第4話 それはないしょのひみつです

新しいシステムの開発が始まりました。


あかねさんは何度も来てくれました。

もちろんお仕事のためです。



システムを作る様子も見せてもらいました。

たくさんの英語が並んだプログラム

書類を見ながらすごい速さで打ち込んでいます。


父に画面を見せて確認しながら作られて行きます。

魔法のようです。



パソコンで会社のお姉さんと打合せをしているときもありました。テレビ会議です。


会社のお姉さんも綺麗な人でした。あかねさんの先輩さんだそうです。

ごあいさつもさせてもらいました。


仕事をしているお姉さんはみんな格好良いです。


父の会社のためにシステムを作っているのはあかねさんを含めて三人


みんな違う場所でお仕事しています。なんだか不思議なお仕事です。



――――



あかねさんはお仕事が終わるとかならず私と話をしてくれました。


学校のことや友達のこと何でも聞いてくれる優しいお姉さんです。


手作りのお菓子をおみやげに持ってきてくれることもありました。


システムを作る頭の良さだけでなくお菓子も作ることが出来るのです。



学校の勉強も教えてくれました。何を質問しても答えてくれます。


学校の先生よりもわかりやすくて勉強が楽しくなりました。

頑張ればあかねさんがほめてくれますからね。


毎日の勉強のやり方まで教えてくれました。

先生が驚くほど成績が上がりました。



目標が出来ました。


たくさん勉強をして、いつかあかねさんと一緒にシステムを作ります。

困っている人に喜んでもらうのです。



本当のお姉さんが出来たようで夢のような日が続きました。


あかねさんがいる生活 それが当たり前になっていました。



――――



半年後、システムは完成しました。


これで大きな会社から注文をもらえるようになりました。


大きな会社用だけでなく工場の中全てのシステムが新しくなりました。

すべてあかねさんシステムです。


とても立派なシステムで父も驚くような物だったそうです。

もう大丈夫です。



それだけではありません。


予定していなかった大きな会社と新しい取引が始まりました。

あかねさんの紹介です。



あかねさんはシステムを作る専門の人ではなかったみたいです。


どんな人なのでしょう。


父も詳しくは教えてもらえなかったみたいです。

あかねさんを紹介してくれたおじさまのこともわかりません。



考えてみたら不自然なこともありました。


打合せに来てくれる時は、かならずお迎えの車が来ていました。

運転しているところを見たことがありません。


十七歳だから運転できないのでしょうか

違いますよね。


タクシーではなくていつも専用の車でした。


どこかのお嬢様なのでしょうか


でもお嬢様がうちのような小さな工場のシステムを作ってくれるとは思えません。


しかも500円です。



あかねさんの会社も不思議です。


システムの契約書もありません。

立派な書類には「覚え書き」としか書いてありません。


書いてあった会社名 父がインターネットで調べてもどこにもありません。

「株式会社」ではなく「チーム」と書いてあるところも謎です。


住所も名刺に載っていません。

でも電話やメールは出来るのです。



謎ばかりの不思議なお姉さんです。


確実に言えるのは私にとって完璧な女性


憧れのお姉さんだと言うことです。


白馬に乗って現れた素敵なお姫様

全てが格好良いのです。



§



すべてが上手く行きました。


でもみんなが大喜びしている中で私だけ拗ねていました。


もうあかねさんが来てくれる理由がなくなりました。



お別れの時が来てしまった。それだけはおバカな私でもわかりました。



私のお姫様がいなくなる。もう会えなくなる。

泣きました。


大泣きしました。



「また会いに来るからね」


うそです。やさしいうそです。



「手紙も書くからね」


絶対ですよ。待っていますよ。ずっと待ってますよ。



――――



あかねさんはうそつきではありませんでした。


本当に会いに来てくれました。

お手紙もくれました。


お仕事は終わっているのにお菓子を持って私とお話をするために来てくれるのです。

勉強も教えてくれます。


嬉しいです。やっぱり憧れのお姉さんです。


どうして来てくれるのですか


「しおんちゃんに会いたいからだよ。約束したでしょ」


でもわざわざここまで来るのは大変ですよ。



「この近くに仲の良いお友達が住んでいるの よく遊びに来るからここも近いのよ」


仲の良いお友達


男の人でしょうか 彼氏さんでしょうか



「女の子だよ 中学校の時からのお友達 それに私は彼氏いないからね」


まだ彼氏さんが居なくてほっとしました。


でもちょっとヤキモチです。

私の知らないあかねさんを知っているお友達がいるのです。

よく遊びに来て貰えるような仲良しさんです。


同じ会社の人ですか



「私もお友達も会社員じゃないよ 十七歳って言ったでしょ」



でもお仕事してくれましたよ。名刺ももらいましたよ。


新しいシステム作ってもらって、大きな会社も紹介してくれましたよ。



「しおんちゃんにお願いされたから作っただけよ お仕事ではないからね」



お姉さんは何をしている人ですか 



「それは ないしょのひみつです」



またごまかされました。


何もわからないけど 謎のあかねさん大好きです。


大好きでは負けません。お友達よりも私の方が大好きです。


あかねさんは渡しませんからね。

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