第3話 白馬に乗ったお姫様

私があかねさんと出会ったのは父のお仕事がきっかけでした。


私の家は小さな町工場


なんと私は社長令嬢なのですよ。おほほ


小さな会社でも父が社長だから私は社長令嬢よ。



そうすると母は社長夫人・・・なにか無理があります。

社長夫人は大声で笑わないと思います。


社長令嬢なのにお小遣い少ないですし・・・


それに令嬢ってもっと上品じゃないといけないと思うんです。

お友達の方が上品な位です。残念社長令嬢です。


でも父が頑張って立派にした会社は自慢できます。



そんな会社があぶない時期がありました。


そしてあの時 助けてくれたのがあかねさんでした。



――――



あの時


父の会社は困っていました。ピンチです。

注文が貰えなくなるかも知れないのです。


大きな会社と取引して新しい部品を作るためには新しいコンピュータのシステムが必要です。

対応しなければ注文をもらえません。



父はシステムを作ってくれる会社と打合せ

今回も駄目だったようです。

もう何社目の打ち合わせだったのでしょうか



高すぎるのです。小さな工場でもシステムを入れ替えるとすごく高いのです。


でも新しいシステムにしなければ大きな会社は取引してくれません。



父の技術はすごいのです。県知事さんから表彰もされました。

こんなに立派なことをしているのに新しいシステムにできないだけで取引をしてもらえなくなるなんて悔しいです。



私にできることはないのでしょうか。


たくさん勉強をしたら私でもシステムを作ることができるでしょうか

お小遣いいっぱい貯めたらシステムを作ってもらえるでしょうか


子供の私にはどうすることも出来ませんでした。



§



そんな時にいつもとは違う会社の人が来ました。


いえ 会社の人ではないみたいです。

会社の事務所ではなく、家の方に訪ねてきました。


いつも部品を買ってくれる会社の人の紹介でお話を聞きたいと来てくれたおじさまでした。


おじさまはしっかりとお話を聞いてくれました。

父の会社が無くなってしまうのは日本の損失だとまで言ってくれました。

嬉しいです。やっぱり父は立派です。



そして次の日 とてもきれいな女の人が訪ねてきました。


きっちりとスーツを着て格好いいお姉さんです。

背が高くておめめぱっちりすごい美人です。それにおっぱいがおっきいです。



昨日訪ねてきたおじさまからの紹介で来てくれました。


会社のことを詳しく聞いてどんなシステムにするのか詳しい書類を作ってくれます。

お話をしながらパソコンに入力したり、電話をしたり、パソコンのカメラに向かって誰かとお話をしながらお仕事しています。格好いいです。

きっとこのお姉さんなら良いシステムを作ってくれるはずです。


お姉さんが作っている書類でシステムの値段が決まるのでしょうか

会社に戻ってえらい人が書類を見て値段を決めるのですよね。

あのお姉さんにお願いしたら安く作れるでしょうか


緊張します。



打ち合わせが終わったみたいです。


笑い声が聞こえます。上手く行きそうなのでしょうか

父もなんとなく嬉しそうです。話をしやすそうな優しいお姉さんみたいです。



打合せが終わって事務所から外に出たお姉さん

チャンスは今しかありません。 お姉さんを追いかけます。



「お姉さん お願いがあります」


「どうしたのかな」


お姉さんはかがんで私と目線を合わせてくれました。



「しおんと言います。どうかシステムを安く作ってください」


ちょっとびっくりした顔をしたお姉さん


今考えれば当然です。突然子供が走ってきてそんなことを言えば驚きます。

あの時、必死すぎて私はおバカでした。


でもお姉さんは優しかったです。



「私はあかねです。よろしくお願いします」


小学生だった私にきちんと名刺をくれました。



「安くできますか 高いとシステムを買えないんです」


私のおバカは暴走していました。お姉さん困りますよね。



「しおんちゃんはこの会社好きですか」


「大好きです。お父さんを助けてください」



お姉さんは優しかったです。きちんとお話してくれました。



「わかりました。お姉さんも頑張るからね。また明日会いましょう」


にっこり笑ってお迎えに来た車に乗って行ってしまいました。



この後、父に見つかって怒られました。すっごく怒られました。

お姉さんが来たらきちんとあやまるように言われました。



反省しました。


あんなに優しそうなお姉さんを困らせてしまいました。

私のせいで会社で怒られていたらどうしよう。



――――



次の日 



急いで学校から帰ると約束通りお姉さんが待っていてくれました。


まずはお詫びです。


昨日は突然おバカなお願いをしてごめんなさい。

出来たら怒らないでシステム作って欲しいです。


お姉さんは笑って許してくれました。

そしてお姉さんがシステムを作ってくれることになったと教えてくれました。



父が何度もお礼を言っていました。



父が見せてくれたシステムの書類 とっても分厚い立派な書類

これを一日で作ってしまったのでしょうか

お姉さんすごいです。


そして一番驚いたのはシステムの価格 



 500円でした。



言葉が出ませんでした。


私でも分かります。安すぎます。お姉さん怒られませんか

会社のえらい人に絶対怒られますよ。



「しおんちゃんと約束したからね」



あぶないときに現れて助けてくれたお姉さん


おとぎ話に出てくるような素敵な眩しいお姉さん


王子様よりも素敵なお姫様に出会えました。



白馬に乗って剣を持ったとっても強いお姫様



今思えばこの時に恋に落ちたのかも知れません。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る