第6話 癒しの完璧美少女



「どうしたの 何か相談なのですか」



図書準備室に立ち入ることが許されている数少ない生徒


透き通った優しい声

トテちゃんが小動物系アイドルなら彼女は正統派美少女


彼女は私の恋の悩みをを受け止めてくれたもう一人のお友達

トテちゃんとは小学校からの仲良しです。

親友と言った方が良いかも


私も親友って思っているけどどうなのかな

親友でなければあかねさんのことお話しませんよ。



「トテちゃんとしおんちゃんが図書室にいると聞いて来てしまいました。

 おじゃまでしたか」


そんな笑顔を見せられたらお邪魔なんて言う人が居るのでしょうか



「しーちゃんのさくせん会議だよ あかねさんと仲良くなりたいって」


「あかねさんのお話ですか それなら是非私も参加させてください」



これは強力な仲間が増えました。



――――




清楚な彼女は小学校の時からお付き合いしている彼が居ます。

トテちゃんと同じくリア充です。

こちらもラブコメの神様の大活躍で彼と同じクラス みんな私と同じクラスに集結しています。


だからいつもイチャイチャを見せつけられているのです。しかもダブルですよ。



お付き合いしている彼は剣道部 剣道を始めたばかりなのになかなか強いようです。



噂で聞いたのですが入部の動機が公言したわけではありませんが


『大切な人を守る騎士になりたい』だそうですよ。


聞いただけで赤面してしまいます。きゃあですよ。うゎあですよ。


騎士ではなくて侍のような気もしますが幸せそうなので問題ありません。


『大切な人』って誰だ なんて一時期騒ぎにもなりましたが、同じ小学校の人たちではもう有名なようであえて見守るのがお約束だそうです。



なぜみなさん見守っている状態なのかと言いますと、

ここまで彼に言わせておいて、彼女は『まだお付き合いしていない』って言い張るのです。



私の周りのカップルはどうしてお付き合いを否定するのでしょうか


きっとこれがツンデレと言うヤツですね。

『まだ』お付き合いしていないのですよ。『まだ』


最高にからかい・・・ 見守りがいのある状態です。



でも彼女を狙っている男子は少なくありません。トテちゃんと同じですね。


こんなに噂になっているのにお付き合いしていないなんて言い続けるので他の男子が期待してしまうのです。

ここまではっきりと否定するなら本当にお付き合いしていないと男子は思っているようです。

男子には『まだ』が聞こえないのでしょうか


女子の間ではお付き合い否定を信じている人はいませんよ。

あんなにテレテレで赤い顔して否定するなんて、大きな声でYesって答えているようにしか見えません。



まあ 男子が夢中になるのも仕方ないんです。美少女なんですよ。


腰近くまで伸ばした長い黒髪はさらさらつやつやで見ているだけでため息が出ます。


いつもはポニーテールなのですが、髪をほどくと雰囲気が急に変わってまるでお嬢様

眉の上で切りそろえた前髪も清楚さを感じさせます。


近くに来るとほんのり花の香りがするのです。香水は校則で禁止なのでシャンプーかな。

それとも美少女は何もしなくても花の香りがするのかも



人柄がわかる優しい目 日焼けを知らない白い肌 リップを塗ってつやつやの小さな唇


仕草も洗練されていて優雅に感じます。先輩や先生への言葉遣いも自然な敬語で綺麗なんです。

同級生に対してもていねいな言葉


きっと小さなころからお嬢様として育てられたのですよね。

どんなお家なのでしょうか


見た目だけではありません。


テストでは満点を連発する頭の良さ ノートのまとめ方も綺麗で先生に褒められていました。

私が分からないところを聞くと優しく教えてくれます。


完璧美少女なんですよ。



こんな完璧美少女が「お付き合いしていない」と宣言するのですから

もしかしたら・・・

なんて男子がざわつくのです。お近付きになりたいのです。



男子に人気があると女子から嫌われそうですが、女子からも人気の美少女です。

もう彼が確定していますからライバルにならない安心感も大きいと思います。

彼も彼女しか見ていない雰囲気がありまして 


・・・夫婦でしょうか



そんな彼女ですからよく恋の相談を受けています。成功例ですからね。


そして彼女の趣味の『星占い』が良く当たるのです。

しかも適切なアドバイスまでくれるのですよ。


恋の相談だけではありません。


落ち込んでいる子には話を聞いて一緒に悩んでくれる彼女

話が出来ないほど落ち込んでいる子にはだまって隣に座っているのです。

ずっと寄り添うのです。


どれだけ助けてもらった人がいるのでしょうか



そして理不尽なことに対してはきちんと怒るのです。

優しいだけではない彼女 可愛いだけじゃない彼女



そんな彼女いつのまにか『聖女ちゃん』とあだ名が付きました。納得です。


どうも小学校の頃から聖女と言われることがあったみたい

でも本人は、まだ見習いと謙遜します。そんな控えめな態度まで含めて美少女です。



聞き上手のトテちゃんと寄り添ってくれる聖女ちゃん


恋する乙女の心強い味方です。



――――



「しおんちゃんはもう仲良しだと聞いていましたがもっと仲良くですか」


もっと仲良くしたいんです。ライバルに負けたくないのです。



「恋敵さんがいらっしゃるのですか」


「あかねさんがいつも会いに行っているお友達がライバルだって」


そうです。ライバルです。



「あかねさんは女神様のような方ですから、お友達も素敵な方でしょうね」


だから困るんです。どうやったら勝てるのか 難しいです。



「どうしてしおんちゃんは恋敵さんに勝ちたいのですか」


それはあかねさんの『特別』な人になりたいから・・・


二人とも素敵な彼がいるから羨ましくてたまらないの



「わたしはまだお付き合いしていませんよ」


・・・はいはい 『まだ』お付き合いしていないのですね

聞いてしまった私がおバカでした。



とにかく私もイチャイチャしたいのっ

ライバルよりもイチャイチャしたいのっ



「しおんちゃんは、あかねさんとお付き合いしたら何がしたいのですか」


えっとね まずはデートがしたい


待ち合わせして手をつないでいろいろな所にいくの

それでね 周りのみんなから『仲がいいね』って言ってもらうの



「それならあかねさんと仲良くなればデートできますよ。恋敵さんに勝たなくても良いのではないですか」



・・・その通りです。 


・・・嫉妬です。間違いなく嫉妬です。


あかねさんと仲良くしているから羨ましいのです。



「あかねさんのお友達なのですから、しおんちゃんもお友達になれますよ きっと素敵な方ですよ」



空回りしていた自分が恥ずかしいです。

私っておバカですね。あかねさんのお友達です。悪い人の訳ないです。



「しーちゃんは嫉妬するくらいあかねさんが大好きなんだよね あかねさんもわかっていると思うけど」



大好きってこと あかねさんにバレているでしょうか



「わからない方がおかしいと思うよ」


どうしよう 次に会うときに恥ずかしくてお話し出来そうもないです。



「あかねさんには一度直接お会いしたいですね」


「わたしも会ってみたい」



うん ふたりにも紹介したい・・・けど


「けど?」



ふたりがあかねさんのこと好きになったら困るし・・・



「しーちゃん 可愛い」


「大丈夫ですよ トテちゃんには素敵な彼がいらっしゃいますから」


「聖女ちゃんこそカッコいい騎士くんがいるじゃない」



あぁ またふたりとも私の目の前で彼氏自慢するんだからぁ




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