶対に言いましたよね。



「衣装です。もう用意してしまいました。しおんちゃんの衣装はこれです」


メイドさんの服 いっぱいあるじゃないですか どうしてこんなにいっぱいあるのですか



「さあ着替えて着替えて 私のお勧めがあるから着替えて」



――――



「サイズぴったり ほら可愛い」


ふりふりレースのついたメイドさん 鏡の中の私可愛いです。可愛いですけど・・・


スカート短いです。ひざ上5センチ じゃなくて股下5センチですよ。

動いたら「おパンツさん こんにちは」ですよ。だめです。絶対ダメです。


「可愛いのに・・・ ちぇ」


司書さん私に何を求めているのですか でもトテちゃんなら似合うかも 水玉おパンツ見えても可愛いし・・・



「私はもう決まってますから着ませんからね。それに今日は水玉じゃありません」


今日は違うんだ・・・ じゃなくてですね。どうしてトテちゃんだけもう決まってるのっ

トテちゃんのミニスカメイドさん見たいのに



「私も決まっていますよ。トテちゃんと一緒です」


えええっっ 聖女ちゃんも決まってるの 私だけ仲間外れってひどいよぉ



「司書さんからお願いされましたので自前の制服を持ってまいりました」


聖女ちゃん自分で持ってるのっ ・・・制服 なんの制服なの



「これが私の正装です。きれいでしょ」


なに この衣装 ドレスだよ トテちゃん これが制服なの 正装ってなに 

これお嬢さまが「おほほほ」ってするときに着る服だよ。

聖女ちゃんのドレスもお嬢様だよ。着て見せて早く見たいよぉ



「それでは変身しましょうか」


わっ 変身なの 

魔法少女みたいにキラキラくるくるすると衣装が変わるんだよねっ


それではどうぞっ♪



ごそごそ 



普通に着替えるんだ・・・ 残念

 


――――



「いかがでしょうか 私の正装です」「聖女ちゃんとおそろいだよ」



なんだか聖女ちゃんの秘密を見てしまったような気分です。

すっきりとしているけど気品を感じるドレス これお高いですよね。コスプレ用じゃないですよね。

聖女ちゃんが薄い青色のドレス トテちゃんが薄い緑色のドレス


そしてふたりともお揃いのケープをかけています。



聖女ちゃんだけでなくトテちゃんも本物の聖女だったのですか 知りませんでした。冗談抜きに聖女にしか見えませんよ。



「聖女ではありませんよ。トテちゃんも私も『聖女見習い』です。これは聖女見習いの正装です」


なんだか情報が多すぎて混乱してます。

トテちゃんも聖女見習いさんなのですか 聖女ちゃんみたいに不思議な力があるんですか


「えっと少なくとも私にはそんな力はないよ。お姉さまはすごいけどね」


「私も不思議な力なんてありませんよ。まだお姉さまの術をまねしているだけです」


術のまね・・・ やっぱり何かできるんだ・・・

これ以上は聞いてはいけない領域な気がします。みんなには黙っておいた方がよさそうです。



とりあえず今は目の前のことです。私の衣装です。



私もドレスが良いですぅぅ 聖女見習いするんですぅ おそろいが良いですぅ


おそろいにしてくれなかったら職員室で泣きながらうさぎさんダンスしますよっ



「しおんちゃん うさぎさんダンスだけはやめておこうね。あぶないからね」


「司書さん おそろいにしましょうよ。うさぎさんダンスはまずいよ」



「うさぎさんダンスって何 あぶないの なんで二人はわかるの」




 

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